レディ・ロゼッタの運命考察｜リアクション

レディ・ロゼッタの運命考察

「お待たせしました。遅れてしまったかしら」
　白いロングヘアの少女、芽森菜々緒が来店すると、にわかに店内が騒がしくなる。パーティ席の面々はもちろん、一般客も高名な画家の娘にして自らも才能にあふれる美少女、という肩書きを持つ菜々緒に思わず注目している。菜々緒は目を細めて微笑み、会釈をした。
（なんだか少しお疲れのように見えますね……）
菜々緒の姿を見て、浅山小淋は漠然とした不安を覚える。
「おーっと。やっと主賓が来たな！　待ちかねたぜ！」
犬神花梨は早くスイーツを味わいたくてたまらないようだ。せかすように菜々緒に手を振る。彼女の隣には、一緒にやって来た吉祥寺黒子がいた。
「その二人はどうしたのだ？」
李小麗は後の霧切翠子と新井米太郎を指差す。
「突然で申し訳ないのだけれど、どうしてもお二人を招きたくて。何とかお願いできないかしら」
主賓の菜々緒に頼まれては、断るわけに行かない。翠子は女子たちに招かれ、華やかなパーティ席に。米太郎は志波武道の向かい側に座った。
「お邪魔しまーす……先輩？」
「ああ……相席オッケーだよぉん……」
テーブルの上に体を投げ出したまま、器用に首だけを米太郎に向けて挨拶する。マネーを急速に失った身は、まだ回復していないようだ。席を立った黒子が武道に、「悪ぃな。あとで俺も少し出すからよ」とささやくのを耳にして、米太郎は武道が倒れたわけをおぼろげながら知るのであった。

菜々緒は見知らぬ女性を見止めて、眉をひそめ、身をこわばらせた。小麗が立ち上がって、菜々緒の手を引く。
「今日はゲストが来ているのだー！　ロゼッタ！　この人が菜々緒なのだ」
「菜々緒、こっちはロゼッタなのだ。ちょっと前話題になった占い師なのだ」
「はじめまして。『レディ･ロゼッタの未来観測』という小さい店をやってるの。よろしくね」
差し出されたロゼッタの手を、菜々緒は気が進まなさげに握り返した。
「……よろしくお願いします」
つないだ左の手から奇妙な痙攣が伝わってくるのに、小麗は首をかしげた。

　多少のイレギュラーはあったものの、女子会は和やかに進んでいた。
「さあって！　そろそろ復活しないとねっ☆」
やおら武道は起き上がり、おなじみの明るく、軽い調子でパーティ席の傍らに立った。

「俺はその席には座れない！　だが、給仕を担当すればここまでは近づけるわけで!!　あ、ありがとうございます、俺があとやりますんで」
運ばれてくるスイーツの盆を受け取り、手際よく女子たちの前に並べていく。武道は女子のトークに割り込んでにぎやかに場を盛り上げながらも、時折周囲に目を光らせていた。
（無関係の客もいる。もし菜々緒先輩がセブンだとしても、これだけ人目が多ければ目だったことはすまい。動くとしたら、静かにことを起こすか……ろっこんを使う可能性もある）
「武道、ごちそうさまなのだー！　んぐんぐ、このおはぎうまうまなのだ」
小麗はおはぎを平らげると、串団子に手を伸ばした。
『こちらもいただきますね』
小淋は時折笑顔を見せるものの、どうしても『神様の手帳』の結果が気になってしまって、心から楽しむことができない。手帳の結果を打ち明けて置くべきだったのか、今ならまだ間に合うのか。そのことばかりを考えていた。