【球技大会】思い出に残る初夏の大会へ｜リアクション

【球技大会】思い出に残る初夏の大会へ

　三時限目の休み時間、廊下を歩いていた夏風遥は不意に呼び止められた。
　長い黒髪を振るようにして後ろを振り返る。担任の久保田美和が一つ結びの髪を振って明るい表情で手を挙げた。
「遥ちゃん、今だいじょうぶ？」
「はい、平気です。私に何か？」
「球技大会が近づいてきて、委員会の人達は何かと忙しくしているよね」
「わかりました！　私も運営に携わって大会を全面的にサポートすればいいんですね！」
　遥は一歩を踏み出して拳を握る。水色の瞳は熱意で揺らめく。
「えっと、そんな大げさな話ではなくて、クラスの皆を上手く纏めてくれると嬉しいかな」
「そうですね！　私に任せてください！　クラスの中心になって全力で支えて大会を成功に導きます！　友達もわんさかですよね！」
　荒い鼻息で親指を立てる。
「期待しているから」
「はい、では！」
　高速で踵を返し、腕を高らかに振って教室に戻る。扉の前に立つと神妙な顔になった。
　――私は去年、転校してきて友達が少ないから先生、気を遣ってくれたのかも。
　力強い笑みとなり、勢いよく扉を開けた。
「皆、球技大会に関係することで何か困ったことがあったら私に言ってね！　なんでも極力するから！」
「それなら、その、バスケの練習相手にも、なってくれる？」
　一人の女子が小声で言った。
　遥は白い歯を見せて笑うと自身の胸を叩いた。
「任せてよ。私も大会ではバスケだから、よろしくね」
「こちらこそ」
「わたしも一緒に練習してもいい？」
「じゃあ、私も」
　次々と声が挙がる。遥は全ての声を受け止めるように両腕を開いた。
「もちろんだよ！」
　教室は一気に活気づいた。