【球技大会】思い出に残る初夏の大会へ｜リアクション

【球技大会】思い出に残る初夏の大会へ

　青山絢は体操服姿で自分の席に着いていた。
「まだよね」
　言いながら席を立ち、軽く伸びをした。手をブラブラと振って歩き出す。じっとしていられないという風に左右の肩を回す。
　教室の扉を開けて廊下に出た。
「青山さーん、サッカーをお願いしたいんだけど！」
　横手からの突然の声だった。顔を向けると同じクラスの女子が走ってきた。
「え、私？　サッカーだけど」
「球技じゃなくて、ちょっとごめん」
　数回の深呼吸で息を整える。
「サッカーを実況することになっていた放送部員が、体調不良で出来なくなって、その代役を青山さんに頼みたいんだけど」
「私が！？　でも、どうして？」
「ほら、新歓祭の司会役が見事で皆も実況は青山さんにって、ダメかな？」
　上目遣いになって手を合わせる。この通り、と頭も下げた。
　絢は思い悩むような表情を崩した。
「引き受けるわ」
「ありがとう！」
「あ、一つ聞いてもいい？」
「いいけど、どんなこと？」
　周囲を気にした絢は耳元で囁く。
「実況でバニースーツを着ることはないよね？」
「ないよー。ひょっとして着たいの？」
　逆に聞かれた絢は頬を赤くして否定した。
「それじゃあ、よろしく。まだ準備が残っているから」
　小躍りするように戻っていく。
　にこやかな顔で見送った絢は溜息を吐いた。
「また、なのね」
　苦笑に近い笑みで言った。