【球技大会】思い出に残る初夏の大会へ｜リアクション

【球技大会】思い出に残る初夏の大会へ

　急なシフトの変更で今日のアルバイトは休みとなった。スマートフォンで知った梓智依子はのんびりと帰り支度を始める。
　そこにクラスの女子が詰め掛けてきた。一様に笑顔で、どこか期待に満ちたような目をしていた。
「どうかした？」
「智依子さん、バスケしよう！」
「私達と一緒にバスケをしようよ！」
「お願い、助けると思ってバスケをして！」
　口々に智依子を誘う。冗談めかしたところは一切なく、皆が真剣に頼み込む。
「身長があるから？」
「それもあるけど、やっぱり新歓祭のパフォーマンスが凄くて。皆もそうだよね？」
「そうそう、あの片手でグルグル回るのを見て感動しちゃった」
「その前のステップも最高だったよ」
　熱烈なファンのような状態に智依子は口元を緩めた。
「そこまで言うのなら私もバスケで参加するわ」
「ありがとう！」
「一緒に頑張ろうね」
　軽く頷いて智依子は教室を出た。

　旧市街にある祖父母の家に帰ると、娘の楓が走って出迎えた。
「おかえりー」
「ただいま」
　微笑んで楓を抱き締める。
「良い子にしてた？」
「してた！　ごはんもちゃんとたべたよ！」
「そう、良い子ね」
　楓の柔らかい髪を撫でる。せがむように頭を押し付けてきた。
「学校の大会でバスケットボールをすることになったよ」
「かえで、みにいく！」
「わかるかなー」
「わかるもん！」
　小さな身体を頻りに振る。短い腕を思いっきり伸ばして抱き付いてきた。智依子は幸福に満ちた顔で受け止めた。
「わかったわ。おじいちゃんやおばあちゃんと一緒に見に来てね」
　抱き締めたまま、愛おしさを込めて頭を撫でた。