レディ・ロゼッタの運命考察｜リアクション

レディ・ロゼッタの運命考察

「突然ごめんなさいね、浅山さん」
　黒依アリーセは心のうちにあるプランと疑念について語った。セブン事件をくぐりぬけて来た者同士の女子会を、新たなセブン事件の発端となりうる人物を加えて行おうということ。そして、セブンの正体ではないかと考えずにいられない人物のこと……。
「は～ん。そういうことか。見えて来たぜ」
アリーセと李小麗が振り向くと、一人の女性が立っていた。髪も肌も白く、目だけが血を透かす赤に染まっている。犬神花梨だ。花梨は手に持った携帯をぶらぶらと振って見せる。ディスプレイには志波武道とのメールのやり取りが映っていた。もう片方の手にくしゃくしゃに握りつぶされているのは、レディ･ロゼッタからの招待状、薄紫色の封筒だ。
「俺様もその案には賛成だ。セブンとロゼッタ、あのくっそいまいましいインチキ占い師が出会えば何かが起きる。間違いないぜ」
花梨は赤い瞳をぎらつかせながら席にどかりと座った。これから始まるかもしれない激突、血の滾るようなバトルを期待しているのだ。花梨はつかんでいた招待状の残骸をテーブルに投げ出した。
「胸糞悪いが、俺様はこの招待状を護衛の依頼と解釈してる。セブンを探して、会って、無事でいられるはずがねえ。あいつは殺人狂だ。とびっきりにイカレ切った奴だ」
物騒な言葉を並べ立てながら、花梨は小麗の頭をくしゃくしゃと撫でる。セブンは殺人狂といい放つ花梨自身もとことん戦闘狂なのだが、小麗のことは一番弟子として、また愛玩物として心からかわいがっているのだった。顔を寄せて、「李よ、ちゃんと修行してっか？」とささやくと、また元通りの乱暴で不遜な態度に戻った。
「女子会を奴らを会わせる場にしちまうのは賛成だ。俺は主賓として楽しませてもらいつつ、ロゼッタの奴の身辺を警護する。戦闘になったら俺様に全面的に任せろ。ロゼッタは絶対に女子会に連れてくること！　コレが条件だ。セブンはお前らが連れて来いよな」
「それが……」
アリーセは言いよどむ。
『私たちは、芽森先輩こそがセブンなのではないかと考えているのです』
小淋の書いた文字をしげしげと眺めると、花梨はにんまりと、次に大声で笑い出した。
「へ～え。芽森が候補者ねえ！　だったら滾っちまうな！　ギャハハ！」
「花梨、驚かないのだ？」
目をまるくする小麗に、花梨はいかにもうれしそうに答えた。
「驚くわけあるか。俺様はあいつとこぶしを交わし合って、誰よりもよくわかってたからな。あいつが時折見せる『殺意』……あれは自分と同じ、人殺しの狂人のものだったからよ！」

「ごっめえんアリーセちゃん！　ってもうおそろい!?」
「来たな財布。まあ座れ」
花梨に『財布』と言い放たれた志波武道は、しおれた菜っ葉のようになって席に着く。この場ただ一人の男性である上、周りを囲むは見目麗しい女性ばかり。両手に花どころか花束状態だ。喜んでいいはずのシチュエーションだが、どうしてもそんな気分になれない武道だった。これから始まる女子会は、すでに取り上げられた二万円＋アルファ（これから取り上げられる分）、要は予算は武道持ちで開催されることが最初から決まっているのだから。
「はぁ～。わかってはいてもちょっとキツイかもーっと……」
財布をのぞき込む武道。だがそのおちゃらけた態度はすぐにどこかに仕舞われた。アリーセが、小淋が、そして小麗もが。目に真剣な光を宿していることに気づいたからだ。花梨だけはわくわくと興奮した表情を浮かべていたが。
「相談、もあるんだったな？　聞かせてくれるか」
「志波さんこそ、相談があると言っていたような……」
「いや俺のは女子会の席数とかセッティングとか、そういうのだから。アリーセちゃんたちのは、そうじゃないだろ？」
こういうときの武道は聡い。
「実は……」