窃盗事件発生！～奪われた七色の蝶ネクタイ～｜リアクション

窃盗事件発生！～奪われた七色の蝶ネクタイ～

　　【命取りの油断】

　その瞬間、床の氷が一斉に砕け散った。
　どうやら持ち主の意識がなくなるとその威力をなくすらしい。
　御剣刀は一切動けないままだった。最速の称号を得ながら、氷漬けで動くことすらままならなくなり、更には犯人逮捕に全くの役立たずだったというプライドをズタズタに傷つけられ、地面につっぷしたまま動かない。
　桜庭円は、一番危険と判断した水色の蝶ネクタイを【変態】から外し、やはり例に洩れず一度きちんと装着してしまってから、気合と根性を持って外して、床に落とした。
　「は、走れ…にゃーくん……それを校長先生に届けるんだ……！」
　最後の言葉と共に、蝶ネクタイをくわえた、いつも一緒の猫のにゃーくんを見送りながらその場でひざをつく。
　「ああ、助かったわ……このままじゃ出番的に形無しよっ。蝶ネクタイは私が運ぶからつけさせて」
　その場にいた尾鎌蛇那伊は試しに【変態】から黄色の蝶ネクタイを外してみた。
　直後に襲い来る、
　曰く「──私をつけて──」のラブコール！

　「あたしを魅了していいのは、良い筋肉と可愛らしいものだけよーーーっ！！」

　叫んだ蛇那伊はうっかり装着した蝶ネクタイをその場で外してしまい……よりにもよってその場で絶望感によって撃沈した！
　何が起こったのかも判断出来ない人もいる中、ねこじま荘４英傑の一人朝倉陽波が、把握したろっこんを発動させる！

　【発動条件】
　相手の手を握って念じる
　【能力】
　相手の心を落ち着かせて癒す。

　心が温かく癒されていく……人の手を取り温かさを与えるその魔法の手にも似たろっこんの所有者は、一見とても優しい大人のお姉さん。
　しかし本人は、きちんと横目で、お縄についた【変態】を蔑み憐れむ目で見るのも忘れない。

　「こ、校長室で外せばいいんだよねっ。あたしは大丈夫だから！」
　桃原空音が最後の色の蝶ネクタイに手を伸ばす。そして躊躇いなくつけうようとした瞬間──

　「駄目ーーーーーーッ！！」
　神野美野梨の叫び声が、屋上の入り口から響き渡った。