今日のいい陽気の下へ、楽しくはしゃぐ子どもたちの声が響きます。
「そこそこ！　そこだよ～！」
「やった、うまいうまい♪」
「ああ～っ、おしい！」
　小さなボディでパワフルに、エネルギッシュに動き回るちびっこたちが挑むのは、その名も『カプギアつみき検定』！　愛光堂主催、ちょっとしたこども向けの検定制度……といっても半ばお遊びのようなものですけれど。ここまねき堂は、そのテスト会場のひとつとなっておりました。
　ルールはいたって簡単。カプセルギアを使ってつみきを積み上げ、お題となる形を規定時間内に完成させることができれば合格です。スピードとテクニックの両方を試される、シンプルにして高度な競技と言えましょう。
「ほっほっほ。みんな、なかなかやるじゃあないかね。ま、あたしにゃあまだまだかなわないけどねえ」
　とのたまうまねきバアがしょっぱなに披露してくれたデモンストレーションがあんまりスゴ技だったもので、子どもたちも大いに発奮されたようでして。負けるものか、と気合十分！　大盛り上がりなのでした。
　現在のところ、星ヶ丘からやってきた成金 金持（なりかね きんじ）くんがうなる財力をもって組み上げた愛機『ゴールデン・ナリキング』の記録が、頭ひとつ抜けているモヨウ。続く参加者は見事合格することができるでしょうか？　記録を塗りかえることができるのでしょうか！？
「さてさて、次の挑戦者はどの子だいね？　ええと。跳田 うさぎちゃん、古尾 桐子ちゃん、曖浜 瑠樹くん、鎧山 武士くん、柚瀬 玲音ちゃん、鯱原 泳蔵くん。さ、このおバアに見事なカプギアさばきを見せておくれよ」
　呼ばれた面々の中には、カプギアマスター仲間の桐子に瑠樹、玲音も含まれておりました。
「ふっふっふ。こりゃあ、うちらのウデの見せどころッスね～！」
「でも、難しそうだねぇ～。オレ、うまくできるかなぁ？」
「大丈夫っ。ボクたちならバッチリ、だよだよー！」
　期待と不安、どきどきわくわくが入り交じりつつ、各選手スタンバイ。
　と、
「ねえねえ。オレ、ちょっと気になったんだけどなぁ～」
「うん、どしたッスか？」
　瑠樹がきょとん、として指さしたのは、まねき堂前の地面。ちらばった色とりどり、形もさまざまなたくさんのつみき……ではなく、しれっとそこらに座り込んだりふにゃあとあくびなどしている、猫たちです。
　桐子もはたと首を傾けます。そりゃあ寝子島ですから、どこにだって猫はおりますけれど。
「にゃんこがつみきを崩しちゃったら、どうなるのかねぇ～？」
「崩れる前に、積んじゃえばいいんだよ！　だよだよ！」
　ちびっこたちの疑問をふきとばす、にっかり笑った玲音の明快な答えに、瑠樹と桐子はな、なるほど～？　と納得。まあ審判をつとめるおバアがなにも言わないところを見ると、そういうものなのでしょう。なんとアバウト。
「お前さんたち、準備はバッチグーかい？　それじゃあいくでよ～。レディーーー、ゴォーーーッ！！」
　まねきバアのいやに気合の入ったかけ声で、いざ競技開始！
「よっしゃあ、うちらも気合入れていくッスよ～、『トルーパー』！！」


　桐子の相棒、ミリタリーテイストな造形がシブいトルーパーは装甲に難アリ、な代わりに攻撃力とスピードに特化した速攻タイプ。手にしたマシンガンは今回お役に立ちませんけれど、つみきを運ぶスピードとパワーはかなりのものです。
　しゅばばばっと忙しない桐子の操作に応えて、トルーパーは丸いつみきの上に四角いつみきを積み上げる器用さも見せてくれました。
「こいつはここに積んで、こっちの四角いのはここッスね。このでっかいのは……げっ、こんな高いとこに積むッスか！」
　積み方のお題はお城のような形で、パーツ数は多くそこそこ複雑、でき上がりの大きさもカプセルギアにとってはけっこうな高さです。最後まで積み上げるには、それぞれの特技やパーツの特性を活かした工夫が必要になりそう。
　さて、ふむ。と桐子は考えて、
「そうだ！　この手があったッス♪」
　ぐおんと腕を振りかぶったトルーパー。つみき目がけて叩きつけたのは、虎の子のパイルバンカー！　ずどん！
　ふっとんだつみきは見事乗っかって、お城の屋根になりました。
「こりゃラクチンッス、どんどんいくッスよ～！」
　いっぽう玲音は愛機『サニィ』を操り、着実につみきを積み上げていきます。
「飛べるのは有利だと思うんだよー」
　サニィを象徴する特徴的な装備はやはり、背中のブースター。しゅごーっと飛び上がれば、どんな高さにだって積むことができました。人型ということもあって、器用さもバツグン！
　ただ、若干パワーに欠けるのがたまにキズといったところで、
「おっととと！？　カプギアには、つみきもけっこう重たいもんだね～」
　大きなつみきは、持ち上げるのもひと苦労。サニィもちょっぴり、ふらふらです。
　とはいえ一度持ち上げてしまえば、ブースターパックの推力がモノを言いました。しゅごごーっ！
「よーし、どんどん積み上げちゃうんだよだよ！」


　サニィは次々にひょいひょい、軽快に積み上げていきます。楽しくなってきて、玲音も思わず、にぱーっ☆
　桐子や玲音が着々とつみきのお城の完成に近づく中、ちょっぴり困っておりますのは、瑠樹です。
「う～ん。ごめんなぁ～、お昼寝の邪魔しちゃって」
　うな～。とろんと眠そうなおめめでひとつ声を上げた、綺麗な毛並みの白猫ちゃん。日当たりが良いからか、なんだか気にいってしまったのか、瑠樹が建設中のつみき城そばにぺたん、と座り込んでしまいました。
　白猫がちょっと激しく身動きしようものなら、お城は倒壊してしまいそう。それに散らばっているつみきを集めたり、お城の土台へ積み上げようとするたび、相棒の『ラズちゃん』を興味深げにじぃ～っと見つめてくるのです。もし飛びかかってきたりしたら、はかないお城はすぐにも分解の憂き目にあうことでしょう。
「ラズちゃん、そ～っと、そ～っとだよぉ～」
　そのため、瑠樹の作業は慎重です。そろ～り、そろ～り。
　にゃう～？
「ちょっと横、とおるなぁ～？　うるさかったら、ごめんよぉ～」


　ラズちゃんはスピード寄りのバランスタイプ。ぬいぐるみのようなふわふわボディのおかげで、足音ももふもふとやかましくないのは救いです。
「そ～っと。そ～っと……あっ！」
　ころん！　屋根に積むはずの丸い球がラズちゃんの手をはなれて、ころりんころころ。
「わ、わ、わ」
　ころころころ……こんな時に限ってさえぎるものもなく、球はどこまででも転がって行ってしまいそう……！
　と焦っていたら。ぽふん。
「止めてくれたの？　ありがとうなぁ～！」
　白猫ちゃんがしっぽで優しく球を受け止めてくれた……ばかりでなく、ラズちゃんのほうへころんと転がしてくれました。
　嬉しい味方の援護も手伝って、瑠樹も着実につみきを積み上げて行きます。ラズちゃんも楽しそうにぴょいん、ぴょん！
「あとちょっと、もう少しッスよ！　がんばるッス、トルーパー！」
「時間はまだあるんだよー、ラストスパート！　サニィ！」
「わぁ、猫ちゃん、お手伝いありがとうなぁ～。ラズちゃん、いっけぇ～！」
　みんなで励ましあいながらにがんばった結果、三人は見事、目標タイムを突破。検定合格となり、記録もまずまず。
　楽しく遊んで、大満足！　でありました。