ひねもすのたり、雲の切れ間に｜リアクション

ひねもすのたり、雲の切れ間に

　洋服店を後にすると、丁度良い頃合いだということで二人はファミリーレストランへと入った。こちらもアウトレット併設店だ。刀が選んだものはチキングリル。千歳はなんでも構わないらしく刀と同じものを注文した。
「刀君、この後はどうするの？　もし行きたい所があるなら今度は私が付き合ってあげましょうか」
　注文を受けた店員が去ると、千歳は刀にそう尋ねた。
「そうだな、見たい映画があるにはあるけど……」
「映画？　なんの？」
「クラスで話題になってたんだけど、なんでも忠臣蔵をベースに大胆なアレンジを加えたSF大作らしいよ、全米が泣いた」
「全米の涙もろさは天下一ね……。題名は？」
「RNN47」
「逆に興味が湧いて来たわ」
　あまりにもB級感に溢れすぎていることは刀にも分かっていた。
　しかしその割にテレビのコマーシャルでは『せーのっ、RNN47サイコー！』などと叫んでいる。そのギャップに惹かれてしまったのである。
　クラスで見てきたという生徒に話を聞いても皆一様に一度見れば分かる、と言うばかりなので、仕方なく自ら映画館に足を運ぼうと決めたのだった。
「そういえば千歳とこうして二人きりで遊びに出掛けるのって、これまで無かったな」
「なによ突然」
「いや、いつも一緒に練習したり皆で遊んだりしてるから気が付かなかったけど、偶にはこうして千歳と遊ぶのも楽しいなと思ってさ」
「なっ、なによ突然……」
「また今度こうやって遊びに行くのも良いじゃないか、なあ？　今度はちゃんとさっき選んだ服をお互い着てさ。折角なんだ、千歳が着てるのも見たい」
　刀はそう言ってわずかに笑う。
　その表情を見た千歳はため息をつく。
（まったく、刀君てばずるいんだから）
「分かったわよ、そんなに言うならまた今度ね」
　呆れたように答える千歳の表情は、しかし、自然と笑顔になっていた。