【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――｜リアクション

【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――

　忌々しいという顔付きで椎井莉鳥は目を覚ます。上体を起こしたあと、暗い顔で深く考え込むかのように動きを止めた。
　大きな息を吐いた。気だるげに立ち上がると制服に着替えた。ショートの髪を手でとかし、適当に纏めた。
　部屋を出る間際、またしても溜息が漏れた。

　がらんとした薄暗い部屋で北里雅樹は身支度を整える。
「行くか」
　枯草のような色の畳を歩き、薄汚れた靴を履いた。建付けの悪い扉をこじ開けて仄暗い廊下に出た。軋む床を歩き、陥没したところを避けて外に向かう。
　誰の見送りもなく、鬱蒼とした木々の中の悪路を下ってゆく。何とはなしに腹を撫でた。
　――食いだめに成功したな。
　眠たげな顔で薄っすらと笑みを作る。
　道路に突き当たって左に曲がった、瞬間、茂みに飛び込んだ。
　――気付かれてはいないようだ。
　前方をゆく莉鳥の背中を黙って見つめる。西門に向かう時、横顔が露になった。不機嫌そのものであった。いつにも増して目付きが鋭い。
　姿が見えなくなってもすぐには動き出せない。苦笑いで髪を掻いて西門に向かう。
　――意識し過ぎだ。
　首筋を摩りながらのろのろ歩いた。