狂気の笑顔が悪意をばらまく｜リアクション

狂気の笑顔が悪意をばらまく

　鮮血のように赤い毛の猫となったヴィーゼ・ベルンスタインは酷く興奮していた。金色の目は青黒いラミアの動きを捉えて離さない。
「危ない……危ないわ！」
　見かねてヴィーゼは飛び出した。
　ラミアは周囲にいた猫達に襲い掛かる。激しい動きに合わせて長い髪が激しく揺れた。隠れていた胸が何度も見えそうになる。
「危ないのよ！」
　ヴィーゼは勢いを活かして跳んだ。自身の血を前脚に纏わせてリーチの長い猫パンチを放つ。露わになりそうな胸を巧みに隠した。と同時に胸への打撃となり、衝撃でラミアはよろけた。
「危なかったわ」
　安堵の声を余所に猫達は突然の味方に勢い付いた。体制を崩していたラミアに引っ掻き攻撃を試みる。
　その激しさに比例して、胸が揺さぶられる。自ら髪を払い除けようとする行為にヴィーゼは目を剥いた。
「だから、どうしてそんな格好で暴れるのよ！　胸が見えるわ！　もっと女の子の自覚を持ちなさいよ！」
　怒鳴りながら背中に血の羽を生やし、ラミアに向かって飛んだ。背中に回り込むと瞬時に抱き着いた。前脚を限界まで伸ばして胸の先端を隠す。腕ごとなので振り解こうとして懸命に上体を揺さぶる。
「いい加減にしてよね！」
　両前脚を自らの血で伸ばして接合。血の輪の状態となり、ラミアの両腕を封じた。
　猫達は歓喜の声を上げた。
「今がチャンスにゃ！」
「噛み付き攻撃にゃ！」
「あれは何なのにゃ！？」
　異形の存在となった四夜五栖手蹴がラミアに迫る。
　全身はタール色。猫のような頭部は十二を数えた。触手は無数に生え、獲物を生け捕りにするような動きを見せる。
　ヴィーゼは驚きを隠せない。
「なんなのよ、あれは！」
「にゃー」
　手蹴は鳴いて、再度、猫を主張した。ヴィーゼまで、ないわ！　の一言で顔を左右に振って全力で否定した。