LUCK COMING ～いつもそばに猫がいた～｜リアクション

LUCK COMING ～いつもそばに猫がいた～

◆寝子温泉の足湯

　寝子島の一部で、『見つけたら幸せになれる猫』の噂が広まっていた。故に、興味を持った者達がそれとなく探しに出かけていく姿を、ちらほらと見かけるように。
　その過程で、彼らは、彼女らは気付いていく。

　――ほら、いつもそばに毛玉なともだちはいるよ。

　どこかで、誰かが呟いた。

＊＊　＊　＊　＊

　今日も寝子街の住人達がのんびりと足湯を楽しんでいるようだ。その中には、噂の『見つけたら幸せになれる猫』を探してやってきた者もちらほらと……。
　少し涼しくなってきたためだろうか？　猫もちらほらと姿を見せている。だが、猫は水を苦手としている子が多い。故に……。

「おや？　どこから迷い込んだかの？　かわいいのぉ」

「ルーシー、その子は水が苦手みたいよ！　早くこっちへ！」

「おや、迷い猫……かい？」

　足湯コーナーに、「みゃああああ！」と慌てた猫の声が響き渡る。
　ルーシー・R・マクミランがどこからともなくきた猫を抱え上げ、矢萩咲が猫を渡してもらおうと事情を説明する。それらを見ていた哀坂子夜が不思議そうにこの声を上げた。
　まぁ、周りは周りでにぎやかだし猫が一匹増えようが大丈夫だろう。よく見れば温泉の暖かさを求めているのか、猫たちも適度な距離をとって思い思いにまったりしているようだ。ほんわか、のんびりとした、とても素敵な光景が広がっている。
　そうこうしているうちに、ルーシーが猫を抱えなおそうとした途端、器用に彼女の頭の上へ登り、濡れた石畳に着地してプルプルと前足を振る。そして、身をぶるり震わせて別の場所へと走り去ってしまった。その姿をルーシーは少し寂しそうに見送る。
「仕方ない、だろう。……これでも食べて、落ち着くと良い」
　子夜は買ってきた温泉卵を差し出し、咲にも篭をみせて「どうだ？」と提案する。
「そうね……。ちょっとお腹もすいちゃったし……」
「美味しそうじゃな！」
　ルーシーも近くに腰掛け、さっそく口にする。程よい硬さに茹でられたゆで卵は塩をつけるだけでなかなか美味しく、思わず顔が綻ぶ。
　其々が何時かは己の道を行き、こうして仲良く戯れる時間が中々取れなくなってしまうかもしれない。そう思うとこの一瞬もまた愛しく思う。咲はふと、ルーシーと子夜の顔を見、小さく微笑む。不思議に思った二人に、何でもないとでも言うように首を降りながら
（こういう時間も、大事にしたいな）
　と咲が思っていると……？

このページにイラストを設定する