【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――｜リアクション

【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――

卒業式前
　昼休みを迎えた。授業の時の静けさはなくなり、寝子島高校は賑やかな声に包まれる。
　旅鴉月詠は教室を後にした。行き先が決まっているのか。足取りに迷いがない。
　白くて長い髪を靡かせてカフェテリアの席に座った。取り出したスマートフォンを速やかに耳に当てる。
「私だ。作業は順調か」
　短い言葉で口を閉じる。頭が僅かに上下に動いた。
「招待状は出し終わったか。生徒なのでドレスコードの基本は制服だ。無論、個性は尊重する」
　目の前を通り過ぎる三年生にそれとなく目がいく。
「専用のテーブルクロスと食材は用意できたか……当日はトラックで乗り付ける……そうだ。セッティングと調理担当で十人は確保したい……食堂の厨房の許可は取った。保険で理事長に最高のワインを送ろう……よろしく頼む」
　スマートフォンを耳から離す。薄青い空を見て、悪くない、と口にした。

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