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- 00月00日生 00歳
- AAA000000
寝子暦1371年のハッピー・ハッピー・ハロウィン☆デイズ！
ゴーストになったわけではない。
ないのだが、ハロウィン☆デイズの寝子島をあてもなくさまよう自分に龍目 豪はゴーストの姿をかさねてしまう。特に予定も同行者も皆無、ただあてもなくさまよっているのだ。
やること、ないんだよな。
いささか寂しい。暖かい夜なのに豪は肌に北風を感じていた。
週末だがマタ大探検サークル（通称マタ探）の活動はできなかった。
数日前「ハロウィンは探検に行こうぜ！ 仮装して九夜山頂から降りて、そのままパレードに飛び入りするとかさあ！」と威勢よく豪はサークルメンバーに呼びかけたものの、みな気まずそうに視線を取り交わすばかりで、肯定の返事はまったくあがらなかったのだ。笛吹けど踊らず、そろって用事があるらしい。それもたぶんデートだ。はっきりそう口にしたメンバーはなかったが、豪もなんとなく理解していた。
海原先輩までデートなのかよ。
裏切られたとまでは言わないが、豪はいささか愕然とした。
海原先輩というのはサークルメンバー海原茂のことである。『あの』海原茂である。愛読書が『おちこぼれ姫シリーズ』なのは公然の秘密で、むっつりスケベ略して『むっちー』などと影で呼ばれる海原茂である。デートなどと浮ついたイベントに一番縁遠そうな男なのに、なんとまっさきに視線をそらせたのは彼だったのだ。
マジなのか海原先輩！？ どうなってんだ！？
だったら自分も浮つけばいい、と言いたいところだが豪にその気はなかった。
実際、悪友に仮面コンへの参加を誘われてはいたのだ。大いに迷った。迷ったが自分には想う人がいるので断った。いつかのクリスマス、マッチメイキング・パーティーでの彼女とのやりとりは、豪にとっては大切な思い出だ。
なかなか会えないとはいえ、裏切るわけにはいかないぜ……。
だから予定はなしだ。仮面コンもパレードもやめておこう。でも部屋にこもって退屈するのは勘弁。というわけで豪はひとりスタンプラリーを楽しむことにしたのである。素の状態でハロウィンに乗り込むのは裸でいるようにも思えたので、海賊の仮装に身を包み、アイラインまできっちり引いて外に出た。
よっしゃ、それならそれで盛り上がろうじゃないか！
七つの海を股にかけるとまでは言わずとも、この広い寝子島の端から端まで、スタンプを集めて回るのもまた一興ではないか。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ハロウィン☆デイズ開催となれば、メイド喫茶『ねこのて』はもちろん模様替えをする。
ハロウィン仕様だ。キュートな感覚は維持しつつも、ホラーなエッセンスをまぶすのだ。暗幕カーテンで店内を暗くして、墓場や棺桶のオブジェも設置する。天井からさがるのはコウモリのぬいぐるみだ。光源は間接照明、紫や赤のフィルターもかけて雰囲気は抜群、一歩入ったその瞬間から、気分はもう恐怖の異世界である。
もちろん店員たちもコンセプトにしたがっている。血糊をつけてみたり悪魔の角や尻尾をつけくわえてみたり。
桧垣 万里も例外ではない。
この恰好だと、いつもの“おかえりなさいませ”の挨拶も、意味深な感じがしますね。
艶冶に笑みを浮かべてみる。
仮装テーマは『冥土のメイド』、要するにゾンビだ。チャームポイントは顔の継ぎ目である。カラーコンタクトで左右の目の色を変えているところも芸が細かい。このメイク、仕上げるまでなかなか時間が必要なのだが、そのぶん完成度は高かった。
窓枠からマスカット色の瞳が万里を見ていた。『店長』こと猫の橘が香箱座りしているのだ。橘は天鵞絨（ビロード）のように黒い毛並みをしている。このため暗い店内では、まるで目だけ浮いているようだった。
「どうですか？ 橘さん」
万里が呼びかけても猫はいいとも悪いとも言わない。それどころかふいとそっぽを向いた。
気に入らなかったかな。
思いながらも万里は橘の視線の先に目をやる。
直後ドアがカランと開いた。
あ、お客様。
……もしかして、気づいていたのか。橘さん、さすがだわ。
舌を巻きつつ万里は客を出迎える。
「おかえりなさいませ。素敵な仮装ですね」
訪れたカップルらしきふたりは、ご存じドラキュラ伯爵とオープンショルダードレスの貴婦人というとりあわせだった。貴婦人のほうは顔が青白い。すでに吸血鬼の虜（とりこ）ということだろうか。伯爵は男装の麗人、逆に貴婦人は美しき女形というところも面白かった。ドラキュラは細面なので来店時にすぐ女性とわかったが、貴婦人が男性なのは、間近で見るまで気がつかなかった。
「ありがとう。あなたもね」
伯爵が言った。なんとなく見覚えのある顔立ちな気もしたが、仮装が巧みなためかわからない。
「今宵は人間界を見物ですか」
ドラキュラの設定に合わせて言ってみると、ウフフと意味深に伯爵は笑ったのである。
「ええ。それと彼、もとい、彼女の美しい姿を世にお披露目しようと思いましてね」
貴婦人はじろりと何か言いたげに伯爵を見たが、口をきいてしまうと男声なのが露呈して嫌なのか口をつぐんでいる。少なくともハッピーな様子ではないようだ。
ないのだが、ハロウィン☆デイズの寝子島をあてもなくさまよう自分に龍目 豪はゴーストの姿をかさねてしまう。特に予定も同行者も皆無、ただあてもなくさまよっているのだ。
やること、ないんだよな。
いささか寂しい。暖かい夜なのに豪は肌に北風を感じていた。
週末だがマタ大探検サークル（通称マタ探）の活動はできなかった。
数日前「ハロウィンは探検に行こうぜ！ 仮装して九夜山頂から降りて、そのままパレードに飛び入りするとかさあ！」と威勢よく豪はサークルメンバーに呼びかけたものの、みな気まずそうに視線を取り交わすばかりで、肯定の返事はまったくあがらなかったのだ。笛吹けど踊らず、そろって用事があるらしい。それもたぶんデートだ。はっきりそう口にしたメンバーはなかったが、豪もなんとなく理解していた。
海原先輩までデートなのかよ。
裏切られたとまでは言わないが、豪はいささか愕然とした。
海原先輩というのはサークルメンバー海原茂のことである。『あの』海原茂である。愛読書が『おちこぼれ姫シリーズ』なのは公然の秘密で、むっつりスケベ略して『むっちー』などと影で呼ばれる海原茂である。デートなどと浮ついたイベントに一番縁遠そうな男なのに、なんとまっさきに視線をそらせたのは彼だったのだ。
マジなのか海原先輩！？ どうなってんだ！？
だったら自分も浮つけばいい、と言いたいところだが豪にその気はなかった。
実際、悪友に仮面コンへの参加を誘われてはいたのだ。大いに迷った。迷ったが自分には想う人がいるので断った。いつかのクリスマス、マッチメイキング・パーティーでの彼女とのやりとりは、豪にとっては大切な思い出だ。
なかなか会えないとはいえ、裏切るわけにはいかないぜ……。
だから予定はなしだ。仮面コンもパレードもやめておこう。でも部屋にこもって退屈するのは勘弁。というわけで豪はひとりスタンプラリーを楽しむことにしたのである。素の状態でハロウィンに乗り込むのは裸でいるようにも思えたので、海賊の仮装に身を包み、アイラインまできっちり引いて外に出た。
よっしゃ、それならそれで盛り上がろうじゃないか！
七つの海を股にかけるとまでは言わずとも、この広い寝子島の端から端まで、スタンプを集めて回るのもまた一興ではないか。
ハロウィン☆デイズ開催となれば、メイド喫茶『ねこのて』はもちろん模様替えをする。
ハロウィン仕様だ。キュートな感覚は維持しつつも、ホラーなエッセンスをまぶすのだ。暗幕カーテンで店内を暗くして、墓場や棺桶のオブジェも設置する。天井からさがるのはコウモリのぬいぐるみだ。光源は間接照明、紫や赤のフィルターもかけて雰囲気は抜群、一歩入ったその瞬間から、気分はもう恐怖の異世界である。
もちろん店員たちもコンセプトにしたがっている。血糊をつけてみたり悪魔の角や尻尾をつけくわえてみたり。
桧垣 万里も例外ではない。
この恰好だと、いつもの“おかえりなさいませ”の挨拶も、意味深な感じがしますね。
艶冶に笑みを浮かべてみる。
仮装テーマは『冥土のメイド』、要するにゾンビだ。チャームポイントは顔の継ぎ目である。カラーコンタクトで左右の目の色を変えているところも芸が細かい。このメイク、仕上げるまでなかなか時間が必要なのだが、そのぶん完成度は高かった。
窓枠からマスカット色の瞳が万里を見ていた。『店長』こと猫の橘が香箱座りしているのだ。橘は天鵞絨（ビロード）のように黒い毛並みをしている。このため暗い店内では、まるで目だけ浮いているようだった。
「どうですか？ 橘さん」
万里が呼びかけても猫はいいとも悪いとも言わない。それどころかふいとそっぽを向いた。
気に入らなかったかな。
思いながらも万里は橘の視線の先に目をやる。
直後ドアがカランと開いた。
あ、お客様。
……もしかして、気づいていたのか。橘さん、さすがだわ。
舌を巻きつつ万里は客を出迎える。
「おかえりなさいませ。素敵な仮装ですね」
訪れたカップルらしきふたりは、ご存じドラキュラ伯爵とオープンショルダードレスの貴婦人というとりあわせだった。貴婦人のほうは顔が青白い。すでに吸血鬼の虜（とりこ）ということだろうか。伯爵は男装の麗人、逆に貴婦人は美しき女形というところも面白かった。ドラキュラは細面なので来店時にすぐ女性とわかったが、貴婦人が男性なのは、間近で見るまで気がつかなかった。
「ありがとう。あなたもね」
伯爵が言った。なんとなく見覚えのある顔立ちな気もしたが、仮装が巧みなためかわからない。
「今宵は人間界を見物ですか」
ドラキュラの設定に合わせて言ってみると、ウフフと意味深に伯爵は笑ったのである。
「ええ。それと彼、もとい、彼女の美しい姿を世にお披露目しようと思いましてね」
貴婦人はじろりと何か言いたげに伯爵を見たが、口をきいてしまうと男声なのが露呈して嫌なのか口をつぐんでいる。少なくともハッピーな様子ではないようだ。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年01月15日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年01月22日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年01月22日 11時00分
