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禍語 二ノ刻
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【托卵】
「ええ。分かってるわ。大丈夫。ほら、深呼吸」
「本気……だったんです。私も。きっと彼も……本気でした。どちらも。そうに決まってます。だって、だって、あたし」
「そうね。分かってる。大丈夫よ、ゆっくりと話して?」
青年はやさしく肩をなぞり、するりとコートを脱ぐと、震える彼女へそっと羽織らせた。
九頭見 修司、と青年は名乗った。目の前の彼にも名前がある。当たり前のことだ、呼ぶ名が無ければどうやって、個人を区別すればいいのだろう。自分の名前だって言える。
朝永 真深
。
朝永 真深
。
朝永 真深
。そうだ、ちゃんと言える。ちゃんと言える。大丈夫。
だというのに、なぜ、どうして、恋人の名前だけはいっこうに思い出せないのだろう。恋人なのに。真深はともすれば暗く閉じてゆく胸に抗い、記憶の深海へ捜索の手を伸ばすも、引っ張り上げることができるのは恋人の微笑み、強くきらめくまなざし、たおやかでなめらかな白い手指、風に揺れる二本の頭の触手、そのくらいのものだ。
「触手? 彼、触手があったの?」
「え、はい、そうですよ。ちょっと変わってますよね」
「ええ……そうね。変わっているわね、すこうしだけ」
からん、とグラスの中に氷が揺れた。真深は青年がおごりだと言って一方的に注文したクリームソーダに口をつけることもなく、ただ碧緑の海に自身を重ねるのみだった。思えば思うほどにいとおしさがつのった。
幸福な日々。手をつなぎ街を歩いた。キッチンカーのソフトクリームの他愛もない味に笑い合い、うっかり頬についたバニラを舌で舐めとられどぎまぎと胸が弾んだ。夕暮れに照らされる彼の横顔は凛々しく、やさしく、なめらかな手に手を取られて拍動はさらに加速した。夜は並んでベッドに寝転び、静かな潮騒を聞きながら、彼へしがみつくようにして眠った。体温が低い彼の身体はこの夏の酷暑と寝苦しさに心地よく、また彼も真深のぬくもりを欲してくれた。身体を重ねることはなかったけれど、心が通じ合っていればじゅうぶん幸せだった。
「そう。でも、どうして別れてしまったの?」
「え……」
「あなたは彼が好きだった。彼もきっと、あなたを……なのに、どうして?」
どうしてだろう。不満なんてなかった。彼が好きだった、彼のすべてを受け入れるつもりだった。けれど今、彼は真深のそばにいない。去ってしまった。
なぜだろう。あんなにも好きだったのに。たがいの違いなんて気にならなかった。折り合いをつけられるはず、そう思い話し合いを続けていたのだから。とても前向きで建設的な議論が彼との間には持たれていたはずだ。そのはずだ。
「……なにを話していたんだっけ……」
「お待たせしました。えっと、とろ~り卵のオムライスの方は」
「ああこっちこっち、私よ。今朝からなにも食べてなかったのよね。朝永さん、本当になにも食べなくていいの? おごるわよ?」
「卵……」
そうだ。そうだ。そうだ。卵。卵。卵だ。
彼と自分は違う存在である。真深自身、誰よりも深くそれを痛感した。
「あたしは……産みたかった」
「子どもを? 彼の?」
「産むつもりだった。でも、だって、仕方ないじゃない。彼は自分で産めるんだもの。あたしが産んであげる必要なんてない。つなぎ止めなきゃって思った。だって、だって、彼にはあたしと付き合うメリットなんてない、誰かといっしょになる必要なんてないんだから。でも、愛してるの……彼の子どもを産みたかった」
かなわない願いだ。彼に伴侶は必要ない。彼自身が卵を産めるのだから、ああ、卵。卵。あの艶めいて黒光りする……半ば透き通って輝き、いくつも連なって、ああ、なんて、なんて。
「あなたが彼の子どもを産めないから、彼はあなたから去ったの? 薄情なものねえ」
「違う! そんなんじゃない! 彼はそんなのじゃ」
「ああ、ええ。そうね、ごめんなさい。失言だったわ、許してちょうだい? でもそれなら、どうして彼は去ってしまったの?」
「去って……」
自分には産めない。彼の子どもを。けれど、けれど。彼はなんと言っていただろう?
彼は……去る前に、なんと自分に告げただろう。
いや、そもそも……いつ彼は去ったのだろう? 去った? どこへ? 今もずっと、こんなにも胸に、彼の存在を感じているというのに。
「あたしは。あたし、そうだ。そうだ。そうだ。卵。たまご。あたし、彼の、あたしの、たまご……」
「朝永さん、大丈夫? 顔が真っ青だけど……ちょっ、朝永さん? どこにいくの? ねえ!」
思い出した。思い出した。思い出した。
「ありがとう」
「ありがとう。受け入れてくれて」
「大丈夫さ。なにも心配はしなくていい」
「ああ、ただ……そうだね。俺の子どもたちに、名前なんてつけないでくれよ?」
「人間みたいに、俺たちは自分を区別したりしないからね。個性なんて必要ないさ、みんなと同じ。誰もが同じ。画一的であることは効率的なんだ。みんなそうやって生きているんだ。俺たちはさ」
「うん? 思っていたのと違ったかい? そいつは、そうだな……ご愁傷さま、ってところかな」
「心配いらない。すぐに慣れるさ」
「俺たちはおたがい、違ういきものだ。だからこそ、君に託すんだ。何百年、何千年と繰り返されてきたプロセスだ。大丈夫。これは夢だ。こんなことはすぐに忘れる。そうだな……こう言えば安心かい?」
「君を、愛してる」
真深の駆け込んだトイレから悲鳴が上がり、青年は慌てて立ち上がった。
立ち尽くす客たちや店員をかきわけて彼女の脇へかがみこむと、その背に手のひらを差し込み抱き起しながら、
「救急車を呼んで。早く!」
叫ぶ。
カッターナイフ。血痕。彼女は自分の腹を裂こうとしたのか、しかしそうはできなかったか、ためらい傷から噴き出した血は決して多量ではないものの、鮮烈な赤で周囲を染めた。
血濡れた彼女の手には、妊娠検査薬が握られていた。小窓には二本の薄紫のラインが浮かび上がり、彼女はうわごとのようになにかを繰り返しつぶやいていたが、聞き取ることはできなかった。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
ホラー
神話・伝説
NPC交流
定員
10人
参加キャラクター数
7人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2025年10月12日
参加申し込みの期限
2025年10月19日 11時00分
アクション投稿の期限
2025年10月19日 11時00分
参加キャラクター一覧
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