今日も愛すべき『フツウ』の日。｜リアクション

今日も愛すべき『フツウ』の日。

「いらっしゃいませ」
　ＢＡＲ　エルデスト。
　バーテンダーの檜山立樹が鳳翔皐月を迎え入れた。
「スコッチをロックで」
「かしこまりました」
　鳳翔はカウンター席に腰掛けて、見慣れぬ客を見つける。
（……変わった客だな）
　カウンター席の端で、表情一つ変えず酒を飲む女。
　オーマ・トンノ。
　その土地を知るには酒の場。そう思って訪れたのだが、これといった収穫もなく酒を飲んでいた。
　鳳翔はすぐに興味を失い、タバコをふかす。
　檜山はオーマと昼間すれ違ったことに気がついていたが、そのことには触れず、氷をくだいて酒を注いだ。
「これ、試作品なんです。よろしければ召し上がってください」酒とともに、洒落たクラッカーを差し出す。
「ああ、ありがたく貰う」
　ツマミに最適だ。鳳翔は一口頬張って、酒を仰いだ。

「あらぁこんな時間に……いらっしゃいませ」
　深夜、こっそり店を営業していた常闇虚のもとに、刻人・F・ミセリアがやってきた。
「あれ？　開いてたんですね」
　間違えたというようにあっけらかんと刻人は笑う。
「おお、これ人形ですか。お客さんかと思いました」
　店内のドールたちを見て刻人は目を丸くした。
「ふふ、よくできてるでしょう？」
　常闇は嬉しそうに笑って、すっとソファーを指差す。
「そう、ところで紅茶はいかがかしら？」
　常闇は誰かれ構わず紅茶をすすめるわけではない。
　たとえば商談が長くなる場合。
　あるいは――
「味には自信があるわよ？」
　暗い香りがする人間に対して。
「すみません。今日は時間がないから、失礼しますね」
　刻人は申し訳なさそうな顔をして、店を出て行った。
「では、また機会があれば」
「……また、ね」
　常闇はうっすらと微笑んでいる。

　夜が更け、寝子島の灯りが消えていく。ごくごく『フツウ』の一日の終わりを告げる。
　けれどなにもない一日などなく、今日も数多の小さな『事件』が起こった。
　それは出会いであり、葛藤であり、幸福であり、不幸であった。
　それぞれの『フツウ』。
　きっと明日も、明後日も繰り返されるのだろう。

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あとがき

担当マスター：つるこ。
ファンレターはマスターページから！

ご参加くださった皆様、ありがとうございました。
これといった事件のないリアクションですが、皆様の日常にほんの少しでも近づけたらと書かせていただきました。
食べ物がたくさん出てきたのは個人的に幸せでした。そらまめそらまめ！
そんなことはさておき、皆様からいただいたアクションをまとめて、リアクションに起こしていると、本当に自分の未熟さが身にしみます。
だらだらと長くなってしまったり、逆に描写しきれない箇所があったりと至らない点も目につくかもしれません。
それでも文字数と技量と時間とが許す限り、精一杯描かせていただきました。
何卒、ご容赦ください。
細かい点につきましては個別コメントで失礼します。
今回も謝罪満載です。ごめんなさい。
叱咤激励、喜んで受け止めさせていただきますので、気軽にコメントをいただけると幸いです。

また、シリーズ登録は致しませんが、時間が進んで季節が変わった際に、同じようなものを出させていただくかもしれません。
その際はまた違った顔ぶれになるかとは思いますが、よろしくお願いいたします。

それでは、ありがとうございました。

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