星ヶ丘寮の一室で
旅鴉 月詠が絵筆を振るう。遠目に眺めては細かく修正。時には大胆な変更を加えた。
「盛大に見送ろうではないか」
表情から真意は読み取れない。何かしらの決意を滲ませた。白衣に飛び散る絵具を気に掛けることなく、作業を進めていった。
夜を迎えた桜花寮の一室。
恵御納 夏朝は机に向かっていた。ノートを開き、思い付いたことをペンで書き留めていく。
『送る会ですること。演劇部の出し物。パペット劇。独唱。友達と協力。演奏は』
ペンを止めて顔を上げる。薄目となって上体を前後に動かす。
名案が浮かんだのか。笑顔で新たな候補を書き込んだ。
朝の登校時間のピークとなった。寝子島高校の生徒達は続々と正門を通り抜ける。
呉井 陽太は東門に向かう途中で足を止めた。オレンジがかった金色の髪を掻き上げて桜を見上げる。白い花がちらほらと咲き、大半は膨らんだ蕾の状態だった。
眼鏡の奥の糸目が僅かに開いた。まだ早いかぁ、と呟いた。
表情の変化は短く、いつもと変わらない笑みで歩いていった。
ベッドで横向きに寝ていた
花風 冴来が目を覚ます。部屋は薄暗い。近くの時計を見ると午前五時と数分。
「どうして」
口にして、ああ、と微かな声を出した。
「今日は卒業式」
青い瞳を再び閉じる。少し拗ねたように唇を尖らせた。その姿で白狼の縫いぐるみ、
ルクスに手を伸ばし、胸に抱きしめた。
「……私、卒業生なんだけど、どうしたらいい?」
弱々しい声は少し震えていた。
青く澄み渡った空にそれぞれの想いが――。
今回は中身の濃い卒業式になりました。嬉しいことに送る会と卒業式は晴天に恵まれました。
寝子校に残る生徒は青い空に気持ちを新たにして、新学期を迎えることでしょう。
卒業生は想い出を胸いっぱいに詰め込んで大きな一歩を踏み出します。
華やかでいて、少し別れが胸に切ない、卒業式シナリオの始まりです。
概要
寝子高の卒業式とそれを取り巻くあれこれを描く日常フリーシナリオです。
卒業式の前日に卒業生を送る会が行われます。
そして翌日、卒業式が行われます。
このシナリオでは、その2つの行事について描くことが中心になりますが、
少しでも卒業に関連していれば、卒業式の数日前から当日の夜いっぱいまで、なんでも自由です。
舞台も寝子高に限らず、アクション次第ではまったく異なる地でも構いません。
卒業して会えなくなる前にあの子に告白したり、ライバル関係のあいつと裏山で最後の決闘をしたり、
式の直後に第2ボタンの壮絶な奪い合いが発生したり、ほしびとがこっそりまぎれこんで見学したり、
事情があって卒業式に出られず海外にいたり、卒業生のことを想いながら会社で仕事をしていたり……
なんでもアリです。
ただ、アクションはアレもコレもではなく、1~2つに絞った方が充実した内容になると思います。
また、卒業記念で最後に友達と旅をする、いわゆる「卒業旅行」については他のシナリオでどうぞ。
ところで、春ですね。神魂による「感傷ウィンド」が吹いています。
ちょっとしたことで3年間の高校生活を思い出したり、卒業後の別れを強く意識したりして、
妙に感傷的になってしまうことがあるようです(必要であればアクションに書き添えてください)。
卒業生を送る会について
場所は講堂で、立食パーティー形式です。
出し物が行われたり、ゲームをしたりする楽しい会です。
有志によって少し前から実行委員会が立ち上げられます。
我こそはという方は、自由に実行委員を名乗って行動することができます。
実行委員長をご希望の方は、コメントページで宣言してください。複数いたら共同委員長です。
昨年は生徒たち(プレイヤーさん)がテーマを決めて、会の内容も決めてくれました。
今年はやりたいことや記念品のアイデアなどをコメントページに書いておけば、
余程のことがない限り、採用されてリアクションで描写されます。
なお、会の終了後は翌日の卒業式のために片付けと会場の準備も必要です。
特にアクションは必要ありませんが、こういう場面こそ学校生活を満喫できるかもしれません。ご自由にどうぞ。
卒業式について
卒業式には1、2年生の在校生も出席し、卒業生を送ります。
一般的な卒業式と同じですが、少し寝子高ならではの特徴があります。
※以下ご説明しますが、アクションで取り扱いがなければ描写もありません。
描いてほしいと思うところだけ、ご自由にアクションのネタとしてお使いください。
在校生と卒業生がそれぞれ送辞と答辞を行います。
寝子高ですからスピーチに限りません。歌、ダンス、芝居、お笑い、なんでもありです。
1人でも、友だちと一緒にでも、クラスのみんなでも、なんでもアリです。
行うのは1人(1組)ではありません。
やりたくなくても勝手に指名されてしまうこともあります。あなたも、もしかして……?
卒業生は、1人ずつ呼ばれて卒業証書を受け取ります。
証書受け取りの際、何か一言マイクで喋ったり、パフォーマンスをしたりするのが慣例です。
何もしないで普通にやり過ごすこともできますが、大抵は先生に話を振られることになります。
個性豊かな寝子高生なら大丈夫でしょう。
卒業生が証書を受け取っている間は、在校生が音楽を演奏します。音楽の得意な方は、ぜひ。
卒業式の最後には、全員で校歌斉唱を行います。
歌う校歌はこちらになります。学校生活を思い出して涙ぐむことも。
式の終了後は、卒業パレードです。
卒業生は、中庭の端から端までをゆっくり歩きます。
在校生は、その間、屋上から紙吹雪をこれでもかとまきます。屋上や中庭で演奏なども素敵ですよね。
卒業パレードのゴール地点では、記念品が手渡されることになっています。
NPCについて
NPCは不自然でなければ、誰でも登場できます。
特定のNPCとずっと一緒に過ごすというのは難しいですが、
一緒に思い出の屋上で語り合う、大好きな先生と研究室でお別れの抱擁をする、などは可能です。
なお、理事長はの姿が見当たりません。卒業式にも出席していないようです。
連絡が取れてませんが、きっとどこかで飲んだくれているのでしょう。
また、特定のマスターが扱ってるNPCは描写できない可能性が高いので、お控えください。
Xキャラクターもご自由にどうぞ。
口調やPCさんとの関係性など、必要なことをアクションに書き込んでください。
Xキャラ図鑑にある内容の参照は、URLがあれば可能です。
長くなりましたが説明は以上となります。
一生、残るかもしれない。感動的な場面を共に作り上げていきましょう!