空がとても青く、高く感じられた。十一月とは思えない暖かさで人々はのんびりと過ごす。
猫達も穏やかに、心地の良いものだけを享受するかのようにあちらこちらで日向ぼっこをして寝転がる。
偶然、目にした
野々 ののこはそっと近寄り、寝ている茶虎の頭を撫でた。猫は驚かず、気持ちよさそうに目を細めた。
民家の塀で日向ぼっこをしていた
テオがむくりと起き出す。辺りを確認するように顔を動かした。
『また神魂の影響、いや、それだけじゃねぇな。妙な気配がしやがるぜ』
テオの心配は見事に的中した。すでに身近なところで異変が起こり始めていた。
寝子島高校の調理実習で、
七夜 あおいは眉間に皺を寄せた。卵焼き器の扱いが急に雑になる。
「イライラするわ!」
コンロの火力を一気に上げた。出汁巻き卵の表面が過剰に炙られ、艶やかな黄色は黒く染め上げられた。
あおいの豹変に近い行動に周囲がざわつく。本人は気にしていない様子で目を吊り上げて手を動かした。
「完成ね。ほら、食べなよ」
消し炭と化した出汁巻き卵を誰彼無しに勧める。嫌がる者の口の中に押し込もうとした。難を逃れたとしても諦めず、執拗に追い回した。
「ほらほら」
悪意に塗れた笑顔であおいはクラスメイトに迫る。
寝子島高校の南校舎の屋上にいた
黒白 滴は、その騒動を目の当たりにしてニヤリと笑う。
「無様な姿がとてもいいわ~。もっと私を楽しませてね~」
滴の背後で蠢く、負の感情の集合体と考えられている「どろでろろ」は大きな口から分離体を次々と吐き出す。生み出された『分離でろろ』は飛びながら姿形を変えてゆく。更なる混乱を求めて方々に散っていった。
近くで猫の鳴き声がした。滴は瞬時に、サニー? と亡くなった仔猫の名を呼んだ。どこから迷い込んだのか。屋上の片隅に黒猫の姿があった。
「……あの子と違う」
落胆の声を漏らす。悲し気な表情は一気に煮え滾る怒りに変わった。
「あれはいらない」
滴の声に応えるようにどろでろろは新たな『分離でろろ』を吐き出した。黒猫は飛来する異様な存在に恐れを抱き、屋上内を必死になって逃げ回る。
愉悦を含んだ笑い声が青い空に響き渡る。
「もっとよ。もっと私を楽しませて」
滴は青い闇に包まれて忽然と姿を消した。程なく別の方向から悲鳴のようなものが聞こえてきた。
寝子島を気ままに散歩していた
漫 歩は足を止めた。
目の前をアライグマが横切る。全身が青黒く、思わず目で追っていた。
「新種、じゃないよな?」
邪悪な雰囲気を歩は感じ取り、用心深い目となって再び歩き始めた。
その頃、寝子島高校の食堂で悲鳴が上がる。厨房にいた調理師がフライパンを握って学生達に襲い掛かったのだ。混乱を極める中、
万条 幸次も逃げ惑いながら事の発端を思い出していた。
――あの青黒い蝶が調理師さんの肩に止まったら、こんな状態になったんだよねぇ。怒りというか、負の感情を爆発させる感じなのかなぁ。
逃げながら幸次は上を見やる。元凶である青黒い蝶は、その数を増やしていた。
黒い仔猫のサニーは何かを探すようにして島中を歩き回る。時に立ち止まって匂いを嗅ぐような仕草をした。
何かを探し当てたのか。一方に向かって勢いよく走り出した。
テオは現状を把握した。
『どろでろろの分離体が好き放題しやがる。触れた者の負の感情を増大させる、最悪の展開だぜ』
思念を飛ばし、各々に情報を伝える。頭の中に響く声を聞いた者達は事態の収拾に乗り出す。
その矢先のことだった。人々の姿が不自然に揺らぎ、等しく小さくなってゆく。
テオは神魂の影響を感じ取った。
『おまえら、負の感情を受けにくい姿になったようだな。あとはたのむぜ、フツウを守る為に』
島内にいる猫達は呑気な声で、にゃ~、と鳴くのだった。
皆々様、待望のホワシナ最終章(サードシーズン第3話)の始まりです。
担当するのは鮮烈な漆黒(?)こと、黒羽カラスになります(パチパチパチ、ヒューヒュー、パフパフパフー)。
1人でこのようなことをすると、虚しくなりそうなので程々にします、はい。
ガイドにご登場いただきました、漫 歩さん、万条 幸次さん、ありがとうございます。
当シナリオにご参加いただけた場合、ガイドの内容に縛られず、自由にのびのびとアクションを書いてください。
あらまし
▼世界の状況
黒白 滴が「どろでろろ」を使って『分離でろろ』を生み出し、至る所に悪意の芽をばらまいています。
中には力の強い凶悪な『分離でろろ』もいます(後述)。
そのため、寝子島の人々の<負の感情>が増殖の一途をたどっています。
このままでは寝子島のフツウが崩壊することになるでしょう。
それに対して、もともと寝子島に散らばっていた神魂が反応したようです。
フツウを守る使命を持った者を、分離でろろに影響されづらい「猫」に変えました。
PCさんは全て(ひとも、もれいびも、ほしびとも、あやかしも)、猫の姿になっています。
猫同士で猫語を話して(リアクション上は日本語で表記)、猫として過ごしましょう。
―― 猫の島『寝子島』で、ついに猫としての決戦です!
猫は<負の感情>の影響を受けづらいとはいえ、
さすがに『分離でろろ』などから直接攻撃を受けると自身の<負の感情>も増殖してしまいます。
その場合、性悪な猫になってしまったり、もっと酷いと元の姿に戻って制御不能になることもあります。
▼やるべきこと
【1】どろでろろの攻撃をかわし、倒そう。【A~F】
猫の天敵の姿をした『分離でろろ』が現れ、猫を襲ってきます。
それぞれの特徴に気を付けて、倒しましょう。
<負の感情>で暴れている一般人も脅威となります。
敵に回った一般人は猫ではなくて、人の姿のままです。
攻撃を直接受けたり、勝負に負けたりしてしまうと、PCさんの<負の感情>が増殖します。
全ての敵に共通していることですが、倒しても消滅させることはできません。
弱体化した『分離でろろ』は生存本能が働くのでしょうか。逃げの一手となります。
どこへどう逃げるのかは、現時点では不明です。
【2】よくわからないまま、楽しもう。【A~F。特にD】
事情を知らない状態で、あるいは知っていても、猫の姿でこの状況を大いに楽しみましょう。
「ホワシナあるある」のお気楽コースになります。
【3】黒白滴を探して、止めよう。【G】※難易度高し
寝子高の屋上にいた滴ですが、今はどこにいるかわかりません。なんとかして探してみよう。
それに関係する事柄で黒猫のサニーの行動が気になります。何かを探しているようでした。
今の寝子島は異常事態となっています。
何も手段を講じないで追跡することは非常に難しい状況です。
サニーにもわかっていて、警戒心を強めています。
不用意に近づけばすぐに逃げられてしまうでしょう。
幸いなことにみなさんは猫になっていて猫語が使えます。
サニーと意思疎通ができれば力になってくれるかもしれません。
※PCがどのような猫に変化しているのかを自由に決めてかまいません。
決めなくても問題ありません(PCに適した姿をマスターが決めます)。
(ほっそりした俊敏な猫、太って鈍重な猫、生後1ヶ月の子猫。三毛猫、茶トラ、白猫、黒猫など)
※ろっこんや星の力、あやかしとしての力なども(猫の姿で使えるものは)使えます。
※行き先【DとE】(後述)のみ、二足歩行で服を着た「ねこ」としても活動可能です。
※行き先【F】(後述)のみ、猫関連の妖怪や付喪神、猫の幽霊などになることもあります。
【追記】4月24日
※持ち物は、普段から持ち歩いているようなもので猫の姿で持っていても不自然でなければ、
持っていることにして構いません。
居場所、行き先
自分がどこにいるか、どこに行くか、何をするか、以下のA~Gの中から1つのみ選んで、
キャラクターの行動欄の冒頭に【A】などと記載してください。
※ガイド本文でのあれこれは、基本的には知っているものとみなされます。
知らないという設定をご希望の方は、アクションに明記してください。
※<負の感情>が増殖する展開になったら、プロフィールなどから類推して描写されます。
こだわりのある方は、アクションに明記してください。
【A】寝子ヶ浜海岸 / トンビ
▼舞台
海岸。ちょっとした物置小屋、流木、岩場があります。
海岸沿いの道にはおでんの屋台があります。
店主は<負の感情>が暴走しているので、猫に対して乱暴してきます。
包丁を投げつけてきたり、熱々のおでんを猫舌の猫にムリヤリ食べさせたり。
▼敵
7羽のトンビが「分離でろろセブン」として襲ってきます。全部倒しましょう。
固いクチバシで突かれたり、鋭い爪で体を掴まれて海上に捨てられたりします。
翼によって尋常でない強風や竜巻、カマイタチを発生させます。
▼NPC
・黒崎 俊介(普通サイズの黒猫)
(負の感情:名前を覚えてもらえないことを気に病んでいます。名前を聞いてまわっちゃうかも)
・相原 まゆ(小さな白猫)
(負の感情:子供っぽい見た目を気にしています。目が合うとやわらかい爪でひっかいてきます)
・七夜 あおい(あのあと、なんとか猫になれたようで、皆と共闘します)
(負の感情:食べものに執着。人に戻ると、またムリヤリ食べさせます)
【B】寝子温泉 / サル
▼舞台
老舗旅館の露天風呂(混浴)。まわりは建物と木々に覆われています。
湯は超絶熱くて、1分以上入ってると火傷をするか、のぼせるか、その両方の状態になります。
温泉客は<負の感情>が暴走中。
男女ともに凶暴化して風呂桶を投げつけたり、湧き出る熱湯をかけたりしてきます。
▼敵
ゴリラ並みに巨大化した「分離でろろボスザル」が、がまん大会を挑んできます。勝ちましょう。
何気なく頭に載せてる手ぬぐいは、どういうわけか冷たい状態になっています(←PL情報)。
湯には手下ザルが潜んでいて、湯の中から攻撃してきます。手下ザルは倒さなくてもいいですが邪魔になります。
▼NPC
・フジコ先生(トラ猫)
(負の感情:美について悩みがあるようです。私は美しいのよ、と叫びながら鋭い蹴りを入れてきます)
・雨宮 草太郎(白黒のブチ猫)
(負の感情:話を聞いてもらえないことを気にしています。相手に近づいて、延々と聞かせてきます)
【C】星ヶ丘のカフェレストラン / 犬
▼舞台
お洒落なオープンカフェ&レストラン。
店内奥には調理場があります。あちこちにとりもちシートが置かれています。
コックさんの<負の感情>が暴走中。
ネズミを捕まえてくれ~と懇願してきます。捕まえてあげないと、とりもちシートを投げてきます。
▼敵
凶暴なドーベルマンが3匹、「黒い3連分離でろろ」として襲ってきます。倒しましょう。
攻撃は噛むだけですが、統率がとれていて厄介です。どんどん強く速く凶暴化していきます。
身を隠していても鋭い嗅覚でバレそうです。
▼NPC
・ウォルター・ブラックウッド(やや毛の長い白い猫)
(負の感情:警察官になりたかったと凹んでます。いろんな猫を逮捕しようとしてきます)
・牛瀬 巧(キジトラの猫)※事情を把握し、皆とともに戦います。
(負の感情:面倒な事態に巻き込まれたことに苛立っています。近づく猫、全てに猫パンチを繰り出します)
【D】旧市街の魚市場 / アライグマ
▼舞台
船や魚市場、その裏の空き地がメインとなります。
ここは不思議なことに、二足歩行の「ねこ」も混ざっているようです(PLさんが選択可能)。
市場のおっちゃんの<負の感情>が暴走中。
もっと魚食べて~とお魚をどんどん配ってきます。美味しく食べればいいだけで、怖くはありません。
そのため、ここはさながら猫たちの楽しい楽しい「お魚もぐもぐパーティー」です。
▼敵
猫の天敵であるアライグマの「分離でろろファミリー」がいます。かわいいです。
敵ではありますが、魚を次々と洗ってもりもり食べて貰うのが、彼らなりの「攻撃」のようです。
そこで用意された魚を全て食べましょう。食べ切るだけで、倒したことになります。
▼NPC
・野々 ののこ(アホ毛がぴょんと生えた、二足歩行の三毛猫。状況は知らないようです)
(負の感情:なし) ※【D】を選択したPCさんは負の感情がなくてもOKです。
・吉田 熊吉(ふとっちょ猫。おなかいっぱいで食べられないよ~と言いながら食べ続けてます)
(負の感情:娘との時間を作れないことを気にしています。娘の猫につきまとって嫌がられています)
・野々 ととお(うっすら黄色い猫。相変わらずののこに夢中です)
(負の感情:娘に父と認められないことを気にしています。娘の猫につきまとって嫌がられています)
【E】星幽塔(第一階層、カラス座の森)/ 頭がカラスの獣人
▼舞台
第一階層。町から離れたところに知る人ぞ知る『カラス座の森』があります。
時折お芝居が行われる野外ステージがあり、今は劇団員が練習していたようです。
その劇団員のほしびとは<負の感情>で暴走中。
俺は素晴らしい劇作家なんだー、最高の女優なのよーなどと叫び、万年筆や台本を投げてきます。
▼敵
頭がカラスの「分離でろろ獣人」がいるようですが、姿が見えません。
人や木々の影・地面と同化して四次元的に隠れることができるようです。倒しましょう。
影や地面から強力無比な槍を出現させて攻撃してきます。
▼NPC
・フォルカ・ヴィクスン(赤茶の猫)
(負の感情:自慢の尻尾が無くなって怒っています。他の猫を見ると引っ掻き攻撃で八つ当たりをします)
・フローレンス・アイメルト(黒猫)
(負の感情:虐げられた過去を思い出しています。魔法が使えて、小さなゴーレムに打撃攻撃をさせます)
【F】霊界 / ヘビの妖怪と幽霊
▼舞台
霊界の黄橡(きつるばみ)駅周辺。
砂丘の真ん中にポツンとある洋風の駅です。
あやかしの駅員が<負の感情>で暴走中。
猫の姿をした迷惑な「撮り鉄あやかし」がいたらしく、カメラを隠し持ってないか執拗に迫ります。
▼敵
下半身が蛇の妖怪「分離でろろラミア」と体長が自由に変化する「分離でろろ蛇霊」のコンビがいます。
ラミアは噛み付きや引っ掻き、蛇の胴体部分で締め上げてきます。上半身は裸の女性です。いや~ん。
蛇霊は消えたり現れたりしながら、体にまとわりついて邪魔をしてきます。体につくと実体化します。
▼NPC
・餅々 きなこ(足がにょろにょろした白猫?)
(負の感情:子供扱いに怒っています。大好きなきなこもちを投げたあと、我に返って自分で食べています)
・逢見 いと(こげ茶の老猫)
(負の感情:家賃の取りっぱぐれが心配です。自慢の毒キノコ鍋(?)を食べさせてきます)
【G】その他 / 黒白滴や黒猫サニー ※難易度高し
▼舞台
・A~Fの中のどこか。原則として1ヶ所。
・A~F以外のどこか。※採用のハードルが高くなります。
▼敵
黒白滴を探し出そう。そして、なんとかしてやめさせよう。
どこをどうやって探すのか、きちんとアクションに書いてください。
そのアクションがうまくいけば、滴を見つけることができます。
滴を見つけられた時にどのように行動するのかも、簡潔に書いておくことをオススメします。
敵ではないですが黒猫のサニーを探すこともできます。
この場合も滴と同様で、見つけられるかどうかはアクション次第です。
うまく見つけられた時にどのように行動するのか、方向性だけでも書いてあるとアドリブで動けます。
滴も黒猫も(アクションにあれば)探す行動はリアクションとして描写されます。
その結果、見つけられなかった場合は、見つけられた時に備えたアクションは空振りに終わります。
▼NPC
・黒白 滴は分離でろろを投げています。寝子島だけでなく、星幽塔も霊界もどんどん攻撃しています。
(負の感情:こちらの連動ゴールドシナリオをチェック!)
・サニーは滴の飼い猫でした。最愛の猫(黒猫)で、サニーも滴のことが大好きです。
(負の感情:愛に飢えています。誰かに愛して欲しいと思っています。
撫でて、抱き締めて、と悲しい目で訴えます。ですが、寝子島が異常事態にあるので逃げ出すことも)
・テオはいろいろなところに顔を出します。
どろでろろの影響か神魂の影響か、あまり自分の力を発揮できない模様。皆さんのサポート中心です。
(負の感情:もれいびどもに冷たくなり、尻を蹴飛ばしてまわります。「ほら、戦え!」)
・青黒い蝶は【A~G】の区分に限らず、どこにでもいます。
特別な攻撃手段を持っていないようです。
攻撃を受けた際に弱体化して逃げる点も他の敵と同じになります。
ただ一点、高いところを飛んでいると少し手こずるかもしれません。
その他、ご注意などなど
ホワイトシナリオはアクションの文字数が300文字と少なく、
参加者多数の場合はリアクションの描写量も程々のものとなりますので、
なるべく行動や狙いをシンプルに、できるだけ1つに絞って投稿してください。
あまり難しいことを考えたくない、何も知らないままで遊びたい、というPCさんには、
【D】の魚市場で、猫または二足歩行の「ねこ」として、お魚もぐもぐパーティーがオススメです。
NPCは、原則として「上記のNPC」のみが登場します。
自由に絡むアクションを投稿してください。
(状況によってはその他のNPCが登場することもあります。指定はできません)
Xキャラ(Xイラストのキャラ)も登場可能です。
PCとXキャラの2人あわせて「1人分」の描写なので、無関係の行動などはお控えください。
※Xキャラだけで1人分の描写とすることも可能です。
その場合は、PCさん自身は描写がなく、Xキャラだけが描写されます。
Xキャラのみの描写をご希望である旨を、アクションにわかるようにご記入ください。
※Xキャラをご希望の場合は、口調などのキャラ設定をアクションに記載してください。
Xキャラ図鑑に書き込まれている内容は、そのURLだけ書いていただければ大丈夫です。
それでは盛りに盛ったホワシナ最終章をお楽しみください。