窃盗事件発生！～奪われた七色の蝶ネクタイ～｜リアクション

窃盗事件発生！～奪われた七色の蝶ネクタイ～

　【二人の為の校長からのお言葉】

　関係した生徒が全て校長先生の部屋に集まった。
　もちろん犯人も、裏切り行為に走った桃原空音も、最初から味方ではなかった骨削瓢も、常闇月の鋼糸により、一緒くたに縛り上げられ転がされている。

　『すきでも　ぬすむ　はんざい』
　小山内海が、まだ話の通じそうな【信者】の方への説得を試みる。
　相手が好きならば自分の為に絶対に悲しませるような事はしない。そう、海ならば……
　『すきなのに　かなしいこと　だめ』
　文字なのに重みがあるのは、彼女が恋をしているからか。【信者】はぐぅの音も出ない。

　犯人に、八神修が最初に涙にくれる校長先生を隠し撮りし携帯に設定していた写メを犯人に見せ語っていた。
　「そんなに校長先生が好きなら困らせるなよ。ほら、校長先生のこの涙に満ちた写メが見えるか。校長先生がこんなに悲しんでおられたんだぞ」
　「うっ…！！」
　犯人達は罪悪感に一斉に顔を俯かせる。
　【信者】【変態】両方に予想外が発生した為、自首こそ促せなかったがこれも好き故の行為。
　自らの校長への謝罪によって、事態は大分変わるはずである。
　「だが、我々には校長先生の蝶ネクタイがどうしても必要だったのだ！　知名度もあるのか無いのかわからない、人気も計れない、そんなある意味一般的には蝶ネクタイとキュートな禿げしか魅力の知れない、これからの校長先生の布教にはご神体が必要だったのだ！」
　しかし、こちらもなかなか折れない。

　「驚きだ……私のことをこんなにも愛してくれる生徒がいたなんて……」
　突然響いた声。皆が一斉に振り返ると、ハンカチを目頭に当てた校長が入り口に立っていた。

　「北原さん、放課後に私が渡した蝶ネクタイは持っているかい？」
　「は、はいっ！　こ、これですぅ……出遅れて犯人に渡しそびれちゃって……」
　「ありがとうね。預かるよ」
　校長先生は、最初に北原みゆきに預けていたそれを手に取り、個別縛りにされた【信者】にそっと差し出した。
　「孫のものももちろん持ち歩いていましたが、これは私が今まで校外でつけていた臨時用の購入品です。
　孫からもらったものは、私専用の、私の本物です。

　しかし、これは今までの公務で予備とはいえ確かに使っていたもの。
　これからは、君たち専用の、私の本物ですよ」

　校長先生が二人に優しく声を掛ける。
　その言葉に、【信者】はぶわぁっと涙した。【変態】は全力で臭いを嗅ぎたがった。

　『ありがとうございますっ、校長先生ーーーっ！！』

　涙ながらの犯人二人の叫び。それは、この事件の完全解決を意味していた──

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