流したてのコンクリの上を猫が通らぬ様に見張るだけのお仕事です｜リアクション

流したてのコンクリの上を猫が通らぬ様に見張るだけのお仕事です

「よし！　これなら猫が上を通っても、そうそう足跡はつかんの」
　炎天下での作業。暑さに強い駒鳥でも、少し体を動かしただけで、汗が滝のように流れてくる。
　夏朝も持参したタオルで、首筋の汗を拭った。
　駒鳥は服が汗で張り付くのを気にしながら、くたんと座り込む璃亜に気付くと、持参した椅子と傘を、そっと勧める。
　両親の遺してくれた貯金を切り崩しつつ、自らもバイトに明け暮れる璃亜だったが、体質的に直射日光に弱く、この日差しが他者の何倍も堪えていたのだった。
「え？　私が借りていいんですか？」
　辛そうな仲間の様子に、朴訥ながら面倒見がいい駒鳥は、控えめに頷く。
「構わんよ。俺のメイン見張り時間は、まだ先じゃからの」
「あ、ありがとうございます……」
「調子が悪い時は、遠慮しないで言ってね？　僕、交代するから」
　夏朝も仲間の体調に、気を配る。

「さて、と。養生用の素材に資金を出してくれた皆は、ありがとうよ。余った分を返金するから、受け取っとくれ」
　巴が必要経費から素材代を引いた、余剰金を資金提供者、一人一人に返済した。
　必要経費をカンパしたのは、１０名。うち全額を出したのが５名で、残りは飲み物や半金を別の用途に使うため手元に残した残りを提供していた。
「折り良くプラベニ２０枚のセットが、半額セールをやっていてね。今回４セット買ったわけだが、これで思ったよりかなり浮いたよ。後、ブルーシート３枚だろ、そしてパイプ。タコ糸……諸々で３００００円ってトコだね」
　プラベニ半額がなかったら、資金繰りはかなりキツかったろう。
　しかし運に恵まれ、全額提供者にそれぞれ２０００円（全額ではなかった方は一律、半額の２５００円を手元に残していたとして計算しました）ずつのキャッシュバックがあった。

「私、塩飴と飲み物買って来るね。もふっとクッションも、買ってこなきゃ……」
　猫をもふっと受け止める、柔らかいクッション。そしてマタタビ。
　指折り数える夏朝は、なんだか結構、散財してしまいそうな勢いである。
「俺もひとっ走り、買い物してくるぜ！」
「あ、僕も」
　夏朝に続いて勘三郎、そして新井米太郎が、連れ立って出かける。

「立井の作ってくれた時間割に、立候補してくれたメンバーを書き込んでみたよ。こんな感じだろうか？」
　刀が表を、広げて見せた。

　■ローテーション表■（立候補者のみ）

●A.M.10:00　～　P.M.16:00
メイン見張り
恵御納夏朝、桜崎巴　風雲児轟　御剣刀
サポート
（綾辻綾花　立井駒鳥　八神修　山田勘三郎）

●P.M.16:00　～　P.M.22:00
メイン見張り
立井駒鳥　八神修　
サポート
（恵御納夏朝　御剣刀　山田勘三郎）

●P.M.22:00　～　A.M.4:00
メイン見張り
綾辻綾花　後木真央　塔ヶ崎璃亜　山田勘三郎
サポート
（御剣刀）

●A.M.4:00　～　A.M.10:00
メイン見張り
後木真央　御剣刀
サポート
（立井駒鳥　塔ヶ崎璃亜　風雲児轟　八神修）

「間違いがあったら、訂正してくれな。あと、強制じゃないんだが、どの時間に入るか決まってない人は、出来れば手隙の場所に入ってもらえれば助かるよ」

「ああ、これは分かりやすいですね。ありがとうございます、助かります」
　覗き込んだ綾花は、刀をそっと労った。

「あたし、手の足りないところのお手伝いでいいよ。差し入れと便利屋的に動けると思うし……うん、そこは流れで決めてこ」
　パールはザッと表を見渡して、１６時からのシフトに立候補した。

「若者達は頑張ってるな。うん、俺もそれでいいよ。見たところ、深夜から明日の朝が手薄か」
　忍は、これまた人手の足りない、朝４時をメインに。
「だがこの表、メインが２回の人も居るし、サポートも出番が人によって違うな。同じ人が長く出張ってるみたいだし……ここは公平に、メインとサポート１回ずつにしないか？　駐車場のガードは硬いし、それでも問題ないだろ」
「むぅ……そうだな、ちょっと手直ししよう。真丸、筆記具を貸してもらえるか？」
　刀に言われ、真丸は急いでペンを持ってきてくれた。
　それでメンバーが欠席者を除いて、メインとサポート１回ずつ来れば良いように、修正していく。

「これでいいかな？」
「そうじゃな、若干偏りはあるが……」
「ある程度の事は、仕方ないさ」
　頭を付き合わせた巴は、流石の貫禄を見せた。