ファイナル・エアーでばばばばばっひゅ～～～ん！｜リアクション

ファイナル・エアーでばばばばばっひゅ～～～ん！

　祭囃子に誘われて、やってきたのは夏祭り。
　打ち上げ花火が空に花を咲かせ、訪れた人々の心を弾ませる。
　さぁ、一夜の幻想を楽しもう！
「ほら、ついているよ」
「えっ、ホント？」
　ウォルター・Bにそう言われ、稲積柚春は「どこの辺りかな」と口元にふれようとした。
　ちょうど食べていた綿あめから口を話した時、ウォルターは口元に手を伸ばし、柚春の口元を指で拭う。
（ちょっと近いんじゃないか！？）

　柚春の後ろにいた緑林透破が何か拭う物を探そうと目を離した隙の事だった。目撃してしまった彼は言葉を失ったらしい。
　透破は柚春の保護者的な存在であり、ウォルターが彼女を悲しませることが無いよう見ているという。だが、目の前で起こった事には思わずそんな風に思ってしまう。
「ありがと」
　柚春が礼を言えば、ウォルターはにこり、と微笑む。「大丈夫だから」と笑う柚春に、透破は何も言えず僅かにウォルターを見た。
　意味深な笑みを向ける彼に対し、透破は少し悔しさを覚えるが柚春の嬉しそうな顔を見ていると……。
「ねぇ、ワット、透破！　花火が綺麗だよ！！」
「ここはよく見えるね。いいタイミングでここに来れてよかったよ」
　彼女が心から笑うのは、傍にウォルターがいるからだろうか？　透破は小さくため息を吐くと、僅かに瞳を細めた。
「そう、だな」
　柚春が嬉しそうならば、心から笑えるならば、それがいい。複雑な気持ちを抱えながらも、透破は小さく頷いた。
　透破がもやもやを抱えている事を知らず、柚春はウォルターと寄り添い花火を見上げる。
「また一緒に見に行こうね」
　彼女が楽し気にそう言えば、ウォルターも透破も笑顔で頷く。
　ウォルターは、はぐれないようにするべく、そっと柚春と透破を自分の方に寄せた。

　お三夜大明神はこの夜、愛らしい人間の少女の姿をとっていた。傍らには仲の良い友、シオ・レイゼルオークの姿が。

「人の姿になってお祭りも楽しいにゃ」
「ふふっ、楽しいって思ってくれて嬉しいですねぇ」
　シオもまた顔を綻ばせ、楽し気に瞳を細める。
「これ、上手にとれたにゃ。シオ殿も遊ぶにゃ？」
　そう、お三夜様が見せたのは、ピンク色の水ヨーヨー風船である。シオに助けられながらゲットしたそれを、お三夜様は嬉しそうに空に掲げる。花火の光に輝き、お三夜様は「綺麗なのにゃ！」とはしゃいだ声を上げた。
「そういえばお三夜さま。お腹がすきませんか？」
「ちょっとおなかすいたのにゃ。でも、屋台はどこも待ちそうだにゃ……」
　シオの問いかけに、お三夜様は後ろを振り返ってしょんぼり。そんな姿に、シオはくすりと笑い、どこからともなく焼きそばのパックを取り出した。
「花火が始まる前に買っておいて正解だったみたいです。おひとつどうぞ」
　念のため猫が食べても大丈夫な物か確認済である。お三夜様はシオに「ありがとうにゃ！」と言って受け取り、石段の上に腰かけた。
　花火が、天を彩る。それを見ながら食べる焼きそばは、また格別だっただろう。

　夜空に花火が咲くたびに、楽し気な声が響く。

「たーまやー！」「かーぎやー！」

　そう言っているのは滝原カノンと滝原ましろである。そして……。

「こうして、家族で祭りに行くのも……悪くねぇな」

「そうでしょ？」

　と、言い合いながら花火をみているのは滝原レオンと滝原レオナ。二人は同じ緑色の瞳に華やかな夜空を見、家族の歓声に耳を傾ける。
「ほらっ！　またあがるわよ！」
　滝原ねねがりんごあめで夜空を指せば、ひときわ大きな一輪が、納得の音量を立てて咲く。
「綺麗だね、ねーちゃん」
「うん」
　カノンの言葉に、レオナが小さく頷いて微笑む。
　普段は距離感が掴みかねている二人だが、同じ花火の美しさを共有し、ちょっと互いの心が近く感じた。
「仕掛け花火もあるの？」
「みたいみたい！」
　ねねとましろが３人を振り返り声を上げると、レオンが懐からお祭りのパンフレットを出し確認する。と、彼は「もう直にはじまるだろ」と指をさす。
　その先で散る火花。光の滝が音を立てて流れていく様が目に飛び込んでくる。ねねは思わず「すごいっ！」と声を上げた。
「迫力あるわね！」
　レオナも思わず目を輝かせる。と、ドン、ドン、といくつかのうちあがる音。
「こっちは土星みたいなのが上がったぞ」
「わぁ！　熊さんだ！！」
　レオンとカノンの声に、みんなが空に視線を移し歓声が響く。
「また見に行こうよ、みんなで！」
　ましろは花火が気に入ったのだろう、レオンに笑顔でおねだり。レオンは「いこうな」と、そっとましろの頭を撫でる。
「今度は屋台で何か食べられたらいいな」
「花火の後でも買えるでしょ？　たこ焼き食べたいな」
　空腹になったのか、カノンがポツリ呟けば、レオナも同調し、ねねは少し眠そうな顔で「わたあめ食べたいかも」と続ける。
　小遣いがまだあるならな、と苦笑するレオンを、ましろは不思議そうな顔で見つめた。

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