ひねもすのたり、雲の切れ間に｜リアクション

ひねもすのたり、雲の切れ間に

　５人が最初に訪れたのは草食動物・鳥類エリア。
　そこにあるふれあい広場では、ウサギやハムスター、モルモットなどの動物を直接触ることが出来る。
「修ちゃんズルイのだ！　真央ちゃんにもモフモフさせてほしいのだー！」
　そのふれあい広場の中、真央がなにやら大声をあげていた。彼女の目の前にいるのはウサギの山、ではなく、山のようなウサギに群がられ寝転んだ修だった。彼の動物に好かれる体質が遺憾無く発揮されているようだ。
「俺だってやりたくてやってるわけじゃ……」
　ない、とは言い切れない修である。
「ほら」
「わーいっ、ありがとうなのだ！　んー、なかなか美味しそうなのだ……じゅるり」
　修は群がっているうちの１羽を抱き上げて真央に手渡した。真央は目を輝かせてそれを受け取ったが、何やら不穏当な発言をしている。
「修、まるでどっかのセレブが着てるコートみたいだね、それ」
　その様子を見ていた翡翠が笑って言った。
「ふん、どうせ俺には似合わないだろう。ほら猫村も持っていけよ、毛皮」
　修は真央にしたのと同様に、翡翠にもウサギを１羽差し出した。

　次に一同が訪れたのはサル山・水辺エリアだ。
　このサル山のボスであるパンチは、以前ちょっとした事件を引き起こした張本人でもある。
「パンチに会うのも随分久しぶりなのだ！　あれから元気にしてたのだ？」
　サル山の周囲にめぐらされたフェンスから、５人は中を覗く。そこには多数のサルの群れを見守るようにして、パンチが頂上にどっしりと座りこんでいた。
「また具合悪くなったりはしてなかったみたいで、良かった」
　月詠は安心したような表情を見せる。
「お、あのパンチとかいうボス猿、俺の方を見てるみたいだぞ？」
「だったら武道、丁度そこにスペースがあるから何か面白いものでも見せてやったらどうだ？」
　修がそう言って指差した先には、周りより一段高くなっているお立ち台のようなスペースがあった。そこに立てばサル山の方からはしっかり見えるだろう。
「ふっ、それは名案だ。武道、しっかり見せてあげると良い」
「え、何？　武道先輩なにかやるんですか？」
「武道ちゃんセンパイ、それすっごく楽しいのだ！　真央ちゃんもやりたいけどお先にどうぞなのだ！」
「なんだよ急に、お前らなんか隠してる？　修くん、ちょっとニヤついてない？　なんで月詠ちゃん笑ったの？　……まあいーや、見てろよ俺の渾身のギャグ！」
　腑に落ちないながらも武道はお立ち台の上へと立った。
　その姿を見て、パンチをはじめサルたちが期待のこもった眼差しを彼へと向ける。
　精神統一するように目を瞑っていた武道は、カッと目を見開いた。
「行くぜっ！『スイマーが睡魔に襲われた、どーもスイマせん』！」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
　一同沈黙。
　パンチがゆらりと立ち上がり、右腕を高々と掲げ、武道に向かって拳を振り抜いた。
「どぅおぉわああああッ！？」
　ドッパァン、と何かが破裂したような音と共に、クロールの姿勢をとっていた武道は真後ろに吹っ飛んでいった。