LUCK COMING ～いつもそばに猫がいた～｜リアクション

LUCK COMING ～いつもそばに猫がいた～

　人と猫の賑わうシーサイドエリア。老いも若きもboyもgirlも。そんな中でもひと際初々しいのが。

「色んなお店がたくさんあって、目移りしちゃうね。修君！」
　煌く日差しの下。キラッキラの笑顔の七夜あおい。その笑顔はただ１人に向けられている。
「そうだね、あおい。時間はいっぱいあるから、ゆっくり回ろう。全部付き合うから」
　花のようなあおいの笑顔を優しく受け止めるのは、八神修。
　２人ともとっても楽しそうだ。

　シーサイドエリアは景観も抜群な事もあり、休日には通りにはたくさんの出店が並ぶ。
　様々な種類の出店。天気は申し分なし。食べる事が大好きなあおいがこんな素敵な日を見逃すはずはなく。そこにちょうど修から連絡が来たので、せっかくだからと２人で食べ歩きに来たのだ。

　庶民的な楽しい出店が通りを賑やかにしている。その何十倍の値段のランチを普段から食べられる修だが、しみじみ思う事がある。
　―――あおいは俺にとって、魔法の調味料だ。
　こうして笑顔のあおいが隣にいるだけで、この手元にあるなんの変哲のないタピオカドリンクが、彼の心を不老不死にする甘露に早変わりしてしまうのである。
（ドキドキするおまけまでついてくるんだもんなぁ）
　タピオカドリンクを天界の飲み物にしてしまうなんて、あおいはどんな錬金術を使うのか。もはやしみじみとしながら修が太いストローでタピオカを吸い込むと、耳元で天女の声がした。
「おーい修くーん、聞いてる？」
「にゃっ？！」
　完全に不意を突かれた修が猫のように小さく飛び上がる。普段の冷静沈着さからは程遠くなってしまったその姿に、あおいはころころと笑った。
「わ、修君可愛い」
「……男には褒め言葉じゃない気がするけど……」
「ふふ、褒めてるよ？」
　珍しく赤らむ修に、あおいが茶目っ気たっぷりに笑う。そんなあおいの方がよっぽど可愛いのにと思いながら、修は少年のようにぷうと唇を尖らせた。

「でね、そのタピオカドリンク美味しいの？」
　なんかじっくりと飲んでたから、とあおいが修の手元を覗き込む。修はうんと頷いた。
「美味しいよ」
　君がいるからだけどね、と心で付け足す。ふーんとあおいが言うと、
「ちょっと頂戴♪」
　修のストローでこくこくとドリンクを飲んでしまった。
「本当だ美味しいね！」
　あおいが笑う。しかし固まったままの修に不思議そうな顔をした後、はっと顔を青ざめさせた。
「あ、ごめん！　飲みすぎちゃったよね？！　だってその、美味しかったから……」
　あおいはあたふたすると、パッと自分のクレープを修に差し出した。
「これ美味しいから１口あげる！　いや半分食べてもいいよ！」
「……いいの？」
「うんうん、お詫び！」
「……じゃ、遠慮なく♪」
　修はあおいの持っているクレープをその手からパクリ。もぐもぐとした後、にっこりと笑った。
「こんなおいしいクレープ初めてだよ」
「でっしょー？」

　修とあおい。楽しく、美味しく時間が過ぎる。……だって、君がいるから。