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【お正月】３つの世界を巡る魔行列車の旅
元日、白いコートに身を包んだ本条 小萩は自信に満ち溢れた表情で通りを歩いていた。
突然の向かい風は伸ばした右手で受け止める。掌に切符が飛び込んでも動じない。
「小萩は運命に導かれているのです」
軽く握り締めた状態で道なりに突き進む。
停車中の魔行列車を目にして不敵に笑う。近くにいた制服姿の女性に自ら近づき、切符を鼻先に突き付けた。
一言もない間に車両へ乗り込む。
車内をずんずんと歩いて唐突に立ち止まった。
「小萩の席なのです」
指定席扱いで座ると腕を組んだ。
「次の展開が待ち遠しいのです」
期待に応えるように魔行列車が浮かび上がる。横目で景色を眺め、程なく霊界に繋がるトンネルへ入っていった。
乗客は頻繁に車両を移る。小萩の横を異形の者達が何人も通り過ぎた。
青いドレスを身に纏った金髪の女性は例外と言える。小萩を目にした瞬間、立ち止まって声を掛けてきた。
「相席をよろしいですか」
「もちろんです。本条アンヌ＝マリーさん！」
小萩は持っていたハンカチを隣に広げた。出来る女という顔で女性を見上げた。一瞬、たじろぐ姿を見せたが、ありがとう、と品よく返して座った。
待ち切れないとばかりに小萩は熱意が迸る目で言った。
「久しぶりのご先祖様との邂逅に胸が高鳴っています！ この出会いは偶然ではなくて必然です！ 今でも小萩を見守ってくれているのですね！ 繊細すぎる小萩がアンヌ＝マリーさんの保護欲を掻き立ててしまうことは申し訳なく思っています。それでも小萩は声を大にして言います。これからも凄い小萩の活躍を見て欲しいのです！」
「……あなたは才気に溢れていますが、人生に困難はつきものです。明治時代という時代背景もありますが、フランス出身の私が日本人の本条平九郎さんと結婚するまでには本当に大変な道程が――」
「大丈夫です！ 小萩は凄いので、どのような困難も乗り越えてみせます！ 逆に試練は飛躍の時なのです。今以上の凄い小萩を想像するだけで身体が熱く滾ってくるのです！」
「そ、そうですか。身体は資本なので気をつけるのですよ」
多少、引き気味の顔で女性は言った。
小萩は更に興奮した顔で身体ごと寄せてきた。
「元気いっぱいで漫画も描いています！ 寝子島高校の桜花寮の部屋は原稿とメモで溢れ返っています。資料として集めた書籍も山積みです。頒布用の無料コピー本は隙間を利用して差し込んで、ぎゅうぎゅう詰めです！」
「聞いているだけで眩暈がしそうな話ですね」
「アンヌ＝マリーさん、この程度は序の口なのです！ 学校での活動は目を見張るものがあります。バドミントン部と華道部の部長を兼任しています。美しい小萩に相応しい美化委員長です！ 体育祭と寝子祭では実行委員長の要職に燦然と輝き、もはや寝子島高校の生ける伝説と言っても過言ではないのであります！」
「そ、それは気が遠くなるような幅広い活動範囲ですね。現状はよくわかりました。将来はどのように考えているのですか」
青い瞳で女性は冷静に問い掛ける。受けて立つとばかりに小萩は限界まで顔を近づけた。
「最後に話そうと思っていました！ 先日、漫画コンテストで華々しくトップを飾り、電撃デビューが決まりました！」
「そう、なのですか？ そのような兆候はなかったと把握しているのですが」
「そういう夢を見ました！」
「夢、ですか！？」
話の行き先がわからず、女性は強張った表情となった。
「ただの夢ではありません！ 小萩の磨き抜かれた感性が正夢を訴え掛けているのです！」
「そ、そうなのですか？」
「凄い小萩にはわかるのです！」
女性は軽く瞼を閉じた。眉根に皺を寄せて頭を上下に動かす。
小萩は目の輝きを失わず、誇らしげに胸を張る。
「今は、そうですね。そのように思っておきましょう」
「未来の凄すぎる小萩は生ける伝説から生ける神話になるのです！ アンヌ＝マリーさん、特等席でその軌跡を見ていて欲しいのです！」
小萩の熱弁の凄まじさに圧され、女性は座席から押し出されそうになった。
「この姿になっても生前と同じで、時によっては疲労を感じるものなのですね」
「大丈夫です！ 小萩が元気をお裾分けするのです！ このようにアンヌ＝マリーさんの手首を握ってパワーを送ります！」
「それは、その、ありがとう」
「凄い小萩は褒められるとヒーリングパワーが普段の十倍になるのです！」
「あなたに、そのような力が秘められていたとは……」
隠し切れない驚きで女性は小萩と真摯に向き合う。
「以前にそのような夢を見たのです！ だから本当なのです！」
「ぬー、そうですね。そうだと思いました」
「アンヌ＝マリーさんに理解して貰えたのです！」
小萩は純粋に喜んだ。女性は聞こえないように溜め息を吐き、最後には納得したような表情で笑みを見せた。
突然の向かい風は伸ばした右手で受け止める。掌に切符が飛び込んでも動じない。
「小萩は運命に導かれているのです」
軽く握り締めた状態で道なりに突き進む。
停車中の魔行列車を目にして不敵に笑う。近くにいた制服姿の女性に自ら近づき、切符を鼻先に突き付けた。
一言もない間に車両へ乗り込む。
車内をずんずんと歩いて唐突に立ち止まった。
「小萩の席なのです」
指定席扱いで座ると腕を組んだ。
「次の展開が待ち遠しいのです」
期待に応えるように魔行列車が浮かび上がる。横目で景色を眺め、程なく霊界に繋がるトンネルへ入っていった。
乗客は頻繁に車両を移る。小萩の横を異形の者達が何人も通り過ぎた。
青いドレスを身に纏った金髪の女性は例外と言える。小萩を目にした瞬間、立ち止まって声を掛けてきた。
「相席をよろしいですか」
「もちろんです。本条アンヌ＝マリーさん！」
小萩は持っていたハンカチを隣に広げた。出来る女という顔で女性を見上げた。一瞬、たじろぐ姿を見せたが、ありがとう、と品よく返して座った。
待ち切れないとばかりに小萩は熱意が迸る目で言った。
「久しぶりのご先祖様との邂逅に胸が高鳴っています！ この出会いは偶然ではなくて必然です！ 今でも小萩を見守ってくれているのですね！ 繊細すぎる小萩がアンヌ＝マリーさんの保護欲を掻き立ててしまうことは申し訳なく思っています。それでも小萩は声を大にして言います。これからも凄い小萩の活躍を見て欲しいのです！」
「……あなたは才気に溢れていますが、人生に困難はつきものです。明治時代という時代背景もありますが、フランス出身の私が日本人の本条平九郎さんと結婚するまでには本当に大変な道程が――」
「大丈夫です！ 小萩は凄いので、どのような困難も乗り越えてみせます！ 逆に試練は飛躍の時なのです。今以上の凄い小萩を想像するだけで身体が熱く滾ってくるのです！」
「そ、そうですか。身体は資本なので気をつけるのですよ」
多少、引き気味の顔で女性は言った。
小萩は更に興奮した顔で身体ごと寄せてきた。
「元気いっぱいで漫画も描いています！ 寝子島高校の桜花寮の部屋は原稿とメモで溢れ返っています。資料として集めた書籍も山積みです。頒布用の無料コピー本は隙間を利用して差し込んで、ぎゅうぎゅう詰めです！」
「聞いているだけで眩暈がしそうな話ですね」
「アンヌ＝マリーさん、この程度は序の口なのです！ 学校での活動は目を見張るものがあります。バドミントン部と華道部の部長を兼任しています。美しい小萩に相応しい美化委員長です！ 体育祭と寝子祭では実行委員長の要職に燦然と輝き、もはや寝子島高校の生ける伝説と言っても過言ではないのであります！」
「そ、それは気が遠くなるような幅広い活動範囲ですね。現状はよくわかりました。将来はどのように考えているのですか」
青い瞳で女性は冷静に問い掛ける。受けて立つとばかりに小萩は限界まで顔を近づけた。
「最後に話そうと思っていました！ 先日、漫画コンテストで華々しくトップを飾り、電撃デビューが決まりました！」
「そう、なのですか？ そのような兆候はなかったと把握しているのですが」
「そういう夢を見ました！」
「夢、ですか！？」
話の行き先がわからず、女性は強張った表情となった。
「ただの夢ではありません！ 小萩の磨き抜かれた感性が正夢を訴え掛けているのです！」
「そ、そうなのですか？」
「凄い小萩にはわかるのです！」
女性は軽く瞼を閉じた。眉根に皺を寄せて頭を上下に動かす。
小萩は目の輝きを失わず、誇らしげに胸を張る。
「今は、そうですね。そのように思っておきましょう」
「未来の凄すぎる小萩は生ける伝説から生ける神話になるのです！ アンヌ＝マリーさん、特等席でその軌跡を見ていて欲しいのです！」
小萩の熱弁の凄まじさに圧され、女性は座席から押し出されそうになった。
「この姿になっても生前と同じで、時によっては疲労を感じるものなのですね」
「大丈夫です！ 小萩が元気をお裾分けするのです！ このようにアンヌ＝マリーさんの手首を握ってパワーを送ります！」
「それは、その、ありがとう」
「凄い小萩は褒められるとヒーリングパワーが普段の十倍になるのです！」
「あなたに、そのような力が秘められていたとは……」
隠し切れない驚きで女性は小萩と真摯に向き合う。
「以前にそのような夢を見たのです！ だから本当なのです！」
「ぬー、そうですね。そうだと思いました」
「アンヌ＝マリーさんに理解して貰えたのです！」
小萩は純粋に喜んだ。女性は聞こえないように溜め息を吐き、最後には納得したような表情で笑みを見せた。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年09月19日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年09月26日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年09月26日 11時00分
