【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――｜リアクション

【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――

　旅鴉月詠は講堂内を忙しなく歩く。
「盛況だな」
　提供した料理の減り方を目で確認して回る。底を突きそうな料理を見つけるとスマートフォンを取り出し、速やかに耳に当てた。
「ダージリンのシフォンケーキを三台、追加だ。例の物と、あとは熟成肉のステーキを二十枚……焼き方はレアでよろしく」
　赤い瞳が舞台に向かう。コントの二人組が舞台袖に消えた。目に留まった司会の遠海に声を掛ける。
「食事に関連することで言いたいことがある。マイクを貸して貰えないだろうか」
「わかりました。簡潔にお願いします。出し物が残っているので」
「わかった。善処しよう」
　月詠は設置された階段を使って舞台に上がった。マイクを受け取ると生徒に向けて告知を行う。
「ダージリンのシフォンケーキは間もなく焼けるだろう。ステーキは二十枚を追加する。ニシンのパイ包みの残りは少ない。食いっぱぐれないように」
「マジかよ！」
「どこだよ、ニシンは！」
　一部の生徒で騒然となった。月詠は表情を変えずに口にマイクを近づける。
「追加するがね」
「するのかよ！」
　笑い声が混ざる。収まるのを待って月詠は口を開いた。
「祝い事に適したシャンメリーも用意した。ノンアルコールのカクテルを手配したので、間もなく運び込まれるだろう。私からは以上だ」
　月詠は控えていた遠海にマイクを返すと長い髪を弾ませて舞台を降りた。
「とても美味しそうなお話に腹時計が壊れたように鳴りまくりですね！」
　笑顔で切れる様子に拍手が起こる。遠海は、狙ってないですよ、と語気を強めて言った。