【それいけ！　大乱闘スプラッシュブラザーズ】

「待て待て待てー！　俺たちのことを忘れていないか？」
「七夕の夜の乱暴狼藉、俺たちが許さない！」
　やけに地味な少年と赤毛のマジキチスマイル少年が現れた！

「「誰だお前たち！！」」

　４人の総ツッコミが入ったところで自己紹介タイム！

赤毛「誰だお前たち、と聞かれたら！」
地味「答えてあげるのが世の常だ！」
赤毛「七夕の奇跡を守るため！」
地味「カップルの不幸を防ぐため！」
赤毛「地味とショタコンが正義を貫く！」
地味「哀愁漂ういなせなヒーロー！」
赤毛「ロベルト・エメリヤノフ！」
地味「小津 秋吉！」
赤毛「星海を駆け巡る二年連合『地上の彗星』コンビには！」
地味「星の輝きにも負けない栄光の明日が待ってるぜ！」
（２人揃ってカッコイイポーズを披露！）

　４人は思わず拍手喝采。
　地上の彗星コンビは照れながら「どうもどうも！」と頭を下げていた。
「ロベルト君、そろそろ本題に！」
　小津が耳打ちすると、ロベルトはこほん、と咳払いをして腐女子ズを指差した。
「このカップルを困らせる奴らは、俺たちが相手してやる！」
「俺たち『地上の彗星』に勝てるかな？」
　さっきまで彼らは「わーい平和だねーロベルトくーん♪」とか「HAHAHAHA！　秋吉～、僕を捕まえてごら～ん♪」とじゃれあっていたのだが、それをばらすと標的が自分たちに映るので口が裂けても言えなかった！
　これに腐女子ズは徹底抗戦の構えだ！
「暴力反対って泣き落しすると思った？　残念！　君たちもカップリング精神攻撃の餌食にしてあげるよ！」
　シガツーが紙とペンを響から受け取ると、素早く素描を開始！
　この隙に市橋義兄弟を彼らは逃がすことにした。
「さぁ、早く逃げて一夜限りのアバンチュールを！」
　ロベルトの言葉に誉が顔を赤らめながら「だから違うんだ！」と反論。
（あれ？　なんで俺はカップルなんて言われて、ドキドキしてるんだ？）
「誉、逃げるぞ！」
　ここは兄らしく、弟を先導していく。
（誉に兄と思って貰える事、何よりも俺にとって大事な事だ。兄として、誉の傍に居られるなら、俺はそれだけで……）
　ちょっと兄弟愛を拗らせつつ、市橋義兄弟は逃げようと試みる。
　だが、そこに新手のカオスが登場した！
　全身規制光まみれの進撃のゲイ術家、ミッシェル・ナイスゲイ、降臨！
「いやぁ～ん♪　アナタ、アタシ好みのイッケメ～ン♪」
　体をくねらせながら誉に向かって倫理規定に喧嘩売った姿で突撃してくるミッシェル！
「しまった！　新手か！」
　小津が気付くも遅かった。
　既にシガツーの精神攻撃は完了している！
「はいできたー！　素描だから粗があるのは勘弁してね！」
　地上の彗星コンビに手渡されたブツは、彼らを恐怖のどん底に叩き落とした。



「５分で書き上げた２人のカップリング本だよ♪」
「「超上手ぇ！！」」
　そして中身を見れば、本当にレベル高くてスイマセン勘弁してくださいクラスの内容だった。
　伊達に本体が売れっ子漫画家やっていないだけのことはある。
　そしてBLへの情熱がなければ成し得なかった七夕の奇跡である。
　嫌な奇跡だった。
「うわぁ、うわぁァァァァァァァ！　そんなところに穴なんかないよォォォ！？」
　小津は恐怖していた！
「な、なんで僕が総受けなんだァァァァン！？」
　ロベルトも絶望していた！
　腐女子ズ、地上の彗星コンビを精神攻撃で瞬殺！！！
　と、ここでシガツーの実体が薄れてきてしまう。
「なんだ、時間切れかー。ざんねーん！」
　響が本当に残念そうに語る。
「本体と合流しなくちゃ。それじゃあねー！」
　シガツーは口惜しそうに手を振ると響と仲良く飛んでいく。
　こうして腐女子ズは後を濁しまくって帰投していった。

　一方、ミッシェルに執拗に狙われる付ける誉を庇う奏楽。
「来るな、この変態！」
　浴衣を振り乱して抵抗する奏楽。
　その姿に、何故か胸がドキドキする誉である。
「ちょとぉ～？　邪魔しないでほしいですわぁ～ん？」
　だが、ミッシェルの如何わしいジョイスティック（隠語）の動きが誉の精神を追い詰めていく。
「うわぁぁぁぁぁ！！　ジョイスティック（隠語）が右から左へ素早く切り替わって半円描くように下方向へスイングしてまた右に戻った！？」
　ジョイスティック（隠語）の動きがナニカのコマンド入力に見えてくるほど、誉は再び我を失い始めていた。
「誉、そこで強パンチボタンを同時押しだ、超必殺技を使わざるを得ない！　掌から巨大な気弾を放つんだ！」
　奏楽もこの状況に錯乱しているようだ。
「何を訳分からないこと言ってるんだ、奏楽！？　ああっ、誰か、助けてくれー！！」
　誉の悲痛な叫びが轟いたとき、どこからともなく聴こえてくる、チャイコフスキーの『くるみ割り人形』！
「な、なんだ、この鼻歌？」
　奏楽が辺りを見渡す。
「一体何よぉ、もう～ぉ？」
　ミッシェルも調子の外れた鼻歌の出元を探そうとキョロキョロ。
　だが周囲に誰もいない。
　そして、その歌声の主は唐突にやって来た。




「右から来るぞ、気を付けろ！」




　そう叫んで、真上から垂直踵落としをぶちかましてきた！
　攻撃はミッシェルの顔面に突き刺さり、自慢のケツあごは更に深く割れた！
　奇襲を受けてたたらを踏むミッシェルは、突然現れたお面の少女に問い掛ける。
「もう！　アナタ一体どこの誰よぉ～！？」
　緑髪のお面少女はお辞儀をすると、満を持して名乗りを上げた！
「ドーモ、コンバンワ。ワリタリーヌ・ゴールドナッツ・パックリーです。変態のクルミと竿は根こそぎ粉砕する……。『くるみ割り人形』の作者、チャイコフスキーの名に懸けて！！」
「マテマテ！　チャイコフスキーの『くるみ割り人形』はそういう意味じゃないだろ！！」
　誉が思わずツッコミを入れてしまった。
　男性なら股間がキュッと縮こまる想いがする話だ。
　だがミッシェルはなんと、ノーガード戦法を採用したではないか！
　もはや倫理的にノーガードな姿にワリタリーヌが愕然とする。
「なん……だと……？　こいつ、クルミを割られることに躊躇しないだと……！！」
　これにミッシェルがニヤリとほくそ笑んだ。
「残念ねぇ～？　たとえアタシのクルミを割ったとしても！　アタシはゲイからニューハーフになるだけよぉ～ん！！」
「し、しまった！！」
　ワリタリーヌ、まさかの論破！！
　これなら相手のノーガード戦法も納得だ！
「さぁ、これでもアタシのクルミと竿をわ・れ・る・か・し・ら・？」
「うん、でも割ること自体、問題はないよね。ということでサヨナラ！！」
　ワリタリーヌ、渾身の右ストレートがミッシェルの股間にシュウウウゥゥゥゥゥゥトッ！！
　パリーンという破壊音（幻聴）が聞こえ、ミッシェルは驚愕の表情を浮かべた。
「馬鹿なぁ……！？　理論では上回っていたのに～ぃん！！」
「理論なんてどうでもいい。ボクの変態への憎しみは、キミたちのよりも上を行く！」
　ワリタリーヌのろっこん『ブレイブハート』によって激運が発動、相手の急所（クルミ）をベストな角度で割れるポジションに潜り込むことに成功した。
「これで終わりだよ！　必殺――！」









「片玉無料サービスドラゴンアッパーッ！（by寝子島書房『寝子島神拳全集～龍の型～』参照）」



　ミッシェルは股間に超絶衝撃を感じながら、大気圏を再度離脱！
「Splaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaash!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
　ミッシェルが飛んでいったバックは、やけに天の川が白く輝いていましたとさ。













　――そしてミッシェルは――
　きっと片玉はもう戻らないかもしれない。
　ゲイとニューハーフの中間の存在となり、
　永遠にネタキャラとして彷徨うのだろう。
　そしていい男を捕まえたくても捕まえられなくて、
　――そのうちミッシェルは地上に戻ってパンツを穿いた。




「苦しい戦いだった……！」
　ゲフッと赤い液体（かき氷のイチゴシロップ）を吐き出すワリタリーヌ。
　市橋義兄弟を見遣ると、彼女はこう言った。
「世界にはクルミと竿という絶望がぶら下がっている。キミたちがダークサイドに落ないことをボクは願うばかりだ……。さらばだ！」
　光の速さでワリタリーヌは星の海へ姿を消していった。
　ありがとう！　ワリタリーヌ・ゴールドナッツ・パックリー！
　だが、世界の絶望を全て粉砕するまで、彼女の聖戦は終わらない！


「……誉、結局なんだったんだ？」
「俺に聞くなよ、奏楽……」
　とりあえず、家に帰ろう。
　２人はそういうことにした。

　ロベルト・エメリヤノフ：精神的にノックアウト
　小津 秋吉：存在しないはずの穴に恐怖している
　常盤 四月２号（シガツー）：時間切れ直前に本体と合流、お土産話でホクホク
　響 タルト：BLカップル鑑賞に大満足
　市橋 奏楽：義弟を思いやる優しさと夢を確認するも、全てワリタリーヌに持ってかれた
　市橋 誉：何故か義兄の頼もしさに胸が熱くなるも、全てワリタリーヌに持ってかれた。
　ワリタリーヌ・ゴールドナッツ・パックリー：最後の聖戦へ向かう
　ミッシェル・ナイスゲイ：地上でパンツ穿こうとしたら職務質問 →「署までご同行願えますか？」