せんせいといっしょ：教頭先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：教頭先生編

　黒崎教頭からの質問

　教頭室は茶を基調とした落ち着いたインテリアでまとめられていた。
　革張りのソファの座り心地も良く、出されたお茶も食べ物もおいしい。
　このままくつろいでいたいくらいの居心地良さだ。

　けれど、それでは教頭先生の目的も果たせないだろうと、森蓮は一旦ティーカップを置いて居ずまいを正した。
「本日はこのような機会を作っていただき有難う御座います。教頭先生におかれましては、何か生徒に聞きたい事があるとのことでしたが、どのような事柄なのでしょうか」
「特に、ここが聞きたいというものがあってのことではないんだ。ただ、教頭という立場にあると普段なかなか生徒と直に触れ合う機会がなくってね。報告は受けているけれど、そこからでは分からない生徒の生の声も聞いてみたいと思ったんだ」
　堅苦しくなく、何でも気軽に喋って欲しいと黒崎は生徒たちに頼んだ。

「そうだな、まずはやっぱり寝子島高校での話が聞きたいな。みんなは部活とか委員会とかに入ってるのかい？」

　黒崎の質問に、後木真央が元気良く一番に手を挙げた。
「はいはい！　真央ちゃんは陸上部中距離パート所属、新聞部かけもち探検部籍だけ幽霊の猫鳴館寮生なのだ」
　続いて蓮も答える。
「私は普段、美化委員、相撲部、吹奏楽部をしています」
「複数掛け持ちしているんだね。１つのことに深く打ちこむのもいいけれど、色々なことに関わってみるのも自分というものの幅を広げるのに良さそうだ」
　実際にやってみないと分からないことは多い。それを体験するのに高校は良い場所だ。

「僕は部活にも入ってるけど、風紀委員が忙しくてすっかり幽霊部員だよお。そろそろ復活しようかなあ」
　オリガの呟きに耳を留め、黒崎が尋ねる。
「そんなに風紀委員は遣り甲斐があるのかい？」
「当然楽しいよお！　高校生活最後の一年だし、もっと楽しむよお！」
　オリガはハイテンションで答えたあと、黒崎に逆に尋ねた。
「最近の学校の風紀は乱れてるかなあ？」
　もし何か手伝えることがあったら言って欲しいとオリガが言うと、黒崎はそうだなあと最近の状態を思い起こすように宙を見上げ、そして答える。
「まあ、元気がありすぎる生徒もいるけれど、風紀が乱れてるとまではいかないんじゃないかな。これからも風紀委員として、力になってくれると助かるよ」
「任せてよお！」
　オリガは大きく頷いた。

「僕はボクシング部ぶちょーだよ！　この前の公式戦は負けちゃったけど、４月から始めた割にはいい線いってる！　後は上級者についていくための動きを研究しなきゃだね」
　円は脇を締めてポーズを取ってみせた。なかなか様になっている。
「これも巧先生のお陰！」
「牛瀬先生は良い顧問なんだね」
　寝子高に入ってからボクシングを始めた生徒が、こんなにもいきいきと取り組めるようにしているんだからと、黒崎は感心した様子だった。

「顧問の先生の存在は、部活にとって大きいですからね」
　そう言う御剣刀は剣道部所属だ。
「剣道部は島岡先生が顧問なんですけれど、剣道は未経験なのに色々と頑張ってくれて助かっています。理事長の気まぐれで新任で１組の担任で学年主任で、と色々抱えている上で顧問まで引き受けてもらったのは、本当にありがたいです」
　教師になりたてというだけで十分に大変だろうに、島岡先生は色々なものを抱えながらも、それぞれに対して一生懸命に取り組んでいる。勉強だけでなく、島岡先生のその姿に学ぶことも多い。

「教頭先生もお忙しいと思うんですけど、部活の顧問もやっているんですか？」
　刀がふと気になって質問してみると、黒崎はしているよと答えた。
「僕は応援団の顧問なんだ。あまり顔を出せないから任せっきりになってしまってるけど、元気にやっていてくれるようだよ」
　違う学年の生徒と交流できる部活や委員会は貴重な場だからと、黒崎は生徒たちに積極的に活動することを勧めた。

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