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【七夕】鵲の翼を渡って ~七夕ゆかたまつり 1371~
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二の膳三の膳まである部屋食を楽しみ、母と兄、双子の妹弟と温泉に浸かっている間に、部屋にはふかふかの布団が敷かれていた。歓声を上げて布団に飛び込む妹弟を叱るどころか一緒になって倒れ込む母の様子に思わず笑いながら、
鴻上 彰尋
は来て良かったと心から思う。
家族一緒に寝子温泉の宿に泊まることは、ずっと前からの約束だった。一ヶ月以上前からカレンダーに印をつけて楽しみにしていた妹弟たちと同じに、母も兄も、それから自分も、皆で楽しみにしていたこと。
(……少し残念なこともあるけれど)
たったひとつだけ、心残りがある。
七月七日、七夕の今日は、恋心を寄せる女の子の誕生日だった。
(自分なりに出来ることはしたから)
日付変更後すぐにお祝いの言葉を伝えた。明日、寝子温泉から帰ってから会いたい旨を伝えた。
藤の椅子や小さい卓、飲み物の入った冷蔵庫の置かれた広縁に置いた自分の鞄を見遣る。一泊二日の小旅行の小さな鞄の中には、我慢できずに持ってきてしまった彼女へのプレゼントが潜んでいる。
あの日の夜、ふたりで海岸で拾った猫の目シーグラスを使って彰尋手ずから作ったイヤリング。
(喜んでくれるかな)
不安に思うと同時、渡すのが楽しみな気持ちもあった。
布団でごろごろする妹弟と母に呼ばれ、彰尋は笑みを返す。
誕生日の当日に会えなくて少し残念な気持ちもあるけれど、今日はゆっくりと家族と温泉を楽しもう。
兄と広縁の椅子に掛けて瓶のコーラを分け合ったあと、二人で遊ぶ妹弟を今日は兄と母に任せ、彰尋は散歩がてら部屋の外へ出た。七夕祭りの今日は、宿の庭を灯籠の灯りが照らし出しているらしい。
──睡蓮の灯籠をよければ探してみてくださいね
宿の女将が言っていた。見つけられると良いことが起こるかもと。
(『睡蓮』……)
水面に咲く美しい花の名を思うと同時、瞼に浮かぶ面影がある。
(弥逢先輩)
もれいびであれば鈴島の空に見える不思議の塔──星幽塔に於いて、彰尋は不思議の箒を作成する店に世話になったことがあった。その同じ店で、同じ寝子島の同じ高校に通っていたひとつ年上の弥逢先輩──
弥逢 遊琳
も箒を作ったのだと人づてに知り、その箒の名が『睡蓮』であることを知り、思った。
優しい気配りが出来て物腰が柔らかく美しいあのひとに、睡蓮の花はよく似合う。
そう思ったからこそ、よく覚えていた。
花の名前が冠された戸が並ぶ廊下を過ぎ、宿の中庭へ続く扉をそっと開く。夜半であるためか、ところどころに配された矢立傘の下の長椅子にも、桔梗に包まれた東屋にも、どこにも人気はなかった。
あちこちにふわりふわりと光る灯籠の色を瞳に映しながら、夜の庭を歩けば、然程掛からず石畳の敷かれた築山の端に睡蓮の描かれた灯籠を見つけることが出来た。
和紙灯籠に描かれた睡蓮を見下ろす。涼みがてらの散策に庭へ出たはずなのに、何故だか頬に熱が昇ってしまったのは、
(会いたかったな)
ふと、彼女への想いが胸のうちから溢れ出てしまったからだ。
夜空を仰げば、天の川がぼんやりと輝いて見えた。星の光に胸を落ち着かせ、そうして思い出すのはもうひとり。
(……弥逢先輩、お元気にされているだろうか)
彼が高校を卒業してから、会う機会を得られないままに数ヶ月が経ってしまっている──
夢の外に降り立った感覚がした。
爪先に触れる土の冷たさが妙に懐かしかった。
「おや、此処は……」
呟いた己の声音が己のものではない気がしてそっと息を零して、己が息をしていることを確かめる。そんなもの、もうどうでもいいはずであるのに。
手にした和傘をくるりと回す。
見回す瞳に映るのは、蛍が如き淡い光宿す灯籠が照らし出す庭。周囲の建物や手の入れられた植生から見て、どうやら旅館の庭であるようだった。
鼻先に触れる温泉の香に、此処が温泉街の一角であろうと判断する。
(寝子島、かな)
くるりくるりと和傘を回しながら、以前は訪うことも少なかった景色を眺めやる。然程馴染みがないはずであっても、不思議と古き誼に触れるかのようであるのは、
(夢の世界に浸った今となっては、だからかな)
彼方が夢の世界であるのは間違いない。なれば、今己が立っているのは夢か現か、どちらであるのだろう。
(けれどまぁ、今の僕を呼べるほどの誼と言うなら)
こちら側に己を『呼んだ』者を探して視線を伸ばせば、夜の庭の端、ゆらゆらと揺れる灯籠の光を前に佇む姿があった。
「嗚呼、君だ」
知らず微笑む唇をそのままに、遊琳は彰尋のもとへと足音もなく歩み寄る。
「久しいね、鴻上」
後輩の姿は、未だ記憶と違わなかった。あちらの世界に於いて時間間隔などとうに手放してはいたけれど、己が星幽塔を介して夢の世界に自身を閉ざしてから然程時間は経っていないらしい。
「息災の様で何より」
柔らかく掛けた声に、けれど彰尋は振り返るなり目を丸くした。弥逢先輩、と呟いた後の言葉を失くす彰尋に、遊琳はただ笑みを返す。
(何やら驚かれている様だけれど)
仕方がないとは思う。
(まぁもう『彼の知る弥逢遊琳』らしくはあるまい)
仕方がないねともう一度心に繰り返す。
痛みとも呼べぬ程度の心の波を見送る。
今の己の有様の真実を、少なくともこの場では詳らかにする気はなかった。
「お元気でしたか」
だから彰尋がようやく口にした言葉も、
「灯籠の話を聞いてこちらに?」
その次の問いも、そうっと無言で見送る。見送ったことすら気取られないうちに、
「呼んだろう?」
彰尋が思考するための問いを放つ。
(僕を)
少なくとも、
(僕の概念を)
たとえば鏡にも似た湖面に触れた指先のように、そっと。だから夢の世界を覆う『湖面』に漣がたった。だから己が此処に立てた──
彰尋は『遊琳』を見つめる。睡蓮の灯籠の光に照らし出された『弥逢先輩』は、以前とはどこか雰囲気が違っているように見えた。手を伸ばせば今にも消えてしまいそうに見えて、心配になった。
(生きておられますよね)
その問いを放ってしまえば、それこそ彼が消えてしまう気がした。だから半ば必死で話した。話していれば彼を此処に繋ぎとめられると信じて。
「先輩、……俺、同じ箒屋で箒を買ったんです。その縁で先輩の箒の名前を、──『睡蓮』を知って、それで先輩を思い出して、」
「……睡蓮」
愛おしい名に、遊琳は蜜色の瞳を和ませる。その名を口にして、初めて気が付いた。彰尋の傍らにある灯籠に。光が揺れる和紙に描かれた睡蓮に。
己の『鍵』でもある意思持つ箒は、けれど此方の世界には連れて来られなかったらしい。今己の手元にある和傘をくるりと回し、遊琳は瞳を伏せる。であれば、此処に居るのは『弥逢遊琳』の概念なのやもしれぬ。実体持たぬ、幽霊のような存在であるのやもしれぬ。
「……そう、【睡蓮】。あれは杖にして鍵なのだけれど」
彰尋に応じて口にしてから、遊琳は己と同じに妙なる箒の主でもある彰尋に静かに微笑む。
「……大事におし」
囁く。
「君の為の箒だから、君の望の為なら今は無いものをも紡ぐ」
魔法の呪文じみて唇に上らせるのは、星幽塔の彼の人が作る箒の神髄。
「不思議な場所での再会……とかね」
それは確約ではないにしろ、祈りに近い。
くるり、夜に色彩を描いて和傘が回る。
(次はこの子の箒にも挨拶が出来ると良い)
悪意が無いとは言え、意図的に彰尋からの幾つかの問いに答えぬ意地悪をしてしまった。それでも、
(今尚可愛い子に相違ない)
先輩、と彰尋が声を上げる。遊琳は微笑みばかりを返す。
「またこうして、会えますよね?」
祈るような彰尋の言葉に、遊琳はくるりと和傘を回して、
「先輩……?」
それきり、遊琳の姿は七夕の夜に夢幻の如く消えた──
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
1000人
参加キャラクター数
38人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年12月20日
参加申し込みの期限
2021年12月27日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年12月27日 11時00分
参加キャラクター一覧
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