【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――｜リアクション

【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――

「凝った催し物が多いなぁ」
　高梨煉は紙皿に載せたとろみのある肉団子を箸で摘まんだ。一口にすると味わって食べる。
「甘酢の加減がいいな。隠し味に少量の生姜を入れているみたいだ」
「兄貴、この一口サイズのカヌレもいい感じだよ。表面をカリカリに焼いていて中はしっとり。ドライフルーツが入ってるのもあって、いくらでも食べられるよ」
　高梨彩葉の紙皿には他にも焼き菓子や切り分けたケーキが食み出すくらいに詰め込まれていた。
　煉は覗き込むような格好で笑った。
「俺が料理で彩葉は菓子か。兄妹で力を合わせればフルコースができそうだなぁ」
「そうだね！　このまま島にいて一緒に作ってもいいかもね！」
「まあ、俺は卒業生で、そんなわけにはいかないんだけどな」
　煉はフランス料理のテーブルに向かう。後ろで見ていた彩葉は唇をきつく結ぶ。力みで頭が揺れると前髪が僅かに割れた。覗く青い瞳は怒りに満ちて、それでいて少し濡れている。
　頭を振って目を隠すと彩葉は煉の腕を掴んだ。
「兄貴、デザートも食べなよ」
「まだ取ってないって」
　彩葉は煉を強引に引っ張っていく。
「定番のお菓子だけど、シュークリームはどうかな」
「これか。シュー皮がふっくらと仕上がって美味しそうだ」
　個々が紙のカップに収まっていた。その一つを煉は手で掴んだ。端の紙を捲って狐色の一部に齧り付く。
「濃厚なカスタードクリームだ。それと香りがいいなぁ」
「バニラビーンズを使っているからね」
「もしかしてこれ、彩葉の手作りなのか？」
「そうだよ。だから早起きしちゃった」
　口角を上げて笑う。
「ありがとな。美味しいよ」
　煉の優しい目に、うん、と彩葉は俯き加減で言った。