LUCK COMING ～いつもそばに猫がいた～｜リアクション

LUCK COMING ～いつもそばに猫がいた～

◆観覧車の見える風景

「いい天気だねぇ、花遊」
　キラキラとプリズムのような日差しが降り注ぐ青空の下。万条幸次は足元にいる愛猫花遊に話しかけた。
花遊はその大きな黄色の瞳でじっと幸次を見つめてから、
『まあ、ちょっと眠くなるけどな』
と言わんばかりにファ～と大きく欠伸をする。幸次はその愛猫ののんびりした姿にふふと笑うと、
「うん、ほんとに気持ちいいよねぇ！」
前髪を留めている赤いピンをキラリと光らせ、うーんと大きく伸びをした。

　幸次の休日の趣味の１つ。猫探し。
　今日はぷらぷら花遊と一緒に、シーサイドアウトレットの付近にまで来てみたのだが。
「人も猫もいっぱいだぁ！」
　気持ちのいい気候につられたのか、シーサイドエリアは楽し気な人で溢れている。そして一見気が付かないが、人と同じくらい溢れているのが、寝子島名物の猫達だ。遊びに来た人達の足元をすり抜けるように行きかう猫、出店の軒下でのんびり丸くなる猫、芝生の上でカラスに戦いを挑む猫。
「うーん、出掛けて来た甲斐がありますなぁ」
　猫ウオッチャーと化した幸次は、にこにこしながら額に手をかざし、あちこちの猫達を眺める。と、ピンと伸びていた幸次の首がカクンと揺れた。
「くふぉっ？！」
　衝撃が首に走ったのだ。しかし幸次は慌てない。なぜなら、これは彼にとってよくある事なので。
「花遊～～～、もうちょっとお手柔らかに頼むよ？」
　姿勢を立て直しながら、幸次がぼやく。その首元には澄まし顔の花遊がちゃっかりと乗っかっていた。
「お前ももう成猫なんだからさぁ、子猫の時とは違うんだよ？　まかり間違って俺の首が折れちゃったりなんかしたらどうするの？」
　背中の花遊を振り向きつつ、幸次が言う。しかし花遊はそんな幸次に見向きもせずに、高くなった景色からさらに身を伸ばして、優雅に周囲を見渡している。

　……俺はお前の展望台じゃないぞ。
　まあいいからいいから。おっ？！　見ろよ幸次、あそこの猫、超かわいいぞ。
　え？！　どこどこ？

　―――そんな会話が聞こえてきそうな、気の合う１人と１匹。可愛い雌猫を見つけてはしゃぐ花遊が、幸次の髪の毛をぐしゃぐしゃにするのもご愛敬だ。

　結局雌猫を追いかけて飛び出した花遊を幸次が追いかけて。花遊がニャーニャー雌猫に言い寄った挙句に振られてしまう一部始終を、幸次が写真に収めたりなんかして。
まあ兎に角目一杯猫ウオッチング（いや片方はウオッチングに留まらないが）を楽しんだ彼ら。どちらからともなく顔を合わせた。
「喉が渇きませんか花遊さん」
「ニャー」（異論なし！）
　お互いの意思を確認すると、１人と１匹は仲良く並び、動物同伴OKのカフェに向かって歩き出す。
　これが彼らのよくある休日。