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- 00月00日生 00歳
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【七夕】鵲の翼を渡って ～七夕ゆかたまつり 1371～
参道商店街に七夕飾りや笹が飾られ始めた頃から、神社で七夕ゆかた祭りがあると知ったときから、宮祀 智瑜の心はわくわくそわそわ。
前の日に箪笥から引っ張り出して衛門掛けに掛けて眺めていた浴衣に袖を通せば、自然と唇は笑みのかたちになる。祖母に教わっていた通りに浴衣を何とかひとりで着つけてみたはいいものの、
「お祖母ちゃん、帯結べてる？」
出掛けにちょっぴり不安になって、台所に立っていた祖母に聞いてみる。
あらあら上手に出来たわね、と笑った祖母は、手慣れた仕草で帯の曲がりを直してくれた。
「難しいね」
「上出来上出来、玄関に下駄は出してあるからね」
ぽん、と綺麗にしてもらった帯を軽く叩かれ、智瑜は優しい黒い瞳を細める。
「いってらっしゃい」
「行ってきます！」
用意してもらった下駄を履き、元気いっぱい旧市街へと飛び出す。見慣れているはずの参道商店街は浴衣姿のひとと屋台に溢れ、まるで知らない町のようで胸が弾んだ。
「わぁ」
焼き鳥やお好み焼きの匂い、果物飴の鮮やかな色、呼び込みの華やかな声、夕映えの景色に賑わう色んなものに気を惹かれながら寝子島神社に向けて歩いていると、
「ちゆー！」
「あら、今晩は」
人込みの中、こちらに向けて手を振る甚平姿の幼女と浴衣姿の少女の姿が見えた。家族ぐるみのお付き合いをしている友達に、智瑜は笑顔になる。
「こんちゃん、夕さん」
足早に近づけば、いつも大抵一緒にいるもうひとりの姿がない。
「日暮さんは？」
「バイトやそうです」
古家 日暮の名を出すと、夕は唇を尖らせた。拗ねたような顔をする夕を、智瑜は寝子島神社まで一緒に行こうと誘う。
「短冊を一緒に書きましょう！」
ゆかたきれいねえ、と足元にまとわりつくこんと手を繋ぎ、智瑜はふわりと笑んだ。
「こんちゃんも甚平さん可愛いね。夕さんは浴衣、とても似合ってます」
「おおきに。智瑜も可愛らしいです」
少し照れくさいようにくすぐったいような笑みを交わし合いながら、少女たちは肩を並べて七夕祭りの参道商店街を歩き、神社に至る石段をゆっくりと登る。
「おっきい笹！」
キャア、と鳥居の両脇に掲げられた笹を目に石段を駆け登ったこんは、鳥居の前に居た巫女さんから短冊を三枚貰ってふたりの元へと駆け戻って来た。はいどうぞ、と短冊を渡され、願い事を書き込む用の長卓の前へと手を引かれ、智瑜は悩む。
「うーん……」
願い事は何にしよう。
たくさんありすぎる願い事を絞り切れないままに隣のふたりを見れば、こんは案外綺麗な文字で『みんなえがお！』と書いていて、夕は『永く此処に居られます様に』と書いている。
結局、『みんなが元気で幸せでありますように 智瑜』と書く。
(これが一番かな)
屋台巡りをするというふたりと別れ、智瑜は短冊を結わえたお礼にと巫女さんから貰った金平糖をぱくり。
(うん、甘くて美味しい)
もう一粒ぱくりと口に含んで、智瑜は瞬く。心の中にふわり、大好きな桐島 義弘先生の顔が思い浮かんで、途端に会いたくなってしまった。
どこかにいないかな、と見回してみる。
(生徒がいっぱいいるところに義弘先生あり、です)
生真面目で生徒想いな先生は、こういう日は見回りをしている可能性が高い。
きょろきょろしながら神社の人込みを歩いてゆく智瑜の視線の先、一際背の高い背広姿を見つけた。見間違えようのない大好きなひとの背中に、智瑜は嬉しくてたまらなくなる。
「義弘先生っ！」
下駄をカラコロ鳴らして駆け寄り、嬉しい気持ちのままに大好きな背中に抱き着く。
「っ、宮祀……？」
「屋台を巡りましょう、義弘先生！」
振り返って眼鏡越しの鋭い瞳を丸くする先生を、智瑜は満面の笑みで見仰いだ。綿あめとリンゴ飴を買うつもりです、と先生の隣に並ぶ。
「先生は何を買いますか？」
「……いや、職務中だ」
首を横に振る先生は、やはり見回りの最中だったらしい。
生真面目な顔で周囲に視線を配るばかりの先生の気を引きたくて、智瑜は先生の背広の腕に浴衣の腕を絡める。
「好きです」
「な……」
「この雰囲気が好きです。わくわくしませんか？」
「あ、ああ、……そうだな」
頷く先生の腕を引く。雑貨を売っている屋台の前、智瑜は目を輝かせた。猫に犬、狐に金魚、動物や魚をモチーフにしたアクセサリーがお祭りの光にきらきらと輝いている。
「これとっても可愛い！」
可愛いものにときめく心のままに手にしたのは、赤い金魚のイヤリング。お小遣いで買ったイヤリングは、ただ持ち帰るだけでは勿体ない気がした。早速耳に飾ってみる。
「似合います？」
振り返って聞いて見れば、先生はいつもは厳しく引き結んでいる唇を僅かに緩めた。
「ああ、よく似合っている」
前の日に箪笥から引っ張り出して衛門掛けに掛けて眺めていた浴衣に袖を通せば、自然と唇は笑みのかたちになる。祖母に教わっていた通りに浴衣を何とかひとりで着つけてみたはいいものの、
「お祖母ちゃん、帯結べてる？」
出掛けにちょっぴり不安になって、台所に立っていた祖母に聞いてみる。
あらあら上手に出来たわね、と笑った祖母は、手慣れた仕草で帯の曲がりを直してくれた。
「難しいね」
「上出来上出来、玄関に下駄は出してあるからね」
ぽん、と綺麗にしてもらった帯を軽く叩かれ、智瑜は優しい黒い瞳を細める。
「いってらっしゃい」
「行ってきます！」
用意してもらった下駄を履き、元気いっぱい旧市街へと飛び出す。見慣れているはずの参道商店街は浴衣姿のひとと屋台に溢れ、まるで知らない町のようで胸が弾んだ。
「わぁ」
焼き鳥やお好み焼きの匂い、果物飴の鮮やかな色、呼び込みの華やかな声、夕映えの景色に賑わう色んなものに気を惹かれながら寝子島神社に向けて歩いていると、
「ちゆー！」
「あら、今晩は」
人込みの中、こちらに向けて手を振る甚平姿の幼女と浴衣姿の少女の姿が見えた。家族ぐるみのお付き合いをしている友達に、智瑜は笑顔になる。
「こんちゃん、夕さん」
足早に近づけば、いつも大抵一緒にいるもうひとりの姿がない。
「日暮さんは？」
「バイトやそうです」
古家 日暮の名を出すと、夕は唇を尖らせた。拗ねたような顔をする夕を、智瑜は寝子島神社まで一緒に行こうと誘う。
「短冊を一緒に書きましょう！」
ゆかたきれいねえ、と足元にまとわりつくこんと手を繋ぎ、智瑜はふわりと笑んだ。
「こんちゃんも甚平さん可愛いね。夕さんは浴衣、とても似合ってます」
「おおきに。智瑜も可愛らしいです」
少し照れくさいようにくすぐったいような笑みを交わし合いながら、少女たちは肩を並べて七夕祭りの参道商店街を歩き、神社に至る石段をゆっくりと登る。
「おっきい笹！」
キャア、と鳥居の両脇に掲げられた笹を目に石段を駆け登ったこんは、鳥居の前に居た巫女さんから短冊を三枚貰ってふたりの元へと駆け戻って来た。はいどうぞ、と短冊を渡され、願い事を書き込む用の長卓の前へと手を引かれ、智瑜は悩む。
「うーん……」
願い事は何にしよう。
たくさんありすぎる願い事を絞り切れないままに隣のふたりを見れば、こんは案外綺麗な文字で『みんなえがお！』と書いていて、夕は『永く此処に居られます様に』と書いている。
結局、『みんなが元気で幸せでありますように 智瑜』と書く。
(これが一番かな)
屋台巡りをするというふたりと別れ、智瑜は短冊を結わえたお礼にと巫女さんから貰った金平糖をぱくり。
(うん、甘くて美味しい)
もう一粒ぱくりと口に含んで、智瑜は瞬く。心の中にふわり、大好きな桐島 義弘先生の顔が思い浮かんで、途端に会いたくなってしまった。
どこかにいないかな、と見回してみる。
(生徒がいっぱいいるところに義弘先生あり、です)
生真面目で生徒想いな先生は、こういう日は見回りをしている可能性が高い。
きょろきょろしながら神社の人込みを歩いてゆく智瑜の視線の先、一際背の高い背広姿を見つけた。見間違えようのない大好きなひとの背中に、智瑜は嬉しくてたまらなくなる。
「義弘先生っ！」
下駄をカラコロ鳴らして駆け寄り、嬉しい気持ちのままに大好きな背中に抱き着く。
「っ、宮祀……？」
「屋台を巡りましょう、義弘先生！」
振り返って眼鏡越しの鋭い瞳を丸くする先生を、智瑜は満面の笑みで見仰いだ。綿あめとリンゴ飴を買うつもりです、と先生の隣に並ぶ。
「先生は何を買いますか？」
「……いや、職務中だ」
首を横に振る先生は、やはり見回りの最中だったらしい。
生真面目な顔で周囲に視線を配るばかりの先生の気を引きたくて、智瑜は先生の背広の腕に浴衣の腕を絡める。
「好きです」
「な……」
「この雰囲気が好きです。わくわくしませんか？」
「あ、ああ、……そうだな」
頷く先生の腕を引く。雑貨を売っている屋台の前、智瑜は目を輝かせた。猫に犬、狐に金魚、動物や魚をモチーフにしたアクセサリーがお祭りの光にきらきらと輝いている。
「これとっても可愛い！」
可愛いものにときめく心のままに手にしたのは、赤い金魚のイヤリング。お小遣いで買ったイヤリングは、ただ持ち帰るだけでは勿体ない気がした。早速耳に飾ってみる。
「似合います？」
振り返って聞いて見れば、先生はいつもは厳しく引き結んでいる唇を僅かに緩めた。
「ああ、よく似合っている」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2021年12月20日
- 参加申し込みの期限
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- 2021年12月27日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2021年12月27日 11時00分
