【創立記念】マスカレード☆トリエンナーレ！｜リアクション

【創立記念】マスカレード☆トリエンナーレ！

●笑わない魔女と不思議な少女

　笑わない魔女は、魔法を求めて夜を彷徨う。
　新作魔法のインスピレーションを求めて夜を飛ぶうちに、大きなお屋敷を見つけた。
　そこで秋の夜を見つめ、持て余した時間を過ごしている少女の部屋に出会う。
　そういった下地のもと、雪寄愛唯と夢宮瑠奈はトリエンナーレに出場するにしたのだった。
　トリエンナーレ開催の数日前。
　裏方担当の実行委員に物語のナレーションを挟み、どういう場面かわかるような演出にしたいと申し出た。
　少し神秘的な夜をイメージしたBGMはあらかじめ用意したので、これを流してほしいとお願い。
　どの場面で、どのBGMを使うか。ちょっとした森の中のお屋敷といった舞台説明を事細かく伝えた。
　いろいろ凝っているのは、できる限り組み込みたいという二人の熱い思いの表れだろう。
　ナレーションは、司会進行役の青山絢が担当することとなった。

「わたし達の出番ですね、瑠奈ちゃん。見てくれる観客を楽しませましょうねぇ」
　愛唯の口調はいつもと同じだが、笑わない魔女を演じるため、表情を出さないようにしている。
「頑張ろうね、愛唯さん」
　ツインテールにリボンをつけ、不思議の国のアリスのような衣装を着た瑠奈は不思議な少女役だ。
　スタンバイお願いします、という実行委員が最初に登場する愛唯をキャットウォークに行くよう指示した。
　月明りを思わせる照明が当たったキャットウォークを、無表情の愛唯は夜空を飛んでいるかのように、ゆっくりと歩く。
　そのタイミングで、絢のナレーションが。

　笑わない魔女は、新しく作る魔法を求めて夜を彷徨っています。

　ナレーションの後に、瑠奈がゆっくりとキャットウォークを歩いて愛唯に近づく。
　近づくにつれ、持て余した時間をどのように過ごそうか考えるジェスチャーを。
　あの子は何しているのかしら？　と無表情かつ無口で、愛唯は興味を示す仕草をする。

　笑わない魔女は、出会ったものにインスピレーションがあれば、魔法を広く膨らませたいと思っていました。
　興味を示した不思議な少女は、新しい魔法となり得る何かを持っているのです。
　それを知ってか知らずか、笑わない魔女は、不思議な少女を夜の世界の冒険に連れ出すことにしました。
　
　後ろを振り返った愛唯は、そっと手を差し伸べ、瑠奈を夜の世界の冒険に誘う。
（行きましょう、瑠奈ちゃん）
　無表情を保っているが、愛唯の目はそう言っているように見える。
（うん、行こう）
　差し伸べられた手を取り、瑠奈は笑顔で誘いに応じる。

　不思議な少女は、夜の外のすべてが新鮮で、とても素晴らしい世界に思えてきた。
　楽しい気分になってきたので、上機嫌で歌って踊る。

　不思議な少女が笑顔で急に踊り出したので、笑わない魔女は困惑しました。
　
　困惑したのは、何が楽しいのだろうと思ったからだ。
　その名のとおり、笑わない魔女は決して笑わないから。
　笑顔が絶えない不思議な少女に惹かれ外の世界に飛び出したはずだったが、いつの間にか彼女の手を引き、笑わない魔女も踊り出す。

　ふわん。ふわん。ふわんと。
　ぱたぱた、ぱたぱた、ぱたぱたと。

　不思議な少女が踊り続けているのを見て、笑わない魔女は思いました。
　笑うというのも、新しい魔法になるかもと。
　だから笑わない魔女は、不思議な少女に手を引かれてついていくのでした。

　二人はキャットウォークの上で、素敵なダンスを踊る。その間、瑠奈は笑顔を絶やさない。

　不思議な少女は、この夜を作ってくれた笑わない魔女に感謝しながら特別な夜を目いっぱい楽しんでいます。

　笑うということは新しい魔法になるかも。
　笑わない魔女は、『笑顔の魔法』が作れるかもしれないと思いました。
　魔法が完成したら、不思議な少女の目の前で使ってみようと決めました。
　不思議な少女がどのような表情をするのか。それも楽しみになってきました。

　役どころのため終始笑わない愛唯だったが最後にはける直前に、ほんの少しだけ、ふっと笑顔を漏らす。
　それを見て、瑠奈は楽しんでくれたみたいと思い安心した。
　ふわん。ふわん。ふわんと。
　ぱたぱた、ぱたぱた、ぱたぱたと。
　キャットウォークを歩いたり踊ったりして、二人は退場した。