ファンタジーDay★｜リアクション

ファンタジーDay★

～シーサイドタウン九龍市街～

　暗いビルの狭間、微かに差し込む陽光を受けて、銀の糸が光る。
空気を切り裂く音が鳴り響き、赤色のスライムが四散する。
「こいつで４匹目！　ちぃい、キリねーな！　やってらんねーぜ」
　怠そうに呟くジニー・劉。
　漆黒の肌は闇に溶け込んでしまいそう。
―こいつらは一体何なんだ……俺も気がついて見りゃ、こんな格好になっちまってるし―
　振り向かず、背後に鋼糸を飛ばす。
　寸分違わず、スライムに突き刺さる。
　何故か、威力も精度も普段以上に冴えていた。

「……ふぅ……あらかた片づいたか……んったくＲＰＧの世界かよ」
　紫煙をくゆらせながら独りごちる劉。
―とりあえず……移動してみるか……先ずは自分の立ち位置を知っとかねーとな―
　情報屋としての性なのか、現状を把握しようと動き出す劉。
　腰に付いているダガーやナイフなどの装備を確認しすると、歩き始めた。

～シーサイドタウン～

「わ、わわわ～～変なの一杯いるよ～～～」
　特徴的な垂れ目を大きく見開き、岡野丸美が声を上げる。
　小柄だけど、ガッシリとした体に毛皮の鎧を身につけている。ご丁寧に鎧には小札が貼り付けられていた。
　手には両刃の斧を携えていた。―あれ、スライムってヤツだよね？　ゲームの世界みたいだよ～―
　おかっぱの髪や広いおでこはそのままだったが、ドワーフの格好をした彼女が言うと、説得力があった。
―なんだか背も縮んじゃったし、体型も……ちょっとだけころころになってるようだし……いったいどうしちゃったんだろ―
　頭の片隅に疑問が浮かんだが、まるでドロップのように色とりどりのスライムを見ているうちに、
持ち前のかわいい物好きが頭をもたげる。

「えへへ、ちょっとだけ触ってみよっと……つんつん、つんつん」
　斧の先で、黄色いスライムを突く。
　ぷるぷる震えながも、ジッとしている。
　ゼリーの様な感覚……癖になりそうな柔らかさ。
「うわ、面白い！　つんつん、つんつん……あ、赤いのもいる！」
　赤いスライムに近寄り、突く丸美。
「つんつん、つんつん……んん、あれえ、なんか大きくなって……きゃ、きゃあ！」
　ぴょんと跳びはね、丸美に襲いかかる赤スライム。
　怒っているのか、光っているようにも見える。
「きゃ～ごめんなさ～い！　もうしませ～～ん」
　一目散に駆け出す丸美。
　その後をぴょんぴょんと跳ねながらスライムが追ってくる。
　短くなった足のせいか、スピードが出ない。
　追いつかれてしまう！　その寸前……どこからともなくナイフが飛んできて、スライムに突き刺さった。
　ンギー！
　悲鳴を上げたスライムは細かく震えたかと思うと、くたりと潰れる。

「おい、あんた……不用心過ぎるだろよ……って……ちんまいけど女かよ……」
　ぼさぼさの髪を掻き上げながら劉が声を掛ける。
　女性恐怖症の劉は目線を泳がせる。
「わぁ、真っ黒くろすけな人！　おっちゃん、それとも兄ちゃん？　何で耳とがってんの？　ミスター○ポック？」
「兄ちゃんだ……ダークエルフってヤツらしい。その……あんただって…………ドワーフの格好してんじゃねーか」
　じりじりと距離を取る劉。
―このドワーフ娘はそれほど苦手な感じじゃねーが……それでも女だしな……―
　そんな彼にぴょんとジャンプして近づく丸美。
「な、なな、なんだよ、あんた！？」
「ねね、一緒に探検しよ！　スライム退治だよ！」