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【七夕】鵲の翼を渡って ~七夕ゆかたまつり 1371~
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伏せた黒い瞳に映るのは、同居する従姉が着つけてくれた白縹色の浴衣。薄い水色の地に踊る、涼し気な風鈴や金魚たちを瞳に捉えながら、
青山 絢
は傍らを歩く従姉を──
水谷 真優理
をちらりと見遣る。
星ヶ丘の高級ホテルでコンシェルジュを務める従姉の今日の装いは、大柄な牡丹の花をあしらった華やかで凛とした浴衣。
──コンシェルジュはね、なんでもできないといけないのよ
そう言いながら慣れた手つきで浴衣を着つけてくれた従姉の横顔は、清楚で大人っぽかった。今だって、黙って隣を楚々とした足取りで歩く姿は三十路を迎えて尚愛らしさを備えている。
それなのに。
うなじで揃えた黒髪をさらりと揺らしてこちらを向いた従姉の手には、巾着袋から手品のような素早さで取り出したスマートフォン。
「絢ちゃん」
黒い瞳をきらきらと輝かせ、従姉は熱っぽい声で囁いた。
「ちょっといいかな絢ちゃん」
言うなりこちらの返事も待たずにスマホ内蔵のカメラレンズを向けてくる。
「真優理さん、」
「ほら、その七夕飾りバックにしてね」
薄化粧の頬を薄紅に染め、従姉は興奮しきりな声音でカメラのシャッターを切る。一枚二枚ではなく、連写の勢いで十何枚と従妹の浴衣写真を撮る。
「うん可愛い、やっぱり可愛い、可憐可愛い、絢ちゃんサイコー」
怪しい造語まで駆使して従妹ラブを隠しもせず、真優理は絢の浴衣姿を写真と脳裏に焼き付ける。
「キャア絢ちゃん、こっち向いてー」
ひとりで盛り上がる真優理に言われるがまま、絢は参道商店街のあちこちに飾り立てられた七夕飾りのひとつを背に従姉に向けて微笑んでみる。
(もう慣れ……)
てはいない。
今だって七夕祭りへ向かうのだろう浴衣姿の人々が微笑まし気なまなざしと共に通り過ぎて行く。気恥ずかしさを覚えるなと言う方が無理というもの。
(真優理さん、黙っていると美人なのに)
従妹のことになると発作のように残念無念な従妹ラブアラサーお姉さんと化してしまう。
こちらが諦めた様子を見せたところで気にした風も見せず、放っておけばスマホの容量いっぱいまで写真を撮り続けてしまいかねない従姉を止めるべく、絢は浴衣の腕をそっと持ち上げる。
「真優理さん」
「なあに絢ちゃん。心配いらないわ、メモリーカードならちゃんと予備が──」
そうじゃなくて、と絢は視線の先に偶然見つけた路地の奥を指し示す。細い道の入口に飾られているのはひみつの暗号じみた藍色の花菖蒲の水盤。七夕の日差しに輝く水面には赤い金魚がひらりひらりと泳いでいる。
等間隔に置かれた花菖蒲を辿った先には、赤い煉瓦作りの小さな建物がある。焦げ茶色の扉に掲げられた銀色プレートには『開店中』の文字。扉の傍らには『れとろ喫茶 茜』と書かれた看板を首から下げた陶器の柴犬が笑っていた。
「あの店、雰囲気良さそうだね」
「確かにいい感じよね」
大好きな絢の言葉に、真優理は一も二もなく頷く。
狭い路地を肩を寄せ合って過ぎ、こんにちはと扉を開く。迎えてくれた袴に白いエプロン姿の店員に通されたのは、アンティークランプの光がたくさんの観葉植物を照らす奥の席。
天井でゆったりと回る木製シーリングファンの風にさらさらと揺れる七夕飾りの音に耳を傾けながら、飴色に磨き上げられた椅子へ向かい合って座ったふたりは頭を寄せ合うようにして和紙に墨で書かれた品書きに目を通す。
ふたりで迷った末に選んだのは、ふたり一緒のほうじ茶とシベリアのセット。
お冷を置き丁寧なお辞儀をして店員が厨房に下がって後、ふたりは七月の暑気に熱を帯びた身体を店内の冷涼な空気で冷やす。
「カステラを雪原、羊羹をシベリア鉄道に見立てている説が有名なんだって」
「少し前に観たアニメ映画で知ってから気になっていたの」
品書きに書かれた説明文を真優理が読み、絢が映画の話をしているうちに、切り子グラスに注がれた冷たいほうじ茶と、藍色の器に敷かれた笹が涼し気なアクセントとなったお菓子が運ばれて来た。
店内に満ちる笹の葉を耳にしながら、ふたりは冷たく香ばしいほうじ茶で一息つく。
切り子グラスにそっと唇をつける絢の所作が美しくて愛らしくて、思わずスマホを取り出してしまいたい衝動をぐっと堪え、真優理は羊羹を挟むカステラを黒文字楊枝で切り分けた。ふわりとした優しい生地の真ん中、みっしりとした質感の羊羹の感覚がある。口に含めばほろりと溶けるカステラ生地のあと、しっとりとした羊羹の甘さがいっぱいに広がる。
「ん、美味しい」
「うん、美味しいね」
頷く絢の白い頬に湛えられる淡い笑みを瞳に映し、真優理は睫毛を伏せた。従妹の微笑みはいつだって可憐で可愛らしいけれど、いつだって無色透明だ。心の底の底、氷のように無色透明な微笑みで封じ込められてしまった彼女の涙は、いつになれば姿を現すのだろう。その黒く美しい瞳から流れて頬を伝うのだろう。
「こんなところにこんなお店があったのね」
「知らなかったね」
なんでもないような会話のあと、絢は両手を膝に揃えた。浴衣の背を凛と伸ばす。
「真優理さん」
「ん?」
「父と、会って来たわ」
「……うん」
絢の言葉に、真優理は頷いた。深呼吸をするようにほうじ茶をゆっくりと口にする。
絢に父との再会をするべきだと告げたのは真優理だ。
高校三年生である絢が将来の進路──『女優になる』という未来を掴み取るためには、まずはこじれた父親との関係という壁を乗り越えなければならないと。
──しっかり父親と向き合ってから、自分の生きる道を選びなさい
絢にそう告げてから、厳しかったかもしれないと悔いた。嫌われたらどうしようと内心でオロオロした。それでも、実父との関係修復は必ず絢のためになると信じた。
高校に入学してからの三年間、一度も顔を会わせて来なかった実父ときちんと話し合うようにと真優理が促したのは、絢が高校三年生となった桜の頃。
真優理の言葉に絢が心を決め、ゴールデンウィークに会おうと決めたものの、カメラマンとして世界中を忙しく飛び回る父のスケジュール調整がやっと叶ったのは結局は六月の半ばだった。
(多分、父から真優理さんに連絡入っていると思うけど)
それでも、真優理にはきちんと自分から話しておかねばと絢は真優理を見つめる。優しいまなざしを返してじっと耳を傾けてくれる真優理に、父と会った時の様子をしっかりと伝え、
「進路相談票はこの前提出して、……大学の演劇科と有名劇団の養成所の研究生を受けることにしたわ」
この先の予定を口にする。
従姉の優しいまなざしは変わらなかった。
「絢ちゃん」
優しい声で、笑ってくれる。
「私が知らないうちに大人になってたんだね」
己の成長を心から喜んでくれる従姉の言葉に、思わず恥ずかしくなった。俯いて、誤魔化すようにお茶を口にする。知らず火照った頬に、お茶の冷たさが心地よかった。
「きっと今年も七夕祭りの笹に短冊が結べるはずだから」
真優理が笑う。
「絢ちゃんはどんなお願い事をする?」
「私、は……」
赤面してしまった頬に掌を当て、絢は思案する。
「……様々な感情の色を感じられるような女優になりたい、……かな」
ちょっと抽象的かも、と首を傾げる絢を見つめたまま、真優理はいつも通りな従妹ラブな満面の笑みを向けた。
「それじゃ、私は神様に絢ちゃんの夢が叶うようにお願いしちゃおうかな」
神様、と真優理は心の中に呟く。
(神様、どうか)
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
1000人
参加キャラクター数
38人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年12月20日
参加申し込みの期限
2021年12月27日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年12月27日 11時00分
参加キャラクター一覧
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