希望＜ネガイ＞が現実＜ホント＞になるところ。それがらっかみ！｜リアクション

希望＜ネガイ＞が現実＜ホント＞になるところ。それがらっかみ！

　夕刻、エロ・イーアールオーは街中のベンチに一人で座っていた。漆黒のキャミソールドレスのスカートは短く、通り掛かった者の目を引き寄せる。
　本人は全く気にしていない。瞼を閉じて安らかな寝息を立てている。風が吹いても目を覚ますことはなく、ふわふわの長い黒髪が白い肌を優しく包み込む。
　その中、寝子島は混乱を極めた。夕陽で空が赤いだけではない。実際に建物が燃えていた。大火によって空の赤さが増した。
　暴徒と化した人々が欲望の限りを尽くす。その騒動によるのか。エロはすっきりと目覚めた。
「よく眠れたのですー」
　斜め前で少年が叫んだ。
「俺をイジメた奴らを許さない！　ホッキョクグマになってやっつけてやる！」
　少年の着ていた服がビリビリに破れた。膨張した身体は瞬く間に白い毛に覆われた。怒りに任せて吠えると四つん這で走り出した。
「変身したのですー」
　近くには少女がいた。空をきっと睨むと声を張り上げた。
「私は大鷲になって空を自由に飛び回りたい！」
　着ていた衣類は引き千切られ、大鷲の姿に変化した。大きく羽ばたくと天空の彼方に消えていった。
「すごいのですー。エロも真似をするのですー」
　間延びした声でぴょんぴょんと跳ねる。
「エロは破壊神なのですー。全てはエロに滅ぼされるのですー。多元宇宙も無にするのですー」
　その無邪気で恐ろしい願望に周囲の人々は逃げ出した。
「巨大化なのですー」
　着ていた服も同様に大きくなる。頭頂が雲を突き抜けた。見下ろすと寝子島は足の裏のサイズよりも小さくなっていた。
「寝子島をプチッとするのです」
　右の太腿を上げて標的に狙いを定め、一気に下ろす。島全体が砕けて海中に沈んだ。
「まだまだ大きくなるのですー。次は日本をおっぱいプレスなのですー」
　巨大な膨らみが日本を直撃。粉砕して海の藻屑にした。
「エロのおっぱいは無敵なのですー」
　ふくよかな胸を自慢するように背筋を伸ばす。その状態で巨大化して宇宙へ飛び出した。丸い地球がソフトボールくらいの大きさに見える。
　エロは胸の谷間に地球を挟み込んだ。
「押し潰すのです」
　飛び出た胸の側面に掌を当てて同時に押した。地球は呆気なく砕け散った。太陽と月を掌で叩き落として尚も巨大化を進める。
　銀河系を綿菓子として食べた。
「じゃりじゃりして美味しくないのですー」
　他の銀河に目が向く。突き出した臀部で壊滅させた。吹き掛ける息で数万の惑星を吹き飛ばす。
　宇宙の果てに届いたところで適当に手足を動かした。全ての法則が乱れて別の次元が入り混ざる。
「破壊するものが増えて困るのです」
　あどけない破壊神は、うーん、と声を出して考え始めた。無表情で頭を左右に振ると幾つかの銀河が余波で消滅した。
「エロは究極を超越した美少女なので、その神々しい色香を放って魅了してー、全てをピンク色に焼き尽くすのですー」
　エロは長い黒髪を両手で掻き上げてうなじを見せると、上体を真横に傾けてポーズを決める。
「あっはーんなのですー」
　全身が鮮やかなピンクに包まれ、光速を超えた速さで拡散した。星々はピンクに染まり、宇宙は音もなく燃えた。

　エロは破壊の限りを尽くした。
　翌朝、全てが元に戻った寝子島でアイスクリームを食べている姿が目撃された。
「春の新作のアイスクリームが美味しいのですー」
　破壊神の片鱗はなく、エロは食べ歩きを楽しんだ。