猫鳴館、自治会長選任戦1371～ボロボロボをぶっ壊せ！｜リアクション

猫鳴館、自治会長選任戦1371～ボロボロボをぶっ壊せ！

●幕間：座敷童子がんばる

　士のお使いは済んだはずの雨崎荒太郎が廊下を走っている。
「寮の防犯装置を作動させてロボを罠にかけるっきゃないー！」
　猫鳴館には防犯モードという名の、かつて住人たちが仕掛けた館内トラップが存在する。ふだんＯＦＦになっているそれをＯＮにしようというのである。スイッチは管理室の館内放送設備の中にこっそり仕込まれたままだった。荒太郎はそれをＯＮにしてまた廊下を駆けた。トラップはほとんど壊れていることは知っていたが、生きているトラップもなくはない。しかしながら、防犯モードを前に起動したのは２年近く前。生きているトラップの場所を荒太郎の記憶は教えてはくれなかった。
「いそげいそげ。つかさくんのところに戻らな……きゃっ！！」
　ズズン……ッ。どこか遠くで地響きがした。
　何ごとかと立ち止まった瞬間、急に床に穴が開いて下から棒のようなものがびゅんっと飛び出してくる。
　折れたセンターマイクのポールだ！
　危険なそいつは荒太郎の急所に見事にヒット！
「ぎゃーす！！！！！」
　うずくまった荒太郎の悲痛な叫びが館内に響き渡る。
「どうした、大丈夫かい？」
　悲鳴を聞いて飛んできたのは、桜花寮から応援に来たアシュリー・アンダーソンであった。
　彼女は荒太郎の首根っこを引っ掴んで罠の近くから助け出す。
「ううう、防犯装置に自分もはまったがんすー」
「ロボだけじゃなく、防犯装置？　猫鳴館ってどうなってるんだ？」
　聞けばアシュリーも士を応援するつもりだという。ならば仲間だ。荒太郎は巨大ロボに対抗しようと防犯モードを起動したことを、痛みを堪えてアシュリーに話した。
「そうだ、地下帝国にひきずりこもうそうしよう。きっと地下温泉の狭さと湿気で、動きがわるくなりがんす」
「ちょっと待って。地下帝国って猫鳴館の真下に繋がってるんだろ？　防犯装置に引っかかったり、地下に嵌められるほどロボに接近されちまったら、その時点で猫鳴館は被害を免れないんじゃないかい？」
「！！！」
　アシュリーの考察に、荒太郎は目を見開く。
「な、なんてことだ、そのことを見落としていたよー」
「あたしは猫鳴館を押しつぶす形になるのは絶対に避けたい。可能な限り、猫鳴館の方向以外に倒れるよう仕向けたいんだ。狙うは猫鳴館ノーダメコース。そのために協力するよ」

　ピーポーピーポー、と救急車めいた歌を歌いながら胸元がハート型にくりぬかれたミニスカナース服をビシっと着用した大江戸マンモスが到着した。
「けが人はこちらでやがりますかね！」
　マンモスはしゃがみ込んでいた荒太郎をひょいっと背負う。
　小柄な割にパワフル。しかもセクシーなので荒太郎は赤くなって大慌てだ。
「わわわっ、一人で歩けるよー」
「先輩、どうぞ遠慮なく。手当てとか結構得意なんで！　痛いところはどこですか？　なでなでして、痛いところ飛んでけーってやって差し上げますよ」
「うわーっ。それは結構ですー！」
　荒太郎はしたたかに打ち据えられた大事なところをきゅっと抑える。
　アシュリーは苦笑いせずにはいられない。
「あたしは防犯モードを切ってくる。――先輩、あとで邪衣チームのところに案内してほしい。力仕事なら、任せとくれ」