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【七夕】鵲の翼を渡って ~七夕ゆかたまつり 1371~
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此処に居たくなかった。
衝動のままに飛び乗った飛行機が何処行きだろうと構わなかった。
降り立ったのは熱風渦巻く異国だった。タイ、であったように思う。
記憶は定かではない。夢遊病者のように異国の街を、海岸を虚ろに歩き回った。誰かに出会った気がする。手を伸ばした気もする。夢のように求め合った気もする。どれもこれもが幻のように曖昧だった。
覚えているのは、
──探したよ
薄暗いホテルの一室に立った女が甘い毒の如く囁いた最初の一言。
誰にも告げず、四千キロ以上離れた異国にまで飛んだ己を驚くほどの執念で見つけ出した女は、それきり一言も発さず己をベッドに押し倒した。
女が己を見つけ出すために用いた手段など、興味もなかった。
女に見つけ出されるより先、一夜の幻の如く甘く求め合った夢の欠片を追うてもがく己の身体を膝で押さえつけ、女は悪意に染まったまなざしで己を刺した。そうして文字通り、貪られた。少なくとも、三日以上、昼も夜もなく。
甘い毒にも似た女の体臭に満ちたホテルの一室で悪夢に犯され、朦朧とした意識のまま、女に引きずられるように帰国した。
そのままタクシーに押し込まれ、気が付けば女が──
葉利沢 倫理子
の身体を奪い取り、『Malice』を名乗る女が住み着いているワンルームマンションに連れ込まれていた。
そこは元々さゆるが『住んで』いた部屋だった。さゆるの前から姿を消した男が住んでいた部屋だった。
その部屋で、さゆるはまたMaliceに身体を貪られた。精気を搾り取るように、正気を、記憶ですらも奪うように。
その部屋をどうやって出たのかも、別の女のもとへいつ戻ったのかも、さゆるは最早覚えてはいない。あどけない顔のそのくせきちんと大人の女である彼女に世話を焼かれるまま、抜け殻じみてぼんやりと幾日かを過ごした。
何気なく見たスマートフォンに記された日付は、七月を示している。
白いシーツの上、一糸まとわぬ姿でさゆるは見知らぬ天井を眺める。
(ここは、……)
タイのあの部屋ではない。
あのワンルームマンションでもない。
優しくて世話焼きな彼女の家でもない。
投げやった視線の先には、古い旅館街が広がる窓があった。寝子温泉の奥まった位置にある旅館であることを思い出して、此処へはMaliceの手によって連れて来られたことを思い出して、
(どうでもいい)
さゆるは思考を放棄する。
何故此処に居るのか──例えばあの悪意の女の気まぐれなのか、それとも、言うことを聞かなければ世話になっている女に危害を加えるという脅しに屈したからなのか。
(いまさらどうでもいい)
最早此処に居たくないとすら思わなかった。そう思う気力も残っていなかった。
乳房に、鎖骨に、うなじに、折檻の傷じみて残る紅い痕を見るともなしに見る。気怠いばかりの身体を床から引きずり出す。悪意の女の姿は広い部屋になかった。
(どうせまたすぐやって来る)
何の感慨も抱かぬ胸を、布団の脇に脱ぎ捨てられていた浴衣に包みもせず向かうは部屋の外、硝子張りの扉を挟んで設けられた露天温泉。宵闇に包まれた坪庭を、小さな提灯の灯ばかりが頼りなく照らし出している。
硝子戸を押し開けた途端、空調の効いた部屋に七月の熱と湿気が流れ込んだ。初夏の夜気をも押しのけて頬を撫でる温泉の熱を指先で払い、悪意に穢れた裸身を陶器の湯舟に沈める。
滑らかな湯の熱に瞼を閉ざしていられたのは、ほんの数十秒ほど。
「置いて行かないでよ」
耳元に聞こえた揶揄を含んだ囁きに、知らず眉間に皺が寄った。案の定、と思うより早く、熱い湯の中に冷たい指先が忍び込む。
女の指先が肌に触れるたび、針に撫でられるような違和感ばかりを覚えた。
女の声が耳朶に触れるたび、生温い湿気に身を浸すような嫌悪感ばかりを覚えた。
すぐにでも湯舟を出て女の傍から離れたいのに、──知っている。離れようとすればするほど、女はまとわりついてくる。
閉ざした瞼をそのままに女が飽きるのを身じろぎもせずに待つも、女の手も唇も、それから一時間近く、飽きもせずに湯の中の裸身をまさぐり続けた。耳朶に愚にもつかぬ言葉ばかりを触れさせ続けた。
火照った身を湯舟から出す。
「どこもかしこも桜色ね」
くすくすと笑う女を無視して藍染めの浴衣を纏えば、己と同じに一糸まとわぬ姿だった女も手早くその痩身を夕焼け色の浴衣で包み込んだ。
肘に胸を押しつけてくる女と共、宿を出る。蛇じみて絡みついて来ては下らぬ戯言を囁きかけてくる女を振りほどく気力もないまま、宵闇の温泉街をただ彷徨う。
毒の花だと、思った。
女の夕焼け色の浴衣に咲く朝顔の濃紫の色は、まるで底のない夜のよう。描かれた蔓はそこへ引きずり込んで行く触手のよう。
火照った身体にぴたりと押し付けられてくる女の柔らかな肢体に感情の無いまなざしを落としていて、
(……?)
こちらを見つめる凍り付いたまなざしに気が付いた。もたげた瞳に捉えたのは、長い黒髪を艶やかに結い上げた浴衣姿の女。隣にはその恋人と思しき男。
息を殺すが如き女の表情を不審に思えど、その女に覚えはなかった。怖じるにも似たその瞳を平然と受け止め、刹那も足を緩めず二人とすれ違う。
「なあに? 知り合いかしら?」
耳元に甘く囁くMaliceの声がただただ鬱陶しかった。首を横に振る。
「ふうん……?」
Maliceはまるで一夜限りの浮気相手と鉢合ったかのような顔をした女をちらりと振り返る。モデルじみた美貌の女は、恋人らしい男と仲睦まじい様子で灯籠と提灯の光が揺れる温泉街へと消えて行こうとしている。
(なぜあんな顔を)
一瞬訝るも、関心はすぐに傍らのさゆるへと戻る。
あんな女などどうでも良かった。それよりも目の前の女だ。これほどまで近くにいるのに、彼我が分からなくなるほど濃密に肌を重ねようとも、その心は己のものには決してならない。
(あの男のせい)
さゆるの心の中には、今もあの男がいる。あの男──片篠藍人しかいない。
夜色の瞳に悪意と憎悪を揺らがせながら、Maliceはさゆるに身体を寄せる。まるでこの世にふたりしかいないような暗い路地を歩いたその果て、重なりさざめく笹の葉を潜って進んだその先には、ぽつり、灯籠がひとつあるだけの小さな小さな袋小路。
さゆるの足が止まる。戻るも進むも選ばずに佇むだけのさゆるを見遣り、灯籠を見遣り、
(睡蓮……)
光が揺らぐ和紙に描かれた絵が目に入った、その途端。
「……欲しいの」
唇からさゆるへの想いが零れて落ちた。
「あなたの心からあの男の存在を抹消したい」
囁く横顔にさゆるのまなざしが落ちる。それを感じて、Maliceの心は跳ねた。
「虚ろになったその心に私を住まわせたい」
だからこそ、と唇が動く。
「何度も何度も執拗に、あなたに私を刻み込むの」
身体のすべてに己の徴をつけた。
心を抉ることで己の徴とした。
「……それが無駄な行為であることは判ってるのに、何度も何度も」
己が意思ではなく唇から紡がれてしまう、紛うことなき己の心に、Maliceの漆黒の瞳が揺らぐ。さゆるのまなざしから逃れて顔を背けてしまいたい気持ちと、さゆるのまなざしを受けて悦びを覚えてしまう気持ちに挟まれ身じろぎも出来なくなる。
立ち尽くす悪意の女を、さゆるはただ黙して眺めるばかり──
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
1000人
参加キャラクター数
38人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年12月20日
参加申し込みの期限
2021年12月27日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年12月27日 11時00分
参加キャラクター一覧
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