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九月の姫君(プリンセス)たち
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まどろみの気だるさは同じだとしても、伝わる熱の高さはやはり異なる。獲物に忍び寄る黒豹のごとく音を立てないが、季節が秋にうつろいゆく足音を
朝鳥 さゆる
は感じていた。
まとわりつくような暑気はもうない。
あの夜
から幾日かが過ぎたようだ。
とはいえ時間感覚が狂っているせいで、正確に何日過ぎたのかはわからない。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)のせいらしいと理解している。けれども医者にかかる気も、カウンセラーに頼る気もさゆるにはなかった。ただ淡々と時間が、指のあいだを滴(したた)り落ちていくのを眺めるだけだった。
午前十時半ごろだろうか。かたわらを見ればじゅん――
姫木 じゅん
(源氏名はまみ子)が眠っている。昨夜は体を交えることもなく、猫の姉妹のように抱き合って眠った。起きる気配もなさそうなので、そっと身を滑らせてベッドから出た。はなれぎわにじゅんのまぶたが動いたから少し待ったが、それ以上の変化はなかった。
けっして広くはないが清潔なバスルームに入ってシャワーを浴びた。
今日は何をしようか。
髪を洗いながら、さゆるはぼんやりと考える。
今日は平日、といっても登校する気はない。
じゅんは数時間後に出勤するはずだから――。
……。
昨日までの自分を洗い落とし、洗濯したてのロングTワンピに袖を通した。サイドスリットの入ったダークブルー、飾り気のないデザインだが、肌触りもさらりと心地いい。裸足でフローリングの床を歩いて、なんとなく水場に立った。ベッドに背を向けるかたちのキッチンだ。コンロはひとつきり、シンクも小さい。片付いており汚れも見えない。これはじゅんがマメに掃除しているおかげでもあるが、そもそもはまともに使ったことがないからである。
彼女と住むようになってから判ったことがある。食生活はほぼデリバリーかテイクアウトなのだ。調理という言葉は思い浮かんだことすらないらしい。
この点は自分も人のことは言えない、さゆるは思った。
ただ、自分は多少なりとも料理は作れる。じゅんは多分作れないだろう。
ヤカンや炊飯器こそたまに使うことがあるとはいえ、鍋やフライパンは新品同様だ。
己の身に起こった変化にさゆるは驚いている。さっき、シャワーを浴びていたときの考えだ。あらためて回想する。
今日は何をしようか。
あたしが、そんな気持ちになるなんて。
抜け殻のような半生だった。両親を亡くし、片篠藍人を見失ってからは特に。待つ者のいない自宅から遠ざかり、毎朝のように知らない男の部屋や安ホテルで目覚める。日めくりカレンダーのめくれる音も聞こえず、砂時計の粒も止まって見える。心臓こそ動いてはいるものの、二本足で夜ごと街をさまようだけの死体、それが自分だった。
そんなあたしが。
何をしようか、未来のことを考えるようになるなんて。
たとえ指先数センチの先にあるものだとしても、先のことを想うなんて。
誰かを喜ばせようとしているなんて。
じゅん、あなたは――。
さゆるは寝床を振り返った。静かに上下するシーツを眺める。
あなたは、あたしを変えつつある。
料理をしようとさゆるは決めた。
まず計量カップを探した。うっすら埃のかかったカップを水洗いしたのち、長く放置してあった米袋をひっぱりだした。魚沼産だの北熊本産だのといったブランド米ではない。安っぽい絵のついた複数産地ブレンド品だ。スーパーマーケットをいとなむ客が置いていったものだという。袋を開けかがんで一合半分をすくい取ろうとする。ところが、濡れた手とカップに生米がくっついてしまいなかなか上手に測れない。
先日さゆるは久々に登校し、なし崩し的に調理実習に参加した。あのときは調理環境が整っていたということもありこんな不手際はなかった。実習と実戦は必ずしも同一ならずという、軍記物に出てきそうな思いに駆られる。
出だしからつまずきそうね。
投げ出してしまおうかと一瞬思った。
けれどさゆるは、家庭科教師
白沢 絢子
にかけられた言葉を思い出す。
「また朝鳥さんの美味しい料理が食べたいわね」
いつだって絢子はさゆるを否定しない。他の教師や生徒の多くが、さゆるの発する見えない氷の棘を感じてか物理的にも心理的にも距離を取るのに対し、絢子は自分から歩み寄ってくれる。偏見も打算もぬきで接してくれる。
――もう少し、つづけてみようか。
なんとか一合半を取ることができた。ザルとボウルを用意して米をとぐ。
とぎあがった米を釜に入れ、分量通りの水を加えてスイッチを押した。
……?
だがスイッチが入らない。何度か試みたのち調べて、コンセントの線がほころびていることがわかった。おそらく断線しているのだろう。普段から使っていればすぐ気づいたはずだが、そもそも米を炊くこと自体久々であるとさゆるは思い出した。
それでも乗りかかった船である。
鍋でも、ご飯って炊けるはず。
スマホで調べ、台所を探って鉄製の鍋を取りだした。この鍋もまた、ほとんど新品といっていいほど使った形跡がない。
計量カップで水量を調節し、中火にかける。
ここでようやく、『といだ後の米に水をしっかり(
三十分以上
)吸わせておきましょう』という記述にさゆるは気づいた。
じゅんが好きなタイプのアニメなら、ドジっ子なんだからぁ(※語尾にハートマーク)という展開になるあたりかもしれないが、自分の場合は笑えない。いっそのことすべて捨ててやり直すことも考えたけれど、火にかけたばかりだし、まだ取り返しがつかない段階ではないと考え直した。浸水させている時間のあいだに、他に必要な食材をスーパーへ買いに行こう。
手早く購入を済ませ戻ってきたが、まだじゅんは寝ているようだ。できるだけ音を立てないよう、スーパーのビニール袋から食材を取りだして冷蔵庫に詰めた。それにしてもいつから、スーパーのレジ袋は有料になったのだろう。
あらためて米を炊く鍋に火を入れた。沸騰したので中火に落とし、冷蔵庫のキッチンタイマーで計って二分間キープする。
タイマーの電子音より先に火を弱め三分待つ。
さらに一番弱い火力にして五分程度……と。
緊張のひとときが終わるとフタを開けて中身をチェックした。水分が残っている様子はない。すぐフタを戻しコンロから外す。あとは蒸らし時間だ。
目の離せない状況だが同時進行で他の行程も進めていた。鮭をコンロで焼き卵も割って溶く。レンジで湯を沸かして味噌も用意した。時間の都合で味噌は出汁入りだ。豆腐パックを開けて水を捨て、手のひらに乗せた絹ごし豆腐を、等分になるよう包丁で切っていく。
コンロはフライパンと交代だ。溶き卵にしょうゆ少々と砂糖を混ぜて玉子焼きをつくる。専用の卵焼きフライパンではないので少々不格好だがそれでもまとまった。焼き上げた鮭は丁寧に骨をとって箸で砕く。
やはりタイマーが鳴る二秒前にSTOPキーを押すことができた。さゆるは息を詰めた。ふたたび緊張の瞬間を迎えている。だが幸い、鍋の白米はふわっと炊き上がっていた。いい香りだ。粒が立っていて嬉しくなる。しゃもじで混ぜて別皿に取り、冷ます。
コンロがひとつしかないので座につく主演俳優はころころ変わる。さっきまで玉子焼きを作っていたフライパンを流しに移し、ミルクパンと呼ばれる小鍋をコンロに乗せる。あらかじめ作っておいた湯をミルクパンに移した。まもなく表面からぶくぶく水泡が立ちはじめた。洗って刻んだ小松菜を混ぜ、サイコロ切りの豆腐も加えて火を入れる。おたまにすくった味噌を溶き入れる。箸先をせわしなく回転させるのがこつだ。さゆるにそんな経験はないはずなのに、ノスタルジーを刺激するような芳(かおり)だと思った。
ようやく背後でじゅんが目覚める気配がした。血圧が低いのかじゅんの寝起きは良くない。とたとたという足音がたち、まもなくバスルームを開ける音と水音がつづいた。
「おはよう」
体を洗い終わったじゅんが、頭にタオルを巻いてキッチンに出てきた。
「あと少しでできるから、待ってて」
さゆるが振り返ると、じゅんは無言だが「うそ……」というような顔をしていた。
仕上げはおにぎりの制作だ。中身はほぐし鮭と刻み青ネギ、さらに梅干しと鰹節を混ぜたもの、作る時間を考慮して、後者は最初から瓶詰めで売っていたものである。じゅんが着替えに行っているあいだに、家庭科の補習を思い出しつつ、ひとつひとつ握力と想いをこめて握った。
部屋着のじゅんが戻ってきたときにはすべて整っていた。おにぎりと味噌汁、玉子焼き。シンプルだが色鮮やかなテーブルとなった。朝食と言いたいところだが時間的には昼食だ。ニューヨーカーならブランチと呼ぶかもしれない。
小さな食卓に向かいあって座った。本当に小さいので足を伸ばすまでもなく、たがいの膝が触れそうになる距離だ。
「口に合うかどうかはわからないけど……」
やや伏し目がちにさゆるは言った。
「……うん、ありがと」
やはり伏し目がちに、じゅんは答えた。
照れくさいという気持ちもあって、「何か観ない?」とさゆるは提案した。
じゅんは毎週大量のアニメ作品を録りためているので観るものには困らない。そうねと短く言って、じゅんは深夜アニメを選んだ。夜中にやっているとは思えないほどほのぼのとした日常系作品である。
あっ……。
さゆるは声が出そうになった。
作中でちょうど、主人公がさゆると同じことをしているシーンになったのだ。起きてスーパーに買い出しに行き、ご飯を炊いて味噌汁と玉子焼きを作る。炊飯器ではなく鍋で炊いているところまで偶然ながら一致していた。ただ劇中の彼女はおにぎりを作っておらず、その分おかずがもう少しあったが。
じゅんは無言でアニメを観ている。
食は進んでいるようだが感想らしい感想は言わない。テイクアウトの紙箱入り中華を食べているときと大差なく、黙々と箸と口を動かしているだけだ。
そもそもじゅんは食べるものにあまり執着がないらしい。二日三日同じコンビニ弁当がつづいても平気だし、お菓子を持ち帰ることもあるがそれはほぼ例外なく店の客か同僚がくれたもので、大抵「あげる」とさゆるに言って手をつけない。先日の沖縄旅行から戻ったときも「こういうのが人気らしいから」と豪華な黒糖スイーツをテーブルに置いたが自分から開けて食べようとはしなかった。
さゆるはちらちらとじゅんの様子をうかがったが、彼女は全部きれいに平らげたものの、最後まで感想らしい感想は口にしなかった。おいしいともまずいとも、一言も。せいぜい「あたしが洗うわ」とさゆるの皿も下げて流しに立った程度である。
そのまま継続して、録りためたアニメをあと数本観た。
「……じゃあ行くわ」
夕方前、出勤の支度を終えてじゅんは部屋を出た。
「うん」
見送ろうと立ちかけたさゆるに、「いいから」とだけ告げてじゅんは玄関ドアをあける。ゴシックロリータな黒の装い。髪はツインテールに編んでいる。
最後まで、じゅんが食事について語ることはなかった。
反応がないところを見ると、ダメだったのかな。
さゆるはため息をついた。
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桂木京介
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ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年09月21日
参加申し込みの期限
2022年09月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年09月28日 11時00分
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