【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――｜リアクション

【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――

　実行委員会に所属する青山絢がデジタルカメラを持って動き出す。自身の存在を可能な限り消して被写体の自然な笑顔を待ち受ける。
　シャッターを切った。最高の瞬間を切り取る。画像を確認すると笑顔が伝染した。が、すぐに儚げな表情となり、微かに頭を振った。
「……お断りスキルが低すぎるわ」
　ぼそりと呟いて次の被写体に向かう。
「青山さん、少しいいかしら」
　手を挙げて呼び止める人物は卒業生で演劇部の先輩だった。演技に厳しく、優しい心根の持ち主でもある。
「ご卒業、おめでとうございます」
「正確には明日だけどね。あなたの写真の腕を見込んで、一枚、撮ってくれる？」
「あ、はい、わかりました」
　少し上ずった声と表情で気付いたのか。身体を寄せてきた。
「父娘の確執が続いていたとしても、あなたの写真の技術は本物だと思う。自ら選択肢を狭めることはしないで、これからも続けていってね」
「……考えておきます」
　即答を避けてカメラを構える。ファインダー越しの彼女は明るいだけではない。魅力的な笑顔に溢れていた。とても自然で、凄い、と思わず本音が漏れた。
　写した画像は、その場で本人に見せる。
「どうでしょうか」
「さすが名女優ね」
　いつもの明るさで笑って親指を立てた。