【新入生歓迎会】情熱のイッサイガッサイ新歓祭｜リアクション

【新入生歓迎会】情熱のイッサイガッサイ新歓祭

　講堂内は生徒と訪れた人々でぎっしりと埋まった。その中、開会式が行われ、先程、滞りなく終わった。
　ここからが本番。生徒と人々の期待の高さでざわつく。舞台袖の奥まで届き、司会進行役の青山絢の表情を見る間に硬化させた。両手で握るマイクが小刻みに震えている。
　――恥ずかしがってどうするのよ。女優になればいろんな役をやることになる。バニーガールになることだって、あるかもしれないのよ。演技だと思ってやれば、できるはず。
「……私はバニーガール……そういう役……そう、私は……バニーガールよ！」
　スイッチが入った。不安や恐れは吹き飛んだ。溌溂とした表情で舞台袖から出ていく。
　どよめきと声援を全身に浴びる。
　半ばで折れたウサギの白い耳が愛らしい。服装は逆に妖艶で肩紐のない黒い競泳水着のように肌の露出が多かった。素足よりも艶めかしい、薄くて黒いオーバーニーソックスには若者を中心に興奮が高まる。
　野々ののこは頭頂の毛を激しく揺らして反応した。
「英二くん、ほら、見て！　ウサちゃんだよ！」
「うん、そうだね。でも、あまりじっくり見ると悪いかな」
　佐藤英二は視線を落とした姿で拍手をする。
「え、どうして？　可愛いよ。もっとちゃんと見た方が嬉しいと思うよ」
「そうかもしれないけど、僕としては野々さんの手前、それは少し苦しい選択であって」
「ウサちゃん、可愛いよー！」
　英二の苦悩を他所にののこは笑顔で手を叩いた。
　ステージ上の絢に動揺した様子は見られない。踵の高い靴を堂々と履きこなし、ステージの中央に向かう。マイクスタンドの前で止まるとウインクをした。
　八神修はステージの手前にしゃがんで何枚もカメラに収めた。
「……使いどころが難しいが」
　そのような呟きを残し、素早く移動。パフォーマンスの全体が映る場所を拠点と定め、目立たないように待機した。
　恵御納夏夜はステージを見ないで後ろを気にした。
「夏朝は……」
　出入口に目を注ぐ。祈るような表情が一瞬で笑顔に変わった。
　恵御納夏朝と犬杜初が同時に飛び込んできた。
　夏夜は声を出さないで手を挙げた。気付いた二人は身を低くして合流を果たす。
「間に合わないかと思った」
「夏夜ちゃん、ごめんね」
「三人でパフォーマンスを観られるから、ういは満足だよ」
　初はツインテールを結び直し、すっきりした表情を見せた。
　場が盛り上げたところで絢は右手にマイクを握り、左手を高々と上げた。
「これより、新入生歓迎会の開幕です！　素晴らしいパフォーマンスを存分にお楽しみください！」
　割れんばかりの拍手と歓声を身に受ける。絢は眩しい笑顔で手を振り、ちらりと舞台袖に目を見やる。最初のパフォーマーが緊張した面持ちで待機していた。
　絢は時間を稼ぐようにコツコツと足音を響かせて、ゆっくりと歩く。得られた時間のおかげで相手の覚悟が決まったのか。引き締まった表情となった。
「大丈夫よ」
　端に到達した絢が声を掛けると、はい、と小さな声が返ってきた。
　その様子に目を細め、司会進行役の務めを果たす。
「最初は新入生によるパフォーマンスになります。初々しい姿に温かい拍手をお願いします」
　盛大な拍手の中、小柄なパフォーマーは勢いよくステージに飛び出していった。