今日も愛すべき『フツウ』の日。｜リアクション

今日も愛すべき『フツウ』の日。

　梅雨にも負けず、横風にも負けず、レインコートを着込んで、風雲児轟は今日も寝子島を走る。
　こうしてトレーニングをしながら、日々、島の平和を確認しているらしい。
（皆、雨で外出する事はないから何も起こらないとは思うが……
　だけどこういう日だからこそ何かあるかも知れないからな！）
　周囲に意識を向けながら、風雲児は走る。
　寝子島総合病院の橋の近くに差し掛かったとき、風雲児は足を止めた。
（こんな天気だから水辺にはあまり近づかない方が……）
　進路を変えようとして、考え込む。
（いや、もしかしたら水辺で遊んでる子供とかがいたら大変だ。一応見てまわろう）
　この天気で流されればあっという間だ。
　風雲児は川に沿ってパトロールをすることにした。
　すると、フラフラと歩いている人影を見つける。
（子どもではないが……）
　すぐさま近寄っていった。
（クマ？……違う）
　それは傘をさして、クマの毛皮をかぶった男。邪衣士だった。
（……たぶん、大丈夫、だよな？）
　どこを目指しているのか見当もつかなかったが、足取りはしっかりしている。
　問題ないだろうとそのまま通り過ぎた。
（最近はろっこん絡みの事件が起きてる。それに突然巻き込まれるかもしれない。
　そんな危険から一人でも多くの人を守る。そのためにもっと鍛えないと！
　ろっこんだって、いつ使えなくなるかわからない。
　そのときにろっこんがないからなんて言い訳するわけにはいかないんだ。
　後で後悔しないように。
　守りたい時に大切なものを守れるように！）
　熱い思いを胸に、風雲児は走る。
（ま、何もないならそれでいいんだがな）
　やっぱり平和が一番！
　風雲児は走る。

「あのお揚げ、ください」
　花風ももは夕飯の買い物のため西野町とうふ店に立ち寄った。
（親子、かな？）
　応対をしてくれた西野町圭吾とその娘を、花風は眩しそうに見つめる。
　それから魚屋『魚新』で陽気な店主に怯えつつ、ちくわとお魚を買う。
（雨だからかな……少し肌寒いわ）
　ギュッとブレザーの袖を握って、花風は家路についた。