レディ・ロゼッタの運命考察｜リアクション

レディ・ロゼッタの運命考察

　浅山小淋からの返信を受け取った黒依アリーセもまた、浮かない顔をしていた。その原因は小淋と同じところにある。
「やはり浮かぶ答えはひとつしかない……。芽森先輩の中に……セブンがいる、としか」
小淋以上にその確信を持たざるを得ない理由が彼女にはあった。アリーセは自分の目で、怪人セブンにまつわる事件を見てきた。『断罪』事件に至っては、ヘルメット姿のセブンと対峙している。決して大きくない体からあふれ出していたのは、殺意。
同じ気をアリーセは別な時、別な場所でも感じ取っていた。暖かな誕生会の会場。中心で微笑んでいたはずの芽森菜々緒が突如アリーセに向けたあの表情、あの言葉、……あの、殺意。あれは同じものだったと、アリーセは理解し、確信していた。同じ者から放たれた、同じ感情であると。
「どうして？　やっと親しくなれたはずなのに……」
だがあの時の殺意は、決して気のせいなどではなかった。幼い菜々緒が描いた絵を、「まるで別人が描いたようだ」と評した瞬間、菜々緒の表情は変化した。
（二人の殺意は似すぎている……）
こう考えてしまえばすべてがまとまる。『二人』ではない。アリーセが殺意を感じ取った相手は『同一人物』なのだ、と。
「アリーセ！　どうしたのだ？　そんな渋い顔、アリーセには似合わないのだ」
「小麗さん……」

沈むアリーセの心を、たった一つの言葉と笑顔で救ってしまう。持ち前の明るい雰囲気と人をなごませる魅力を持ったしぐさで、李小麗はアリーセの元に駆け寄り、ぴょんと椅子に飛び乗った。
「アリーセ、メールからして暗かった！　心配してきたのだ。相談って何なのか？」
大きな目でアリーセをのぞき込む。答えの出てこないアリーセに、屈託なく笑いかけた。
「私のメール、変だったかしら？」
「相談したいなんて書いてあったら、元気がないって思うのだ」
「そうね、そのとおりだわ。小麗さんもこの招待状を持っているのよね？」
アリーセは薄紫色の封筒を取り出す。差出人の名はレディ･ロゼッタ。ほんの少し前に、学校の一部の生徒――揃ってもれいびたちであったが――の間で話題になった占い師だ。アリーセは彼女に出会ったことはないが、うわさだけは聞いていた。
「うん。ほら」
小麗はアリーセのものとまったく同じ封筒を取り出す。中の文面も同じだ。
『怪人セブンを探してください』
「探すつもりでいるのだ？」
「ええ。私には心当たりがあるの」
そう答えるアリーセの瞳は翳っている。
「元気出して欲しいのだアリーセ。メールには女子会のことも書いてあったけど、もしかして全部がつながっていくのか？」
友の励ましに微笑むアリーセ。気遣ってくれる小麗の邪気ひとつないやさしさが染み渡った。
「ええ。女子会するって約束していたでしょ？　それに芽森先輩と……セブンを探しているロゼッタさんを招こうかと思っているの」
そう切り出したところで、小淋が現れた。
『お待たせしました』