狂気の笑顔が悪意をばらまく｜リアクション

狂気の笑顔が悪意をばらまく

　穂現まうは黒い子猫の猫又に変化した。いきなりの砂丘に小さな身体を振るわせる。
　――ここ、猫鳴館と違う。ろっこんで、まうまうを召喚して一緒に過ごす。はずだったのに邪魔するのは誰。
　喧騒の中心に青黒いラミアがいた。下半身の蛇の尻尾で群がる猫達を打ちのめす。もう一体、明滅する蛇霊がいて飛び掛かる猫の攻撃を空振りさせた。
　まうは金色の瞳を向ける。徐々に不機嫌な顔となり、足元の砂を蹴った。
「まうは邪魔する敵を許さない。まうまう！」
　キーワードのまうまうに反応して『まうまう只今増殖中』が発動。召喚されたまうまうもまた、黒い子猫の猫又だった。
　ラミアに挑む猫が絶えない。各々が強敵と判断した。
　まうとまうまうも真っ先に倒す相手と認識して動き出す。
　足場は砂地なので良好とは言えない。猫の身体能力を宿した二人は砂に足を取られる前に引き抜いた。繰り返すことで速度を落とさず、ラミアに急接近を果たす。
　身に危険を感じたのか。まうを尻尾で締め上げようとした。
　敵の意図を読み、まうは跳んだ。尻尾の上に着地してそのまま走る。後ろにはまうまうもいて、力強い走りを見せた。
「ぶちのめす」
　まうは敵の上半身を狙って猫パンチを繰り出す。避ければ後ろのまうまうが追撃で引っ掻いた。青黒い腕に三本の斜めの傷が入る。
　ラミアは怒りの咆哮を上げた。まうまうに的を絞り、噛み付こうとした。
「させない」
　まうは横っ飛びの姿から強烈な蹴りを放つ。ラミアの顔面を捉え、上体をぐらつかせた。
　すかさずまうまうが脇腹を引っ掻き、悲鳴のような声を上げさせた。
「まうまう、完璧」
「まうも凄い」
　二人は共に讃え合う。
　怒りを爆発させたラミアは尻尾を振り上げる。力を溜めて二人に向かって振り下ろす。
「遅すぎる」
「当たらない」
　まうとまうまうは左右に跳んだ。着地してすぐに跳躍。再び尻尾の上を走り、波状攻撃を仕掛けた。
　一方を躱せても次で食らう。そこから連撃に持ち込んだ。
　鮮やかな連携と速度が合わさり、残像のようになってラミアを攻め続けた。
　敵の動きが鈍くなる。仕留めるのは時間の問題となった。