【創立記念】マスカレード☆トリエンナーレ！｜リアクション

【創立記念】マスカレード☆トリエンナーレ！

●魅惑的異文化仮装

　鏨紫の仮装は、全身に包帯を巻いたモンスター、マミーを真似しつつ艶やかにしたものだ。
　あやかしなのかはよく分からないので急遽用意してくれた旅鴉月詠にどのようなものかと尋ねたら、亡骸が歩いているようなあやかしらしきものだと聞いた。
（それは、僕たちの暮らす霊界では日常のような気がするけれど）
　出番です、と実行委員が紫にキャットウォークに行くように言う。
「とりあえず、皆の前を順番に歩いてみせれば良いんだね？」

　紫が登場すると古代エジプト音楽が流れ、金色のスポットライトが当たる。
　迷いなく歩みを進め、奥の広くなった場所でくるりと回って観客に全身をお披露目。
　着崩れた和服。
　包帯を布を胸から腰にかけて巻いたスケベティックインナースタイルは、セクシーさを醸し出している。
　頭の角は、あやかしらしさを強調すべく隠さず。
　自身の姿が観客に良く見えるような位置に移動し、しゃがんでセクシーポーズを。

　

僕の仮装はマミーなんだけど、どうだい？　似合うかい？

　大柄な色黒女性の大胆なマミー姿は、観客の視線を釘付け。
　そう言うと、衣装アピールとして勢いで尻尾のような長い後ろ髪をたなびかせながら即興の舞を気紛れに披露する。
　その舞は、モンスターとしてのマミーの印象を変えるほど魅惑的だった。
「舞、見てくれてありがとう。楽しんでもらえたなら嬉しいな」
　観客に礼を言い、颯爽と歩いて舞台袖に戻る。
（一通り歩いてみてもよく分かっていないけれど、何だか面白いね……？）
　聞けば、このお祭りに限らずとも、着こなしを披露しあう催しがあるのだとか。
　それを聞いた紫は、ちょっと興味が湧いた。
「霊界でもファッションショー？　なるものができるといいな」
　違う自分に変身する楽しさを知ったことは、とても新鮮で良い経験だった。

●貴婦人と小さな魔法少女

「ちょっと盛りすぎて頭が重いですわ」
　

　ハロウィン（には早いが）ということで、アイオ・キャンドライトのテーマは薔薇の貴婦人。
　赤い薔薇の髪飾りと黒いマントは、魔女のような妖しい雰囲気を漂わせている。
　MewTubeの配信もあってこういうところには慣れているので、堂々と出番を待つ。
　紫の次は光村千恵の出番だが、すごく緊張しているようだ。
（小学生くらいの女の子が一人で歩くのは、とても心細いでしょう）
　千恵の緊張をほぐすべく、一緒に歩こうと決めた。
「可愛い魔法少女さん、良かったら一緒に歩きませんか？」
「……お姉さん、だぁれ？」
「アイオはMewtuberのあいお（姉）ですわ。緊張しなくても大丈夫。皆、楽しみにしてくれていますわ」
　安心させようと会話を続けるが、千恵はまだ緊張している。
「ちょっとぐらい失敗しても誰も怒ったり責めたりはしませんよ。アイオがフォローしますから、思いっきりアピールして歩きましょう！」
　お手をどうぞと手を差し伸べ、千恵を優雅にエスコートする姿はまさに貴婦人。
　楽しい気分でいきましょう、と二人でスキップしながらキャットウォークを歩く。
（隣を歩いてもおかしくないようにしなきゃ。鏡で確認したし平気よね）
　夢心地でキャットウォークの中央に辿り着いた千恵の隣には、ウィンクするアイオがいる。
（アイオさん、私、頑張る！）
　魔法のステッキを高く掲げ一回転させた後、勇ましく決めポーズ。

魔法少女チェナよ！　悪のにゃんこは私がこらしめてやるんだから……！

　少し緊張した可愛らしい笑顔でビシッ！　と決め台詞を。
（こ、こんな感じかな？　今まで見た魔法少女ものの知識をフル動員したんだけど……大丈夫だよね……？）
　決めセリフだが、即座に口走ったものだった。
「良く頑張りましたわ、チェナ」
　アイオは千恵の肩をポンと叩くと自己アピールを始めた。

　キャンモーニン！　Mewtuberのあいお（姉）ですわ。
　今日は何故か、マスカレード☆トリエンナーレに出場することになったので来ちゃったのですわ。
　そしてこちらが……今日のパートナーの可愛い魔法少女さんです！　みんな拍手ー！

　貴婦人と魔法少女登場という演出に、観客は盛大な拍手を送った。