芽森菜々緒の迷走｜リアクション

芽森菜々緒の迷走

「旧市街の商店街に冒険者セットとか売ってないものか……ある訳無いか」
　御剣刀はダンジョン攻略の為の買い出しを急いで行っていた。
　とりあえず携帯食や飲料、それと怪我した時を考えて応急処置が出来る一般医薬品を多めに買い込み、自宅から愛用の木刀を持参する。
　ではいざ、ダンジョンへ出立だと意気込んでいるところを、恋人の小山内海に偶然目撃されてしまった。
『かたな　どうしたの？』
『だれかと　けんかしにいくの？』
　心配そうに目を潤ませながらスケッチブックに文字を走らせる海。
　ちょっと誤解されそうなので、刀はすぐに経緯を海へ順を追って説明していった。
「……ってことでさ、芽森先輩がラピスを星幽塔へ帰す手掛かりがあるらしいダンジョンを攻略する事になったんだ」
『ダンジョン？』
　いきなり飛び出した単語に、海は首を傾げていた。
（先輩の所に居候してる子が星幽塔の関係者で、その子のためにと……あと寝子島にダンジョンが出現って、なんだかすごい事になってるね）
　桜花寮では野々ののこと同室の身としては、らっかみのフツウを壊しかねないダンジョンは攻略しておかねばならない。
『うん、わかった　私でよければ手伝うよ』
『あ、でも　じゅけんべんきょうもあるし　あまりじかんは取れないかも』
　走り書きする海の懸念に、刀が即答した。
「聞いた話だと、ダンジョンの中の時間はこっちの６万分の１の流れらしいんだ。ダンジョンの中で丸一日以上滞在しても、こっちでは２秒くらいって言ってた」
　それを聞いて海に衝撃が走る。
　それだけ時間の流れが違うなら、星幽塔へ是非とも関わってみたい。
　何故なら海は星幽塔へは２回しか行ったことがないからだ。
『それなら　私もおてつだいできそう』
『せいゆうとう、きょうみあるし』
「なら、海もパーティーに加入だな。芽森先輩に連絡入れておくよ。この間、道案内した時に連絡先を教えてもらったからな」
　刀はスマホを取り出すと、海の加入とその準備にもう少し時間がかかると菜々緒へ連絡を入れた。
　その傍らで、海は密かに冒険者パーティーっぽい感覚にワクワクしていた。
　と、ふと海はスケッチブックに文字を書き出した。
『お友だちを　よんでいいかな？』
『ましろちゃんって子なんだけど』
　白真白は海の友達で寝子高３年生の同学年同士、かつ刀と同じクラスメイトだ。
「ああ、白か。俺はいいぞ。パーティーは人数が多い方が心強い」
『ありがとう　それじゃ　れんらくするね』
　海はメッセージアプリで素早く真白へ『パーティー加入』の依頼内容を素早くタップし、送信してみせた。
　すると、ものの数秒で返事が来た。

『ダンジョン？
　時間の経過が６万分の１になるんだ？
　それなら手伝おうかな
　星幽塔の事も気になるしね』

　オッケーを取り付けた海は、刀が教えた集合場所を真白へ伝えた後に、自身の準備を整えるべく刀と商店街を歩いていった。

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