【ハロウィン】可笑しなお菓子な甘い島｜リアクション

【ハロウィン】可笑しなお菓子な甘い島

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Candy LICORICでは飴玉崩しが行われていた。
店の外まで距離があるため、皆で協力してバケツリレーが行われていた。

「なんで私までこんなことに……」

能美子は手渡される飴を外へ放り投げながらぽそりと呟いた。
自撮りをしている瞬間をちかと海美に見られ、「なんや写真やったらちか撮ったるやんか」「わたしも！しゃしんとるー！」と散々ふたりにモデルにされ、なかなか体力を消費していた。
普段は機嫌が悪そうと敬遠されがちな能美子も小学生ふたりの素直な欲求にはかなわなかったようだ。

しばらくバケツリレーを続けるうちに、どうにか山が薄くなってきていた。
とはいえ、湊のきちんとした姿は見えないまま。
真央のがおーにも穴掘りの要領で飴の山を崩してもらっているが、なかなか細かい飴玉の山。上手くはいかないようだ。

「もう、すぐだね」

左足がアイスクリームをのせるコーンのように変わってきている凛が、壁伝いによろよろと飴の山に近づく。

「私も、そろそろ限界だから……っ！みんな、あとは任せるね！」

動くたびに少しずつコーンの面積が広がり、綺麗な黒髪はもう原型を留めていない。
やがて完全なバニラアイスに成り果てた凛がそのまま床に倒れこむ。
ほとんど溶けていたアイスクリームの部分が床に広がり、飴玉の隙間を縫って奥へと伝って行った。

「う、つめたい……？」

飴玉の下からくぐもった声が聞こえる。その声にいち早く反応した円がすかさず指を指す。

「ここ！このあたりから聞こえたよ！」

円も凛と同じくらいの速度でクレープ化が進んでいた。半身は既に美味しそうな苺と生クリームのクレープになりつつあった。
時間が残されていない。それはこの場にいる誰もが感じていた。
だから早く、早く。

「ここまできたら無理やりでも引きずりだしてやるわよ！」

一月が奥歯を噛みしめてポケットからペンを取り出す。そしてほんの少しだけ見えた湊の指先を見つめ、念じる。
ろっこん“妖精の気まぐれ”はペンを持った状態で位置交換を念じることでその対象と自身の居場所を入れ替えることができる。
ただし、対象を“見る”事が出来れば、というのが条件だが。

「……だめかぁ」

一月がため息をついてペンをしまう。
人は対象として選択できないようだ。

「う……ぷはぁ！」

悔しがる一月の前で、湊が自分で飴の山から立ち上がる。
自分の置かれた状況が把握てきていないのか、不安気に辺りを見回していた。
優しげな茶色の髪が、飴に塗れてべたべたのばさばさになってしまっていた。

「な、なに、どうなっているの」
「柚川さん、ですね」

円がよろよろと立ち上がる。ふらついた体を刀が支えた。

「ボクは、あなたに言いたいことがあってここに来ました。この状況、どうしてこうなったかわかっていますか？」

円の問いかけに湊は困ったような表情で首を横に振る。

「あなたのろっこんが暴走した結果だとボクは思う。ろっこんの力だって不安定で不自然で……なによりお商売の道具にしたら絶対、だめだと思う」

そこまで言って、円はクレープになりつつある体を見下ろした。

「これは夢。きっとあなたが見た夢の世界。ろっこんも同じ。淡い夢なんだ。……さすがにボク、現実の世界でクレープにはなりたくない、かな」

湊は何も言わない。