窃盗事件発生！～奪われた七色の蝶ネクタイ～｜リアクション

窃盗事件発生！～奪われた七色の蝶ネクタイ～

　【雄っぱい！　雄っぱい！】

　「もうっ、刀くんどこに行っちゃったのかしら」
　尾鎌蛇那伊は南校舎を上へと歩いていた。たくましき鎧の様な筋肉。しかし、目元と口許には色っぽい紫のアイシャドウと口紅が塗られている。
　先程まで、途中で合流していた御剣刀、小山内海と桜庭円達三人と行動を共にしていたのだが、完全にはぐれてしまったのだ。

　「この分では犯人は屋上かしら。んもうっ、犯人はどうして高いところと海潮荒れる絶壁が好きなのかしらね」
　ぼやきながらも、きっちりとセットされた髪に手を当て考える。
　中国拳法に学ぶ足運びは決して荒々しい物ではないことから、漢らしさとオカマ度が華麗にミックスされ、怪しさに更に拍車が掛かっている。
　彼が歩けば、放課後の夕暮れ間際で、まだ残っている通りすがりの知らない生徒が壁際に寄るという怪現象が起きているが、未だ本人は気付いていない。

　「あ、オカマくん！」
　そんな背後から声が掛かった。振り返ると桃原空音が走ってくる。
　「丁度良かったよ！　緑の…ゲフンッ！　じゃなかった、七色の蝶ネクタイどうなったっ？」
　空音は尋ねてそのまま全力で走ってきて……そのまま、蛇那伊にタックルして抱きついた！
　「相変わらず良い雄っぱい！　雄っぱい！！」
　腕をわきわきしながら蛇那伊の胸をまさぐる空音。その様相は明らかに異常な光景だった。

　「うほっ、やぁねぇ。人が見てるじゃない」
　恥ずかしそう身をよじる蛇那伊に、その場にいた生徒達が脱兎の如く逃げ出していく。
　……こうして、南校舎は関係者以外は完全に無人になった。

　「それじゃあ、あたし達も行きましょ」
　「うんっ」
　元気に頷く空音に対して、蛇那伊は全く気づかなかった。

　空音の目の色が、非常に危険な桃色オーラを伴って光り輝いていた事に……