【お正月】３つの世界を巡る魔行列車の旅｜リアクション

【お正月】３つの世界を巡る魔行列車の旅

　従業員用の特別車両の座席でヴィーゼ・ベルンスタインはコーヒーを飲んでいた。星を散りばめたような空を眺め、緩やかに息を吐いた。
「……さすがに疲れたわ」
　自身の血を操って肩を揉んだ。拳の形にして適度に叩く。
　休憩中ではあるものの漫然と流れる景色を見ていると、つい仕事関連のことが頭に浮かぶ。
　――停車中に清掃はしているんだけど、六号車はどうだったかしら。全ての座席の下まで目が届いていなかったような気がするわ。あと、乗客の好みでお弁当と飲み物の売り上げが好調ね。そうなると補充も必要になる。手間を惜しむなら品揃えが豊富な花緑青（はなろくしょう）駅よね。
　持ち上げたままのコーヒーカップに気付き、急いで残りを飲み干した。
「……糖分補給も必要ね」
　側のワゴンを見て、そうよ、と声を上げて立ち上がった。備え付けの棚に入れていたアイスのカップをプラスチックのスプーンと共に取り出す。
　座席へ持ち帰ると早々に蓋を開けた。勢いよくスプーンの先端で突くと弾かれた。何度も試したが同じで最後は柄の部分が折れた。
「どんだけ固いのよおお！？」
　叫ぶような声が車内に響き渡った。