【創立記念】マスカレード☆トリエンナーレ！｜リアクション

【創立記念】マスカレード☆トリエンナーレ！

●問題発生

　万条幸次の仮装を見た鏨紫は、この世、或いは常ならざる者の格好をということであれこれ見繕ってもらっていたのは良いのだが、気持ち縮んだとはいえ彼女の背丈は七尺（約230センチ）ほどだ。
　男性用の特大サイズは用意してあるが、２メートル超の女性出場者がいるのは想定外だったので紫に合うサイズの衣装は残念ながらなかった。
　元の八尺（約260センチ）余りの大きさでも、衣の用意が無いのは同じだったかもしれないね）
　胸に巻いているさらしをチラリと見て、包帯を下着代わりにして四肢や胴に巻いたりして仮装できないだろうかとふと思った。
　そういう仮装でも大丈夫だろうかと不安だったので、近くを通りがかった旅鴉月詠に、この衣装は大丈夫かと尋ねた。
「そういった仮装もアリだよ。大事な部分が隠れていれば問題ないだろうし」
「それを聞いて安心したよ。急で申し訳ないが、仕立ててもらえるかい？」
　長い布ならばそんなに時間はかからないということで、月詠は実行委員に協力してもらい急いで紫の衣装を仕立て始めた。
　布を縫い合わせるだけなので、さほど時間はかからなかった。
「できたよ。これで大丈夫かな？」
「助かったよ。急なお願い、きいてくれてありがとう」
　着替えは自分でするから後はいいよ、と紫は布を持って簡易更衣室へ。
　胸に布を巻きつけながら、普段と異なる自分を見て違うモノに変身できたという実感が湧いてきた。

　トリエンナーレ出場者が着替えやメイクといった準備をしている頃。
　アイドル活動研究部部長の喜矢武あいおは、ライブで部をアピールしようと部員達と張り切って準備をしている。
　花咲夢乃はステージ衣装、音響、照明等を総合的に担当。
　衣装や音響のチェック、照明の位置確認を部員に指示しつつ、自身もライブ成功に向けて動き回る。
　着々と進む準備に、あいおはどれくらい観客が来るのか楽しみにしていたのだが、この段階である問題に気付いた。
（トリエンナーレが始まったら、皆そっちを見に行ってしまうのではないでしょうかぁ！？）
　マスカレード☆トリエンナーレは感謝祭の目玉だ。多くの観客が集うに違いない。
　その時間帯に行えば、観客は少ないのは間違いないだろう。
　ということで、トリエンナーレが行われる講堂の入り口に特設ステージを急遽設置した。
　衣装や照明といった道具一式を運んで移動するのは大変だったが、これも集客のため。
　あいおや夢乃が率先して、アイドル活動研究部員達は急ピッチでステージを設置する。
　ステージといっても畳一畳分の小さな台だが、それでもステージには変わりない。
「夢乃、立て看板の設置をお願いします」
「既に設置済みですわ」
　撮影OK!　ねこったーハッシュタグ #寝子高アイ活研！と立て看板に書いてある。

　夢乃はアイドル研究活動部のステージが一番なので、成功させるため精一杯セッティングをしたり、ライブ観客を集めたいと誰よりも頑張っている。
　野々ののこに出場おめでとうカードを渡されたらどうしましょう？　と思ったりもしたが、それはなかったので安心した。
「そうだ、アンケート用紙を設置して感想を書いてもらいましょう」
　観客の意見、感想を今後の活動の参考にしたいので、これも設置。
　裏方として活動する夢乃は、ステージに上がりたいとは思っていない。
　準備の合間に仮面をつけてみたら、ちょっと仮装をしてみたくなってきた。
　仮面をつけた姿を部員に見られたが、誰も彼女とはは気づいていないようだった。
　裏方なので注目されていない、というのもあるだろうが。
　部員達の頑張りもあり、特設ステージは無事、設置完了。あとは観客を待つのみ。
「あいおちゃん、ライブ頑張りましょう☆」
「頑張りますよぉ。夢乃、裏方の仕事、お願いします」
「任せて」
　トリエンナーレで仮面をつけるということなので、あいおは白地に青色の和風猫お面をつけて待機。