【球技大会】思い出に残る初夏の大会へ｜リアクション

【球技大会】思い出に残る初夏の大会へ

球技大会（当日、最終日）
　当日は雲一つない晴天となった。通学路には寝子島高校の生徒が溢れ、球技大会の話題で持ち切りとなった。
　話の輪に入らず、月原想花は俯いた姿で歩く。
「……どうして、晴れるんだよ……台風がくればいいのに……」
　不穏な声に周囲の目が想花に集まる。本人は全く気付いていない様子で独り言を続けた。
「地震でも……体調不良を期待したのに……こんな時は健康なんだよね……」
「あの子、何だろう？」
　二人組の女子の一人が想花を見て呟く。
「見たことあるかも。同じ一年で、確か四組だったかな」
「そうなんだ」
　二人組の女子は少し近づいて聞き耳を立てる。
「……誰か、ぼくを轢いてくれないかな。車だと痛いから、自転車とかで……」
「自転車でも痛いでしょ」
　その声は大きく、想花は我に返る。慌てて手で口を押える。二人組の女子は視線を逸らしたが遅かった。
　顔を真っ赤にした想花は走り出す。
「もう、何度目だよ……こんなんだから、ぼくはヘンな奴だと思われるし、親にも嫌われるんだよ……」
　その愚痴も先程と同じ独り言であった。