【ハロウィン】可笑しなお菓子な甘い島｜リアクション

【ハロウィン】可笑しなお菓子な甘い島

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砂糖漬けにされた花弁や、透き通ったダイヤモンドのような飴玉がロベルト・エメリヤノフを誘っていた。
可憐な花々はその姿を残したまま、甘い甘いお菓子になっている。煌びやかな宝石はその輝きを残したまま飴に。
その姿にロベルトはうっとりと見入っていた。

「綺麗な男の子たちに、こういったものを食べてほしいんだよね」

そう言って真っ赤なルビーの飴玉をひとつ、唇に近づける。
そっと唇で食むように、リップ音を立てながら舐めると、ほんのり苦いベリーの味がした。
ロベルトの背筋がぞくぞくと震える。悦びに近いその感覚に、ロベルトは唇をぺろりと舐めた。

「美少年が食べていそうなものを自分で食べて、感覚を共有するこの感じ……ちょっとやばい。興奮する」

ロベルトの感性が「美しい」と告げるお菓子を、順番に口にしていく。
宝石の形をした飴だったり、花の中からは甘い蜜が流れてくる。

「ん、甘い」

自身の手首を伝う蜜を綺麗に舐めとると、ふぅ、と息をついた。

「確かどこかにブランドチョコレートを扱っていたお店があったような気がする。せっかくだし覗きに行こうっと」

腰かけていたビスコッティのカウンターテーブルから飛び降り、ロベルトは次なる目的地へ。
せっかくお菓子食べ放題なのだ。普段あまり口にしないような高級なチョコレートを求め歩いて行く。

「ん？」

途中、不思議なものに目を止める。
視線の方向に居たのは蜂矢時生。時生は、その眼鏡の奥で柔らかな微笑みを浮かべたまま、塀の上から茂る木々へと手を伸ばしていた。
紅葉の葉を模ったそれは、バターたっぷりのパイ生地を重ねた焼き菓子のよう。時生はその一枚を優しく手折ると美味しそうに頬張った。
ただそれだけならばロベルトの興味を特別引くことはなかっただろう。
ロベルトの目を引いたのは、時生の足元に置かれた可愛らしい黄色のバケツ。その中には道すがら集めてきたと思わしきお菓子の数々が詰まっていた。
明らかにその辺で拾っただろうと思える石はロッククッキー。炭酸飲料の入っていたガラス瓶はステンドグラスのようにきらめく飴細工。
なぜそれを拾ってきたのか、自転車のサドルのようなものまで入っている。
押しそうにパイ生地の葉っぱを食べていた時生が、ロベルトの視線に気づき振り返る。
ロベルトは反射的に身構えた。

「あれ、おかしいな。おれの夢にひとがいる」

パイ生地を口の端に零したまま、時生が首を傾げる。

「ああ、もしかして、きみも本当はお菓子、なのかな？どんな味がする？」
「え、ちょっと……！」

バケツを置いたまま、時生がロベルトの頬へ手を伸ばした。
ロベルトは体をこわばらせたまま、その場から動けないでいる。
そっと頬を撫でるその手つきの優しさに、ロベルトのこわばりがほんの少しだけ緩んだ。

「いただきます」

ぺろり。

一瞬油断した隙だった。
ロベルトの頬に生温かい感触が落ちる。
時生が、ロベルトの頬を優しく舐めあげたのだ。
突然のことにロベルトも声を出せないまま、1歩2歩と後ずさる。

「……苦い。ビターチョコレートみたいな味がする」

時生はうんうん、と頷いて今度は自分の手の甲を舐めた。

「おれはね、はちみつのような、甘い味がするんだ。舐めてみる？」

首を傾げてロベルトの前に指を差し出す。
その間も、時生の表情は柔らかな笑顔だった。

「……ぼ、」
「ぼ？」

ロベルトの口から出た言葉を、時生が不思議そうに聞き返す。

「僕が好きなのは美少年！あなたはなんか……ちょっとちがう！惜しい！！」

それだけ言うと、ロベルトは弾けたように走り去っていった。
そんな後ろ姿を見送りながら時生は自分の指を舐める。それはハニーキャラメルのように柔らかな味がした。

「美味しいのに……」